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48 精霊使いと商店



フードを深く被る男が豪華と言える建物に入って来る。

それを見たお店の従業員とおぼしき者が声をかけた。


「お客様、何をお探しですか?」


「あぁ、ちょっとエリザ代表に会いたいのだが。」


「代表ですか?すみません。お客様のお名前をお聞かせくださいませんか?」


「すまない。ラムザだ。」


「少々お待ちください。」


店員は少し奥に行き、先輩従業員に事情を説明する。

それを聞いていた少し奥にいた店員は、一気に慌てだし、フードの男に礼をする。


「ラムザ様。申し訳ございません。」


「構わない。ここを離れて5年位は経っているからな。知らない者が居ても当然だろう。」


「ありがとうございます。どうぞこちらへ。」


ここはアーダム大陸北部のボンドー国都のエウレイアの一番の商店である【シャルマン商店】本店だ。そこの代表エリザの執務室へと案内されるフードを深く被った男。一見すると変だが、この商店においてこの男ラムザとは、そういう対応をする唯一の人間である。

案内する店員がある部屋の入り口のドアをノックする。


「エリザ代表。ラムザ様がいらっしゃいました。」


中からガタン!という音が聞こえた後、勢い良く扉があくと中央に高価な衣装を纏ったハーフエルフが泣きそうな顔で男に突入してくる。


「痛いよ、エリザ。」


「だって、寂しかったんですよ?」


泣きながらも、何とか声を出したエリザ。


「すまない。」


≪連絡はとっておったではないか?≫


「だって、一緒に居られなかったのは間違いないじゃないですか?五年ですよ?五年!」


≪たった五年ではないか?≫


「何がたったですか?ペレ様も酷いですよ。自分は一緒に居たから良いですよね!」


≪泣かないで、エリザ。ラムザ様、ペレ様お帰りなさい。≫


≪おぉ、ユートゥルナ。元気そうじゃの。≫


凄い剣幕になったエリザを見たペレはすぐさま隣のユートゥルナに助けを求めた。


「でも、本当に良かった。元気そうで。」


「あぁ、この通り元気だ。それにしてもお前も凄いな。たった五年でこのアーダム大陸中の主要な街全てに店を構えるとは。」


「私ではありません。全てはプリメラの力によるものです。」


「そんな事は無いよ。エリザも頑張って代表をこなしてくれたからさ。それよりそろそろ、抱き合ってないで、椅子に座ったらどうだろうか?離れがたいのはわかったから。」


ビクッとして声を発した方へ二人は揃って顔を向ける。そこには同じくハーフエルフの妖艶な女性が居る。


「ご、ごめんさい。プリメラが居るのを忘れてた。」


「おいおい。エリちゃん、それは酷くないかい?」


顔を赤らめたエリザが離れる事で自由になったラムザ。ここで漸く全員が椅子に座る事になった。

シャルマン商店の代表にエリザが就任してから丸五年が経っていたのだ。その間、エリザはプリメラの協力を得て商店の拡大をしてきていた。現在では、大陸一の商店へと変貌していた。小さな村まで行商をする事でカバーしている。知らない者は居ない商店になっている。


「でも、本当に凄いよ。おかげでこの【アーダム大陸】の捜索は終了したよ。」


純粋に称賛するラムザに、更に顔を赤くするエリザ。言葉になっていない言葉を発してアタフタしているエリザを余所に、話を進めるプリメラ。


「それぞれの人材は育成出来てきています。今後の展開をご指示頂ければと思います。」


「世界に展開して行こう。この【アーダム大陸】では見つける事は出来なかった。それにこの大陸内だけでも今のあり様だ。俺達に出来る事はまだまだあると思う。今後は、商店の世界進出をしていく。商店を中心にして地盤を作って、その後に冒険者を投入して捜索しながら広げていくぞ。」


世界地図を広げたプリメラが問いかける。


「では、先ずは何処を目指されますか?」


「全ての港町に展開したいな。人員は大丈夫か?」


「そうですね。そうするに約三年は必要かと思いますが、10カ所ぐらいであれば、直ぐにでも設置出来ると思います。現在のこの【アーダム大陸】内の主要メンバーを派遣する形をとり、それぞれの代表としてやらせる必要があります。エリザでは正直言って厳しいでしょう。」


うんうんとエリザが頷きを見せるが、言ったプリメラは苦笑いをしている。


「わかった。では商人の統率や組織についてはプリメラに一任する。決定後に報告をくれ。それぞれの担当には直接、面通しをさせてくれ。」


「わかりました。」


プリメラは快諾する。


「エリザは引継ぎが終わった後に、私と一緒に動いてもらう。そのつもりで準備をするように。」


「やった!じゃなくて、かしこまりました。」


エリザの反応を見てプリメラは苦笑を隠せなくなっている。もちろん精霊達も笑っている。

とってもホンワカした空気が流れるのであった。









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