5 自分
「では、過ぎてしまったが、今よりザバルティの10歳の誕生日会をおこなう。」
父上の宣誓で始まった。私の誕生日会。寝てしまっている間に誕生日自体は過ぎていた。
「お誕生日おめでとう!!」
領内の貴族や騎士、親族等が集まって私の誕生日を祝ってくれた。
「ザバルティ様、おめでとうございます。」
一番最初に挨拶をくれたのは、私専属の従者となるロバート・セルフラン。ザバルティ家に代々使えてくれている騎士の一族の者で長男。同い年という事もあり気を許している一人だ。身長が高く金髪美男子である。騎士の家系らしく真面目な奴だ。
「ザバルティ様の髪の毛の色が変わってるぅ~。あっ目もだ。」
次に来たのが、従者となる魔術師のアリソン・フォラン。子爵家お抱えの魔術軍団の筆頭魔術師の次女。同じく同じ年であり、魔術の才能がとても高い魔術師の家系の魔女?である。金髪美女でもあるが、喋ると残念な面が表に大きく出てくる。お転婆さん。
「目を覚まさないと聞いた時は本当に心配しましたよ。」
三人目がやはり私の専属従者である隣の領地の男爵家の三男のトーマス・シュゲルツだ。万能タイプの能力があるが、参謀的立場である。男爵家は母の妹が嫁いでおり、血縁関係でもある。
「みんな、心配かけて申し訳ない。そして心配してくれてありがとう。」
「元気そうで良かった。また一緒に騒げるね。」
「ザバルティ様は病み上がりでもあるのだ。無茶はさせられない。」
「白銀の髪がカッコいぃ~。」
若干一名不思議ちゃんになっているが、皆の気遣いが嬉しい。
誕生日会に沢山の方が来てくれているのも非常に嬉しい限り。王様からの代理としての使者の方も来られていた。とても感じの悪い人だった。
「其方が、ザバルティ・マカロッサか?」
「はい。そうです。」
父上の横で対応する。
「ふむ。こちらにいらっしゃる方は、王様より代理の使者として参った。ダイブル・コンデス伯爵である。御尊顔を拝むが良い。」
なんだろう、この如何にも悪い事してます顔の従者は?
「ありがとうございます。」
「よいよい、こんな田舎町では高貴なる私のような者は来る事も少なかろう。存分に拝むが良い。」
男の顔なんて見てても面白くないんだけどな・・・。
「ダイブル伯爵様、我が愚息の誕生日会に、ご足労願い誠にありがとうございます。」
「ふむ。お主も元気そうでなによりじゃ。で、例の物は用意しておるじゃろうな?」
「勿論でございます。ではあちらへ。」
父上が表面上では笑顔だが、物凄く不愉快な気持ちを持っているのがわかる。
不愉快な時はいつもああして左手が忙しなく動くのだ。そして父上は伯爵と従者を連れて奥の部屋へと行った。私にはあのような方(奴)と上手くやっていける自信が無いな。
こうして、夜は更けていったのである。
◇◇◇◆◇◇◇
「やはり、この国の貴族は腐っておる。」
「兄上・・・。この国だけでは無いぞ。他の国にも同じような人種がおるわ。」
「とは言っても、この国の貴族どもはひどいぞ。」
「わはは。兄上もその貴族の一員ではないか。」
「確かにな。キナ臭い状況と良い。あのような貴族がのさばっている状況と良い。良くない方向に向かっているのは間違いないな。」
渋い顔をする兄弟が今日も、酒を片手にそこに居たのであった・・・。
◇◇◇◆◇◇◇
「キーファよ。お前の姉妹に連絡を取って欲しい。」
「もちろんよ。遂にザバルティちゃんに護衛をつける気になったのね。貴方も過保護ね。甥っ子の事なのに。」
「そう言うな。そういうお前も甘いではないか。ハイエルフのお前が人間に肩入れするだけでも不思議であるのに、姉妹を紹介するとは。」
「そうね。誕生した時からの成長を知っているからという理由もあるけれど、彼には他の人間にはない魅力があるのよ。ポワロにも少しあるようだけど、彼のは別格ね。」
「なんか、妬けるな。」
「ふふふ。嬉しいわね。妬いてくれるのね。」
ポワロの厚い胸板に胸をうずめる。
キーファの金髪を撫でながらポワロは少し嫉妬しているようだ。
「後ね。私の妹のジューネが気に入っているようなのよ。」
「はて?会った事があったか?」
「いいえ無いわ。私が話をしたら、勝手に見に行ったようよ。彼女にも魅力的に映ったようよ。今回の昏睡後は更に神かがった魅力を感じるわ。ある意味人間では有り得ないレベルね。」
「やはりか。お前もそう感じたか。」
「ええ、では直ぐに使い魔を飛ばしておくわ。」
そういうと、綺麗な裸体を起こし、ガウンを着てポワロの傍を離れ寝室を出て行くキーファ。
「出来る事はやっておこう。」
ポワロは険しい顔をするのであった。