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52 精霊使いと精霊使い



「そうか。アイゼンが覚悟を決めたか。」


そう呟いたラムザは、アイゼンと話し合う決意をする。

ここまでの動きは側近達から随時報告を受けていた為、およそ予測で来ていた事だった。

ラムザはアイゼンが決意した事を止めるつもりは無い。手助けをするつもりでいるぐらいだ。だが、内容を理解しているわけでは無い。否、本人から聞くまでは調べる事を控えたのだ。動きを見守るだけに留めて居るのはそのためだ。優秀なラムザの部下なら全てを調べつくす事は難しくないのだから。


「では、スブレイツにてアイゼンを待つとしよう。」


ラムザの発言を受けて側近達は日常業務に戻って行った。側近たちが暗部の仕事以外に身の回りの世話をするメイドであるのだ。


「では、夕食の用意が整いましたので、エリザ様と一緒に隣の部屋へお越しください。本日のメインは羊肉のソテーでございます。」


「わかった。ありがとう。今日も楽しみにしているよ。」


メイド達四人は誰もが料理が上手い。側近に選ばれて以降に彼女たちは色々なスキルを獲得していた。その一つが料理だ。エリザも料理が上手いのだが、それに触発された様子が伺える。


「かしこまりました。お待ちしていおります。」


本日の担当はミネアは頭を下げる。側近の四名は何れも半分の血がダークエルフである。今日の担当ミネアはダークエルフ族と人族のハーフだ。肌は黒いが耳は人族の者と変わらない。一見すると日焼けした人であるが、肌の黒さは明らかに違う。ダークとつく種族の者はその肌の色は単純な黒人とは違い黒く輝く美しさがある。単純に黒いのでは無いのだ。

ラムザが部屋を出ると、ミネアは闘志を見せる。


「胃袋は私が掴む。」


やる気満々であった。



◇◇◇◆◇◇◇



予定通りにアイゼンはラムザとスブレイツにて合流した。

挨拶を交わした後に、アイゼンが話があると切り出し、二人だけで別室へ移る。キャリーがお茶を運んできて、部屋を出る。


「ラムザ様。私の話を聞いて頂けますか?」


「あぁ、そのつもりだ。」


「ありがとうございます。お時間をとって頂きありがとうございます。では早速ですが、私が奴隷となった経緯を話させて頂きたいと思います。私はイグナシオ大陸にある。魔族の国エンデの第一王子だったのです。今は私の叔父にあたるヨリトモという者が王位を継いでいます。謀略に合い父が国賊とされ討たれて、私と兄弟たちは命からがら逃げる事になりました。逃げる途中で私は逸れてしまい奴隷商人につかまり、奴隷となったのです。そして年月が経ちラムザ様に助けて頂く事になりました。」


「そうか。そういう経緯があったのだな。だが、魔族である国の王からハーフであるアイゼンが産まれたという事は、」


「はい。母が人族なのです。隣国スーディの王女だったのです。ハーフとして産まれた私を王にする事が認められなかったのではないか?と思っています。」


「そうかもしれないな。差別という物は恐ろしい。」


「そうですね。ですが、私はその恐ろしい差別と闘う決意を致しました。」


「どういう事だ?」


「私は、ラムザ様のご子息が見つかり次第、国に戻ろうと思います。そして、父の仇を討ち。差別の無い国を造ろうと思います。それに協力してくれる者達も見つかりました。それに祖国は叔父の暴政の為に荒れ果てており、国民が疲弊しているようなのです。王族の者としても見逃せません。どうか、お暇を頂きたく思います。」


そう言い切ったアイゼンを我が息子のような顔で見つめるラムザ。


「良いだろう。お前は良くやってくれた。許可する。しかし、良いのか?俺の息子はまだ見つかっていないし、見つかる宛が何のだが。見つかった後でも?」


「はい。今回アスワン王国のアンバーに行かれるとお聞きしました。私は調査の段階でそこに行ったのですが、その時に【シャルマン】という名の少年に直接会っています。その時に感じた物に確信が無かったので、報告を上げていませんでしたが、その少年の兄に特別な力を感じました。とても薄っすらとでしだが。現在はその少年の兄が何故かずっと気になっていたのです。なので、少なくともアンバーに行けば何か起こるのではないか?と感じているのです。」


「ほぉ~。アイゼンの感がそう告げるのか?」


「はい。なので、今回は同行させて頂きたいと願ったのです。」


「わかった。共に許そう。だが寂しくなるな。お前ともう一緒に居られなくなるというのは。」


「死別ではありません。必ずや、私が王になり理想の国を造ってラムザ様を招待致します。」


「ふふふ。では期待しておこう。それでは、最後となる旅を楽しもうではないか?」


「はい。お供致します。」


二人は笑い合い、硬い握手を交わした。

アイゼンは安堵の表情の中に明るい未来を、その目に灯していた。

そして、ラムザの顔には何故か、誇らしい息子を見る顔になっているのであった。














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