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44 神の力



予定通り、空き地に奴隷を下ろさせ、御者と馬車は帰らせた。

待機していたロバートが馬車と共に出てやってきた。奴隷達は一様に不安を隠せない様子だ。


「私はザバルティ・マカロッサという貴族だ。不安はあるだろうが、私について馬車に入ってくれ。」


益々、わからないという顔の奴隷達。それはそうだ。亜空間なんて無ければ、この馬車には良くても10名程度しか入らないわけだから、不思議でもあるだろう。

兎に角入ってもらわなければ、どうしようもない。が、そこは奴隷。渋々といった感じだが、私についてくる。馬車内の亜空間入り口にはトーマスが居るので私は亜空間内へ入る。中は更に奥に続く扉をつけてあり、その先は・・・。


「なんじゃこりゃ!」

「デカい空間がある!!」

「どうなってんのこれ!!!」


ビックリ仰天の奴隷達。


入り口では押し合いが起こっている。まぁ、そうなるわな。今まで一言も発していない者達でさえ声を出している。


「さぁ、中に全員入りなさい。静かにね。」


想像できない事に出くわすと人は固まるし、不安にもなる。全員がそんな顔をしている。


「さぁ、先ずは全員入ったなら、私を前に見て座ってくれ。」


ただただ、広い白い空間にしてある。そんな中、光は注いでいるように全体は明るい。


「私は、先ほども言ったがザバルティ・マカロッサだ。今からの事を説明する。」


すると、全員が私をみた。不安と恐れが顔に出ている。仕方がない。


「これからする事、起こる事は他言無用とする。これは命令だ。良いな?」


コクコクと皆が頷くのを見て続ける。


「では、始める。」


私は一人の少年の前に立つ。


「君の名前とこの怪我について話をしてくれ?」


「僕は、カイです。農家の息子でした。2ヵ月前に家の手伝い中にモンスターに襲われて、この腕を無くしました。家族はモンスターに殺されてしまいました。」


「そうか。辛かったな。これから、幸せになろう。」


強い光が部屋を包み込む。次の瞬間、失っていた少年の腕はちゃんと体にあった。そう、私の授かっている【神力】をつかった。気持ちを押し殺していた少年の目に涙が溢れると共に、信じられないという顔をしている。失望から希望に代わったようだ。


「死んだ者を生き返らせる事はできない。許して欲しい。腕は動くか?」


「は、はい。ありがとぅぅござぁいます。」


泣いて声にならない。


「信じられない!神か?」


「神様!!」


回りがざわつく。信じられないという顔だ。

そうやって一人ずつ順番に質問し聞き出して治癒を施した。かなりの時間を使った。

中には両足が無い者や不治の病といわれる病気の者もいたが、問題なく治った。

皆が驚きと感謝の気持ちを持っているようだ。最後の人が終わる頃には全員が信者となっていた。何故わかるのか?それはね・・・。


≪マスター、55名の信者を獲得致しました。≫


というナビが発生するからだ。というか、人数が多くないかと周りを見渡すと、2名ほどの身内までもが信者になっておりました。


「ザバルティ様の本当の力に触れた気がします。」


「ザバルティ様は凄すぎる!」


圧倒的すぎる能力の前に友情が畏敬の念に代わってしまったらしい。これはミスったか?


「二人ともぼーっとするな。帰ろう。私達の新しい住処に。」


「はい。」


「はい。一生着いて行きます!!」


これは、ロバートの方が重傷だわ。この後、友情を取り戻すのに苦労したのは別の話だ。



◇◇◇◆◇◇◇



あのまま、奴隷達を亜空間に入れたまま、私達は街に戻った。

そして直ぐに屋敷へ入り、倉庫の中に奴隷達を入れた。

ミーリア達は衣服と食事を用意していてくれた。着替えさせ直ぐに食事となった。


食事の後に今後の話をした。

そして、奴隷解除を申し出たのだが、全員に拒否されてしまった。


「何故だ?自由になりたくはないのか?」


「おそれながら皆を代表して言わせてください。繋がりが消えてしまうのが嫌なのです。皆ここに居る者達はこの先長く生きられないと思っていた者ばかりです。そんな私達がこの先に希望を見いだせるのも、【神の使徒】であられるザバルティ様があっての事。私達をどうか見捨てないでください。そして私達との繋がりである奴隷契約も残しておいて欲しいのです。」


「いや、そんな事を気にしなくても仲間でして貰う事に変わりがない。」


「いえ。私達はザバルティ様に選んで頂いた奴隷であるという事に誇りを持っているのです。ザバルティ様の奴隷である事をお許しください。そして奉公させて欲しいのです。」


奴隷である皆を見回しても同じ顔だ。信者だからなのか?


「良いな。俺もザバルティ様の奴隷になりたい。」


ロバートよ。お前もか?!


「わかった。では、奴隷契約はこのまましておく。何時でも解除するから、言ってくれ。」


本当に良いのか、わからないが、気のすむようにしてやる方が良いと判断した。

ある意味、諦めたとも言えるがね。奴隷になった事は無いし、信じられない光景を自分に受けた事もないから、理解できていないのかな?


≪マスター。信者を甘く見てはいけません。信者は死すら越えますよ?≫


あぁ、そうだった。日本でもそういう事例があったよ。戦国時代とか一向一揆とか、現代でもサリン事件とか。今後、自分の言動には気をつけよう。と思った日だった。






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