49 精霊使いとクラウン
精霊使いは翌日、クラウン【シャルマン】の総本部に足を運んだ。
現在は、各国に本部を設置し、総本部としての役割をここが担う形となっている。冒険者ギルドがある所には必ずと言って良いぐらいに【シャルマン】の支部ないし本部か置かれている状況となっている。
「お帰りなさいませ。ラムザ様。」
「長い間、ご苦労だった。」
「ありがとうございます。」
回りには、クラウン【シャルマン】の主要メンバーが揃っていた。
アイゼン、エスパニ、ドーパム、リスター、シェリル、グインデスの6人だ。
「今後は【シャルマン商会】が世界進出する事になった。よって、冒険者の派遣を商会進出場所に随時行う事にする。タイミング等をプリメラと相談しながらおこなってくれ。冒険者は商会の護衛を兼ねる進出であると心得よ。」
「はい。かしこまりました。」
「で、それにあたり世界の港町の下調べをしてきて欲しい。」
そこで周りを見渡すラムザ。直ぐに返答が返ってくる。
「ラムザ様。その役目は私にさせて頂けないでしょうか?」
「アイゼン。君にはクラウンの代表としての仕事を任せておきたいのだが。」
「いえ。もう私が居なくともラムザ様がいらっしゃるのなら大丈夫でしょう。それに、私が直接育てた者のみで構成したチームで動きたいと考えております。」
「何か考えがあっての事なのだな?」
「そうです。それに私も冒険者として純粋な冒険心をくすぐられたというのもあります。お願い致します。」
「わかった。頼もう。出発は引継ぎを終えてからという事で良いかな?」
「はい。かしこまりました。」
こうして、クラウンの代表としての業務を一端ラムザが受け持つ事になった。
つまり、この街エウレイアに留まりる事を意味する。エリザはニコニコ顔になっている。
それを見たペレとユートゥルナはヤレヤレという顔になっている。
「それと、全大陸の港町への進出が出来たら、その次の段階として全大陸中に根を張る事になるから、確りと下の者の教育をやっておいてくれ、先ずはアーダム大陸中のハーフの奴隷の者を全員集める事を進めていく。悪魔とのハーフが見つかった場合は即座に私まで連絡をするように。以上。またこれからも頼む。」
悪魔とは魔族とは違う。人という概念を越えた存在だ。反対となるのは天使である。ただ、天使も悪魔も超越している存在である事は同じである。魔族はというと、人の領域内にいる。人であるのだ。
「わかりました。では早速準備に入りましょう。私はプリメラ殿と打ち合わせに行ってまいります。近況はドーパムから伺ってください。」
アイゼンは足早に退室をしていく。ドーパムから近況を聞く事になったラムザ一行。
≪ラムザよ。何かアイゼンは隠し事があるようだ。注意せよ。≫
「そのようだな。まぁ、悪巧みでは無いようだから、様子を見よう。」
ドーパムの報告を聞きながらペレとラムザは意見を交換しているのであった。周りに聞かれる事も無く。
◇◇◇◆◇◇◇
アイゼンは、ラムザのクラウンの総本部から離れて公園に向かう。
公園と言っても遊具があるわけでは無く、人工の池と木が生えた場所である。程よく整備されては居るが完璧さは無い。その公園の奥へと進んで行く。ふと立ち止まると木の陰から黒髪の男が出てくる。
「遂に動く事が出来る。」
「本当でございますか?」
「あぁ、ラムザ様から世界進出の話を頂いて、俺が調査隊の隊長に任命さた。隊のメンバーも一任されている。」
興奮気味に話すアイゼン。傍らには同じ髪色の男が居る。
「ようやくでございますな。アイゼン様を見つける事が出来たのも幸運であったと思いますが、ラムザ様に仕える事が出来たのも大きな幸運でございました。」
「そうだな。だから、先ずはラムザ様のご子息を探す事に全力を注ごう。その後に直ぐに動けるように皆の者に伝えよ。」
「はは。アイゼン様のおっしゃる通りに準備致します。今回は我ら一同全員を招集して行動でよろしいですか?」
「うむ。現在我らの仲間は何人になっておる?」
「各地に散らばっておりますし、祖国に置いている者も含めますと100,000人程の動員となります。」
「うむ。その全員に捜索を中心に動けと命令しておいてくれ。クラウン内の1,000人は直ぐに俺と共に任務を遂行する。」
「かしこまりました。ではそのように早速動きます。」
そして二人は即座に動いてその場を去った。
二人がその場を離れて暫くして木の陰からぬぅっと姿を現した者がいる。
「チア。やはりラムザ様がおっしゃていた通りに何か考えているようね。けど、ラムザ様に対する反目ではないようね。」
≪そうみたい。でも注意は必要。≫
「そうね。私は報告に戻るわ。チア、気配は追っていてね。」
≪了解。了解。≫
バッと動く影はその場を離れラムザの元へと急ぐのであった。
「アイゼン。馬鹿な事はしないでね。」
ぼそっとつぶやくのであった。




