56 関わり
結構な時間が経っている事をカミコちゃんから指摘され、空間切断を解除した。
そして店員を呼び、追加した。
この時にお互いに二人きりの時以外はこの世界の名前で呼び合う事を決めた。
運ばれてきたデザートを美味しく頂き、店を出た。
「では、今日はこれ位でお開きにしよう。」
「そうですね。またお誘い致します。」
「えぇ、楽しみにしておりますよ。ザバルティ君。」
こうして、親友との思わぬ所での再会を得て、改めてこの世界へ来た意味を考えさせられた私は、先ずは楽しく生きようと考えた。という事で、一番初めにやるべき事は自身の屋敷の完成だと考えた。
屋敷の完成無くして、次に進めない。勝手に入学式は来るがね。で、気になって屋敷の方へ向かった。
◇◇◇◆◇◇◇
≪ビックリじゃのう。お主よりもッと面白い人生の者がいようとは。≫
「あぁ、ビックリしたよ。まさか、アイツがこっちに来ているとは思わなかった。」
≪人生とは数奇な物よのうぉ。わらわもお主とここまで話をする間になるとは思っても居なかった。≫
「それをいったら、全てがそうだろうよ。だが、アイツも大変なようだ。この街は色々とキナ臭い。それをアイツは分かっている。その上で楽しもうとしているのが分かる。それにかなりの力を持っているのも分かった。安心させようとしていたのも分かった。相変わらず優しい男だ。」
≪そこまでわかり合っているのか?人も侮れんな。何かしらんが妬けてくるのぉ。≫
ペレは会合の時には一度も声を出していない。ラムザの傍らに居ただけだ。そのペレの感想を聞きながらラムザも自身の感じた事も述べた。
「という訳で、少しこの街を浄化してやろう。ソフラン。」
「はい。」
何処からともなく出てくるハーフダークエルフの美女。見た目も感じもふわふわ系だ。ダークエルフの血が入っているのに、肌の色は白い。胸も溢れんばかりの大きさがあり、ゆったりとした服装であるのにそれでも分かってしまう程の大きさをもっている。
「アイツの周りの事を入念に調べてくれ。どうもチラホラと敵対している者がいるようだ。手出しはするな。情報を集めてくれ。」
「了解ですぅ。」
返事を返した後、いつの間にか居なくなっている。ラムザに仕える四人の暗部幹部は常に近くにいる。今回は何かあるかもしれないと、ラムザは近くに待機させていた。何が起こっても指示が出るまで動くなと言ってあった為、出てこなかったに過ぎない。
「先ずは情報集めだ。」
≪この街で動くのじゃな?≫
ラムザは返事をしない代わりにニヤリとした顔をペレに向けたのだった。
◇◇◇◆◇◇◇
「ザバルティは中々面白そうな事をやろうとしておるようじゃの?」
「そうですね。【温泉旅館】は特に楽しみですねぇ~。」
老夫婦は嬉しそうに話をしている。共に長き人生を過ごしてきた二人にとって孫の事は楽しみの一つであるようだ。兎に角、優しい顔をして孫の話をしている。
「それにしても、シャルマンも兄のいう事を確り聞くんですね~。」
「そうじゃのう。ザバルティは小さい時から説得力があったが、覚醒してから、さらにその力が増したように感じるのぉ。確かに色々と力を持っておるようじゃが、覚醒後の一番の力は、前世の経験じゃろうて。説得力が大きくなっておる。そして経験をフル活用できる力をも持ったという感じかのぉ。」
「そうですね。そうかもしれませんね。前世において、沢山の経験をしているのでしょうね。魂に刻まれた経験は、覚醒する前にも偶に出てきていたのかもしれませんね。」
「そう考えると、魂の成長や育成っていうのはとても大切なことなのかもしれんのう。この世で得る知識や体の成長なんかも大切だろうが、魂の成長が一番大切な事なのかもしれんのぉ。」
「私達の魂は成長しているんでしょうか?」
「正直分からんが、まだまだこれからも勉強せねばなるまいて。」
「あらあら、大変です事。」
やはり、何故か楽しそうな老夫婦である。
「フェニックスも、なかなかの者を見つけてきてくれたわい。」
「昔を考えると信じられませんねぇ。」
≪お主ら二人にかかると我はまだまだ、子供扱いじゃな。≫
突如現れる大精霊フェニックス。あたかもずっとそこに居たかのようにたたずんでいる。老夫婦もびくともしない。
「仕方が無かろう。お主を見たの時はヤンチャしかしておらんかったんじゃから。」
「本当にそうですよ。精霊王様より面倒を見てくれと言われた時なんかは、絶対嫌でしたからね。」
≪ぬぅ。そこまで言わなくても良かろうが。元気が有り過ぎておっただけじゃ。≫
「はいはい。そういう事にしておきましょう。」
「いじめても可哀そうじゃからのぉ。」
≪全くもって、姿は変わっておるくせに、精神はかわらんのじゃな。≫
「まだまだ、若いもんには負けんよ。」
≪お互いにじゃな。まぁ、我はまだまだ若い精霊ではあるがな。≫
「貴方たちにとっては60年なんてあっという間でしょうね。」
≪クックック。まさにな。だが、お主らのおかげで大精霊になれたのも事実じゃ。感謝しておるよ。≫
三人は笑顔を見せあい、過去を懐かしむのであった。




