47 見通し
入学式まで後一週間となった。
マカロッサ家の屋敷も現当主である父上が来るとあって準備に忙しそうだ。在校生である我が家の従者達も手伝いだすという大事のようだ。
マカロッサ家の国都テーストには20人弱の人間が勤めている。
そこそこに大きい屋敷である為に維持が大変だと聞いた事があるが、今の準備を考えるとある意味で納得出来た。貴族が動くというのはそれなりに大変なのだ。
私達の屋敷もとい基地の出来上がりはというとかなり順調だ。前世の記憶ではかなり時間がかかるような作業も魔法がある分だけかなり早い。その分技術は進んでないようだが、重機があれば、もっと早いのかもしれない。しかし、重機がやる事を魔法を使ってやる。例えば、掘る行程なんかは、魔法で直ぐだ。さほど時間がかからない。勿論魔法の使い手によるのだが、私がやればすぐだ。しかも知識としても図面が読めるからその分だけ緻密な作業になる。魔法で一瞬だけど。
現在は地下が完成し、建物の外枠は完成しつつある。やはり、入学に間に合うか間に合わないか?って所だろう。
「忙しいようだな。ミーリアも手伝わなくて良いのか?」
「私はザバルティ様の専属メイドですよ?意地悪ですね。」
「ははは。たまにはいいじゃないか?(いつも恐い思いをしてるんだから。)」
「何か心の声がでてませんか?」
「気のせいじゃないかな?」
う~ん。と言って少し拗ねた顔を見せるミーリアは可愛く見える。いつもこんな感じで居てくれると嬉しいのだけどね。あまり揶揄う事をし過ぎると、後が怖いので程々にしておく。
「ところで、父上はこちらにいつ頃着く予定なんだ?」
「三日後のご予定です。後、ご家族総出でこちらに来られるようです。」
「皆で来るって?本当に?」
「はい。祖父母様もご一緒に来られると伺っています。」
「本当に?」
何度か聞き直してしまった。嫌な顔せずに答えてくれた。
「超特待生であり、主席を獲得しているので、家族が参加せねばならない。とおっしゃったと伺っておりますよ。」
というか、そのメンバーって事は、結構な護衛がついてくるんじゃないかな?大事じゃん。
もっと力をセーブした方が良かったかな?でもかなりセーブしたんだけどな。
「ザバルティ様はある種の偉業を達成されたのですから当たり前の事かと思われます。また、王にも謁見して感謝を伝えねばならないともおっしゃっておられたようです。」
そうか、マカロッサ家としては臣下の礼を示す必要もあるという事か。面倒だけどする価値はあるね。ただの子爵家であるなら、問題はないのだろうけど、マカロッサ家じゃそうはいかないか。
「祖父母様も楽しみにしていらっしゃるようですよ。」
「そうか。ある意味で孝行が出来たという事かな?」
「そういう事ですね。お子遣いを頂けるんじゃありませんか?」
「そうかもしれないな。」
可笑しくなって笑ってしまった。
◇◇◇◆◇◇◇
テースト付近の山の上にある小屋の奥から声がする。イライラした様子で声を荒げた。
「おい。一体奴は何なのだ?」
「どうも、マカロッサ家の一族の者のようですよ?」
「お前は相変わらず発言が軽いな。」
「お褒めに預かり光栄で~す。」
「ふん。褒めてはおらん。これだから、ダークエルフは信用ならん。」
「あら、短期のチンチクリンこそ、信用できないんじゃなくって?」
「なんだと!」
「あら?殺るのかしら?」
「それ位にしておけ。そのマカロッサ家の一族とは何なんだ?」
「さぁ?私は知らないわ。興味無いわ。」
「ちっ!使えぬ奴め。」
「まぁ、良い。早く王族の奴を一人連れてこい。そうすれば後は些細な事。早くせねばあのお方に何をされるかわかったモノではないぞ。」
それまで、いがみ合っていた二人も急に顔つきが変わる。
「それは、まずいわね。」
「強硬突破で良いんじゃないか?」
「あんたの所の者が何人死んでも構わないけど、うちの所のは手塩にかけて育てているから簡単に死なれたら困るわ。」
「全く、お主らはいい加減にせよ。後の二人を待っておっても仕方あるまい。先ずは情報をもっと集めよ。ハリーエンス良いな。後、ブリエンドは礼の計画を進めよ。ビーリスのような失態は笑えぬぞ。」
「わかったわ。」
「良いだろう。我らの力を見せてやる。」
ザっという音と共に二人の姿は消える。
「やれやれじゃわい。この老骨に若は無茶を押し付けるからこう面倒なのじゃ。」
「爺さんも大変だな。」
「ほんとほんと。」
「ふん。そう思うなら、お前らが確りやってくれれば良いんじゃがのう。」
先ほどの二人とは様子が違う二人が現れて、揶揄う様に言う。
「無理無理。相手が悪いわ。」
「本当だよ。あんなの相手にしたら命がいくつあっても足りないよ。」
「ふん。これだから、今どきの若いもんはいかん。あのお方の命令じゃから仕方が無かろう。やるしかないのじゃよ。」
本当に面倒だとでも言う様に、やれやれといった感じの顔になる老人。
「では、あの二人の監視を頼む。ワシはあのお方に報告しに行くから当分戻らんからの。」
「「了解。」」
フッと老人は消えたのだった。




