66 休日 その4
「で、この方は?」
「私を襲ってきた一味だよ。」
「はい?」
イチゴケーキを堪能しながら、そんな事を聞いてくるアイリーン達。
「あぁ、敵意は無いからもう気にしなくて良い。さぁ、ブリエンドも食べて、美味しいよ。」
「は、はい!」
「ブリエンドって言うんですか?襲ってきた敵が敵意をなくしているんですか?」
「圧倒的な力の差を見せたから?かな?」
「じゃあ、先ほどの【殺気】はザバルティ様のだったの?」
「そういう事になるね。ここまで届いたの?」
「えぇ、感じましたよ。とても怖くて動けませんでした。」
「怖い思いをさせてごめんね。」
「いえ。大丈夫です。」
結構距離があるはずなんだけど、ここまで届いていたのか。次からはもっと気をつけないダメだね。
「これ、凄く美味しい。なんなんですか?」
「これは、ケーキという物で、デザートだね。ブリエンドの口にも合って良かったよ。」
「は、はい。」
困惑と幸せと恐怖が混ざった顔を見せるブリエンド。
少しずつ、話を聞きだした。
結論として、雇い主は分からないという事。ドレスエンと名乗る者が繋ぎ役をしていた事。
繋ぎ役とは定期的に連絡を取る必要があった為に、指定の場所へ定期的に行く必要があった事。
この一連の動きは全て指示があった事と、合格発表の時と今回迄の事は全て関係しているという事。
根本的な目的は分からない事。ケーキがとても美味しい事。最後のはオカシイと思うが、何度も挟んでくるので、念のため。ここまでが組織に関する事でわかった事。
で、ブリエンドの事。
ダークエルフの集団のボスをしている。その軍団は500人規模になる。
ダークハイエルフが100人。ダークエルフが300人。ハーフダークエルフが100人。
他国から流れてきた者達で、住んでいた場所から追い出された者達である事。
エルフに対しての嫌悪感はあるが、特に何がダメなのか?問題となる事が何なのかわからない事。
これはエルフ側も同じ様だ。ダークエルフに対する嫌悪感があるが問題が何なのかわからないようだ。
「今回のブリエンドの役割は?」
「それは・・・ただの観察でした。意味は分からなかったですが、観る事が業務でした。」
「それは変だね。私の力が想定外だったのか?」
「ハリーエンスは貴方を殺すか捕まえてくる様に言われていた。それしかわからない。ただ、観ろと言われただけだった。」
謎だ。普通に考えると、彼女は間者の役目を与えられる事になるだろう。何だろうか?本当に力が分からずにって事も考えられる。
「で、君はこれからどうするつもりだ?」
「私は、貴方に忠誠を誓いました。何でもおっしゃる通りに致します。」
どうするのが良いのだろうか?カミコちゃんセンサーでは、ブリエンドは信者レベルに到達している。恐怖心が畏敬の念へ昇格されているのだ。ケーキの力では無い。決して。
「そうか。では、君達を迎え入れよう。皆をここへ呼んでくれ。」
「わかりました。少しお時間をください。」
「構わないよ。」
その後、ダークエルフの集団と面談だった。
「私は、このザバルティ・マカロッサ様に忠誠を誓う事にした。圧倒的な力を持ちながら、繊細なスイーツ作りまで出来る。更にこの年齢で多種多様な能力が抜きんでいる。そんな、ザバルティ様を我が主と決めた。」
ダークエルフ達はブリエンドの意志に反対が無いようだった。理由はダークエルフのこの集団は全てがブリエンドが育成した者達だったからだ。ブリエンドを母の様に思っているのだ。それは盲目的にと言って良いぐらいに。だからすんなりと私を受け入れてくれたんだと思う。たぶん。
「あの、ブリエント様が忠誠を誓う相手が出来るとは・・・奇跡だ。」
「こんな奇跡を起こせる人は本当に神なのではないか?」
「あの、お金に忠誠を誓っていたブリエント様が・・・。信じられん。」
どうやら、違うみたいだ。でも中には気に入らなかった奴がいた。
「なぜ、あんな人族ごときに従わなければいけないのか?」
「我らより劣る種族の者に、気は確かですか?」
こんな事を言う奴も居た。ので、力を少し解放して先ほどの戦闘シーンを画像として魔法で再生した。
それでも、信じなかったので、本気の【殺気】を放ってやるか。
「じゃあ、少しだけ見せよう。力の一端を。」
「いや、ザバルティ様。お赦しください。この者達に言って聞かせますので。」
「ザバルティ様。洒落になりません。」
「大丈夫。今回は絞ってやるから。」
と言って、気を放つと物の見事にダークエルフ達は動けなくなるか気絶した。
一気に恐怖心が芽生えたようだ。恐怖心で攻撃をしようとする者がいたので、魔法を使えなくしてやったり、腹を殴って気絶させたりした。結果武力で制圧してしまった。
その効果もあって信者化したのだが。怪我した者には回復魔法をかけて元通りにしたから問題は無いだろう。
「おぉ、神だ。遂に我らの前に神がご降臨された。」
「悪魔だ。背く事は死を意味する。服従しかない。」
なんて言葉を聞いたが仕方ないだろう。力を見せてしまったから。
ただ、アイリーン達が反対した。何故、危険を承知で受け入れるのか?と。そこで仕方なく、全てのダークエルフと奴隷契約を結んだ。奴隷が一気に500人も増えた。屋敷に入るだろうか?




