65 休日 その3
私の強烈な【殺気】で、動けなくなるだけではねく、失神した者達はカミコちゃんのサポートを借りて、氷の魔法で氷漬けにした。総数の約3分の2はその対象だ。なんとか避けた者達もどうやら動揺が激しく動けないでいるようだ。
「ちっ。」
「なんなのこの子は?魔法を使っているはずなのに魔力の減りを感じないなんて。」
「いくぞ。野郎ども!」
まだ生きているゴブリン達が一斉にこちらに来る様だ。だが昼間だから見渡しが良い場所に居る事で、やり易い。どうやら魔法使いや精霊使いがいるようだ。魔力を感じる。そこに向かって風魔法の刃を届ける。避けたり守る暇がなかったようで、あちらこちらで魔力と共に生命が消えていく。首を狙って放ったからだ。
「なんなんだキサマは!」
ようやく私の元へたどりついたゴブリン。放ってきた一撃を軽く躱す。交差する瞬間に首へ一撃手刀を放つ。ベキッという音共に倒れた。なぜこのような力しかないのに向かってくるのだろうか?力量が読めなかったのか?あまりにも弱すぎる。
「グギ、オカシラ?」
戸惑いだしたゴブリン達だが、逃がすわけにはいかない。頭の無くしたゴブリンほど危ない者達はいない。
戸惑うゴブリン達に向け火の魔法を放つ。獄炎魔法だ。つまり形を残さず全て灰にする魔法だ。
自分がどのような状態になっているのかわからないまま燃えて消えた。
「で?お前はどうするんだ?」
「ひっ!」
ずっと見ていただけの女の所の前に瞬間移動し話かける。これだけの圧倒的殺戮を見た後だから、もう変な考えは起こさないだろう。
「あんたは、いや。貴方様は一体?悪魔ですか?神ですか?」
「いや。そのどちらでも無い。私の邪魔をしなければ特に害は無いと思うがな。」
「申し訳ありません。お赦しください。お赦しくださると言うのなら、貴方に忠誠を誓います。私には部下が500人居ます。その全てが貴方様のお望み通りに動きます。どうか命だけは。」
「敵意が無いのなら、命を奪う事はしないよ。それに君達は人族だからと殺したり家畜のような扱いをする種族ではないのはしっているからね。でも、色々話を聞かせて欲しいとは思う。」
「わかりました。私が知る範囲での話でよければ話させて頂きます。」
「わかった。その前に、君を観察している者がいるようだ。少し待てるかな?」
「はい!」
ダークエルフをその場に置いて防衛魔法をかける。
「ちなみに、敵意は直ぐにわかるし、忠誠度も直ぐにわかってしまうから、中途半端な事はしたらダメだよ?」
「わかりました。」
忠告を一応しておいた。事実だからね。カミコちゃんのセンサーは完璧だから。
で、観察している様子の二人の前に瞬間移動をする。私が急に目の前に現れた事で、ビックリすると共に諦めた様子だ。
「ほらね。元々無理だって言ったのに。」
「本当だよ。これ、報酬をもっと貰わないと割に合わないな。」
「私に敵対する気は無いのかい?」
「無いよ。そんなの。あの二人の監視だけが任務だよ。」
「そうそう。それ以上はしない。アンタに盾突いても無駄じゃん。」
「何で?そう思うんだい?」
「だって、アンタはまだ本気じゃないんでしょ?」
「そうそう。それに今の俺達じゃ敵わない位の力差があるのは明白じゃん。」
ちゃんと力量が見えているようだ。それに本当に敵対心が無いと言うのも嘘じゃない。反応が普通だ。
これは、相手をすると少し厄介かもしれないな。
「そうか。じゃあその監視の任務も終了だ。帰ったら、主に伝えてくれないかな?もう一切関わるなと言ってくれないかな?それと、あのダークエルフの子達にも手を出さないようにと。」
「助けてくれるの?」
「良いのかい?僕らを帰しても?」
「十分に力を測れただろう?これ以上は無駄じゃないか?それに誰かに伝えて貰わないといつまでも来そうだしね。」
「ありがとう。ではその役目を引き受けた。」
「そう言ってくれて助かるよ。じゃあ頼んだよ?ちなみにそれでもダメだったら私の所に来れば良い。悪いようにはしないよ。」
「わかったよ。憶えておくよ。気遣いありがとう。」
交渉はこれで終わり。瞬間移動でダークエルフの元へ戻る。
「話はついた。これで、君は自由だ。で、悪いんだが、連れがいるから先にそこへ行くよ。ついて来てくれ。君の名前は?」
「私はブリエンド・セリンエンデス。ダークハイエルフです。」
「そうか。ではブリエンド、行こう。話は後だ。」
コクンと頷いたのを見たので、そのまま何も言わず三人の秘書の元へと向かった。
ついて早々にエルフ同士の種族間の嫌悪感があるようで、険悪なムードになりかけたが、私の取り計らいで、一端は矛を収めてくれた。もちろんあのケーキが美味しかった事が一番の効果のようだ。
早速、2個目のケーキを出す事になった。何処の世界も女性は甘い食べ物に目が無いご様子だ。




