59 入学式 その2
その後、教室に行き、副担から入学式の説明を受けた。そして、全員が揃って入学式が行われる会場に入り所定の場所に座るように指示を受けた。そしてドンドン式は進む。祝辞が多数あるようだが、やはり固い内容の話ばかりで退屈だ。在校生代表の話も真面目な話だった。ツマラナイ。やはりどこの世界に行ってもこんな感じなんだろうか?周りを見渡すと居眠りをする者は・・・居なかった。皆は糞真面目な顔をして聞いていた。
「新入生代表挨拶。ザバルティ・マカロッサ。」
「はい。」
いつの間にか自分の番になっていた。ツカツカと所定の場所へ向かう。その間ドキドキと胸は鼓動する。
手にも何だか汗をかいてきた。自分が思っていたよりもっと緊張しているようだ。
「お日柄も良く・・・。」
マリリン第三王女に用意して頂いた物をそのまま少し読んだ。
出だし好調という感じだが、このまま続けて読む事で本当に良いのだろうか?私の気持ちは一切入ってなく、ただの建前のみの内容で良いのだろうか?読むのを止めてしまった。
会場中が、途中で止まった私へ今まで以上に注目し、少しざわつく。
「あの、すいません。緊張で読めなくなってしまいました。」
会場中がドッと笑う。掴みはオッケーだ。
「なので、すいませんが、私の気持ちを素直に話したいと思います。」
呆気に取られている人達。まぁそうだろう。ここまで既定路線できているのだから。
「先ずは、私をここまで育ててくれた両親に家族。共に協力し励まし合った友に感謝したいと思います。ありがとう。私は、私達はこの学び舎に入る為に努力を重ねてこの日を迎えました。その努力は人それぞれ違いはあると思いますが、思いは同じはずです。これからの5年間は同級生として仲間として過ごす5年間です。色々あると思いますが、やれる事は全力でやりましょう。何か私に出来る事であれば、全力で手伝わせてもらいます。そして学院生活を、思いっきり楽しみましょう。」
ここで、一息いれた。新入生達の今まで以上に目に輝きが灯った。
「私は、先頭きってこの学院生活を楽しみたいと思います。先生方に先輩方、そして関係者の皆様。若輩者の私達のご指導をよろしくお願いいたします。」
最後は無難な言葉を選んだので、大丈夫だろう。頭を下げた私。
そして顔を上げると、拍手喝さいを頂いた。
「いいね。」
「楽しもう!」
「ブラボー!!」
「ステキ!」
「結婚して!」
「ザバるん!!」
若干、違う声援が聞こえたような気がしたが、認められたようだ。
これもやはり【幸運の星】の影響だろうか?
≪間違いありません。≫
カミコちゃんのお墨付きを頂いた。
私は、何故【楽しむ】事を基本的な中心においているのか?って事なんだけど、これは前世の記憶が経験が物を言う。私はどんな事も【楽しむ】事が出来る人間が一番強いと考えている。それは何故か?
答えは簡単だ。どんなに貧乏だろうと厳しい環境であろうと、その生活を【楽しむ】事が出来る人はそこに達成感と幸せを見つける事が出来るからだ。逆にどんなに金持ちだろうと【楽しむ】事が出来ない人は達成感も幸せも見つける事が出来ないのだ。と考えている。信じられない?何故かな?では例えを出そう。
地球での話だ。文明が栄えていない地域に行く。電気もガスも水道ですら無い地域だ。その地域に住む人は幸せでは無いのだろうか?逆に日本という国に居て全てが揃っている人は必ず幸せになっているのだろうか?どちらも「違う」と答えれるのではないだろうか?
勉強が大変で寝る間を惜しんで迄勉強する人は不幸だろうか?逆に寝る時間が有り過ぎる暇な人は幸せだろうか?
そう、幸せとは【楽しむ】事が出来る人に与えられる物なのだ。つまりどんな環境下に置かれても、そこで【楽しむ】事を見つけ、【楽しむ】事が出来る人は幸せを感じる事が出来るのだ。
そして【楽しみ】を見つける事が出来ないと思った時、人は絶望する。絶望した人は生きていながら、死んでいるのか?それとも死を求めるのか?そういう反応を示してしまう物なのだ。
【楽しむ】事を見つける事は全ての人に平等に与えれている。どのような事に【楽しみ】を持つのかは人それぞれだが、それを奪う行為だけは許されない。中には他人を殺す事に楽しみを見つけたり、騙す事に楽しみをみつけたりする人もいる。
良い事であっても悪い事であっても、【楽しみ】を見つけた人はその事に対して異様なまでの力を発揮する事が出来るのも一つの理由だ。
ただ、私は小さくとも【楽しみ】を沢山見つけて、どんな環境下であっても前へと進んで欲しいと願う。そして、その【楽しみ】が他人に害を与える事ではなく、他人にも幸せを分け与える事が出来る【楽しみ】である事を願いたい。
≪ザバルティ様。一体誰に話をしているんですか?≫
カミコちゃんの鋭い突っ込みを受けた。
その後、滞りなく式は終わり、家族の元へ向かったのだった。
やはり、私は爺臭いようだ。




