58 入学式 その1
入学式当日になった。
今日は天気が良い。そして、物々しい警備体制だ。前回の発表時に襲撃があった事と、王様が参加する事が大きいのだろう。それに朝早くにラムザがやってきて「今日は確りと楽しむと良い。他の事は任せておけ。」とこっそりと話してきた。つまり警戒せず安心しておけという意味だろう。当の本人はシャルマンの隣で観戦すると言っていた。つまり、彼の部下がこのテーストの街の中に沢山いて守ってくれるという意味だと悟った。
「今日は暖かいな。」
「そうですね。いい天気です。」
こんな呑気な会話をしてしまうのも仕方がない事ではないだろうか?
とはいえ、この天気の良さは半端ない。秋晴れ?春うらら?そんな感じで、入学式に相応しいいい天気だ。熱くもなく寒くもなく、本当に丁度良い天気なのだ。久々に呑気な感じを楽しんでいる気がする。
「では、先に学院に行きます。」
「あぁ、わかった。気をつけて行け。後程、そちらに行く。式典を楽しみにしておる。」
「はい。では。」
そう言って私達5人は家族を残し先に出た。
道中は街中は祭りのような感じになっていた。この世界において娯楽が少ない事で、色々な催し物が祭りと同じ様に盛り上がるという事だろう。昔の日本もそうだった。運動会は町中の人が集まって大騒ぎだった。それこそ私の小さい時はとなるが。東京オリンピックなんて、異常事態であったといえるだろう。そして、私が死ぬ時にはまた東京でオリンピックが開かれるという話だったが、過去のオリンピック程の衝撃は無いだろうと思っている。何せ、今の日本では娯楽が溢れているし、TVの発達も凄い。会場で見るより、臨場感がある映像が流れる。私の次代は白黒からカラーになるかならないかの時だったから、時代の違いは大きいだろうと思う。
「ザバルティ様。何をお考えになっているのですか?」
「いや、特に無いよ。少し緊張してるのかな?」
本当に考えている事なんて言えないよ。東京とか考えてたからね。
「ザバルティ様でも緊張するんですか?」
「そりゃあね。緊張するよ。別に慣れた場所でもないしね。」
「へぇ~。そうなんですかぁ~?」
多分緊張しないのはアリソン君だけだろう。
「ふふふ。ザバルティ様も人の子なんですね?」
「人ですよ?人外の者ではないですよ?」
「化け物ではありますよね。」
「違いない。あれは奇跡だった。」
ミーリアに揶揄われるし、半信者のロバートが何か思い出して言ってる。
「ですけど、やはり凄い事だと思います。主席入学に超特待生という新しい制度を国に作らせてしまう程の功績はそんなに無いと思いますよ?」
「そうかもしれないけど、ある意味ズルであると思っている。成績にしても能力のおかげでもあるし、制度についてはあのマリリン第三王女の力による所だしね。」
「能力も自身の力である事に変わりありませんし、マリリン第三王女が動かれたのもザバルティ様の影響です。どちらもザバルティ様あっての事ですから、胸を張って良いのではないでしょうか?」
ストレートにトーマスの言葉が心に届く。嬉しい事だ。他がどう言うと、仲間がそう思ってくれるなら良いか。って思わせてくれた。仲間って良いもんだ。
≪マスター。テースト内の制圧に成功したようです。流石ザバルティ様の親友ですね。≫
早々と街の安全を確保してくれたラムザ。かなりの力をラムザは有していると思う。早過ぎる制圧だと言えると思う。それに街のあちこちに冒険者風の者がチームを作ってウロウロしている。 もちろん、テースト内の冒険者も警備にあたっているだろうけど、これもラムザの部下達が居るのであろう。見かけない顔も所々に見る。相当な規模の組織を持っていると考えられる。敵じゃなくて良かった。
「今日は、襲撃に遭遇しませんかね?」
「あぁ、それは大丈夫じゃないかな?前回の発表時の襲撃を気にしているようで、街の警備も厳重になっているし、今回は王様も出席されるようだから、魔法による襲撃にも備えをしているだろうしね。」
「そうだと良いのですが。」
「心配しても仕方がないよ。それより、今日という日は今日しかない。楽しもうじゃないか?」
「何か、ザバルティ様が爺臭いぃ~。」
とアリソンが鋭い突っ込みをしてくる。間違いなく爺だった事があるので、言い返せない。それに、国の警備以上に、ラムザが動いている事は明かせない。返答に困った。どうしたものかと考えていると御者から声がかかる。
「もうすぐ着きますよ。降りる準備を。」
そして、少し経って私達の馬車が止まった。
「とにかく、今日を楽しもう。私達の初登校だ。」
「「「「おう!」」」」
苦笑交じりに答えてくれた優しい仲間達であった。本当に良かった、優しい奴らで。
まぁ、本心の私の気持ちでもある【楽しむ】という事は皆は知っている事ではあるけどね。




