42 人材確保
昨晩はプロジェクトの延長会議を長い間した。セシリアさんとの建築に関する話をするのはやはり楽しい。理解してもらえるというのが大きいのかな。セシリアさんには今日は建物をさがしてもらう為に別行動だ。しかし気になる所もある為、アリソンとミーリアに同行してもらっている。
私は、昨晩決意した人材確保の為に奴隷商の所へ来ている。
想像通りの場所で、人権なんて無いと思わされるのに相応しい場所のようだ。
清潔感はあるのだが、鉄格子に囲まれた所に入れられた人達が多くいるようだ。それよりも気になるのが地下に入れられているであろう人達だ。この人達は何故地下なのか?その理由がわからない。現在は一階にいるのだが、特別混みあっているからではなさそうだ。
≪欠損や病気の人が地下に入れられているようです。≫
なるほど。売り物になりにくい者達がそこに居る訳か。
カミコちゃん。ちなみに私に直せない人はそこに居るか?
≪いません。全て対処出来る者達ばかりです。≫
じゃあ決まりだな。およそ50人もいるが・・・。何とかなるだろう?
「トーマス。お金はいくら位用意している?」
「あるだけ用意しています。私達に装備等のお金がかからないので、そのまんまある感じですね。」
「わかった。大勢を雇う事になるから、そのつもりでいてくれ。」
「はい?」
驚いた顔をしているトーマスを余所に私は商人に話しかける。
「今回は大勢の人が必要だ。ここの館にはどれくらいの人数が居るんだ?」
「今ですと、38名です。女が20人で男が18人です。」
笑顔で答える商人に対して私は侮蔑の感情が出てくるのを抑えて再び口を開く。
「それは健全者という所か?欠損や病気の者は含まれていないな?」
「は、はい。必要ないかと思いまして。」
「今回は、健全者に要は無い。安くて死んでも構わないような欠損や病気の者を希望している。」
「えっ?そうですか?そうなんですね。」
何を想像したのか、奴隷商人フランツと名乗った男はニヤリとした顔を見せた。私は更なる侮蔑の感情が芽生えたが、押し殺して続けた。
「お前にとっても悪い話ではないだろう?安く用意せよ。」
「はい。かしこまりました。先ずは人数確認と動けるかどうかを確認してまいります。」
そういうと奴隷商人はそそくさと席を立ち出て行った。
「いいんですか?」
「良いに決まっている。私に任せておけ。今は何も言うな。」
「わかりました。」
トーマスはいつもと違う私の物言いにビックリした顔をしていたが、私がハッキリと言い切った為に押し黙った。そして少し経つと商人は戻ってきた。
「お待たせ致しました。53人おります。一人金貨1枚でいかがでしょうか?」
「全員動けるのか?」
「動けるように薬を使います。また乗せる馬車も用意します。それで全部込みで金貨53枚でどうでしょうか?」
「馬車は必要ない。こちらで用意する。金貨45枚が妥当だろう?」
「かないませんな。では薬を使い動けるようにして金貨48枚でいかがでしょうか?」
「まぁ、良いだろう。金貨50枚だ。明日また来るから全員を綺麗にし、まともな服と飯を用意しておけ。」
「かしこまりました。」
契約書を用意し、金を渡す。そして直ぐに奴隷商人の館を後にする。
「どうするんですか?欠損や病気の者なんて。しかも50人。」
「あぁ、すまないな。考えがあるんだ。私に任せてくれないか?」
「ともかく、53人者人間が増えて、私達を含めると60人。今後を見据えて100人規模の人間が入れる建物が必要だ。早くセシリアと合流して今日中に決めてしまうぞ。後は魔法でどうにかする。」
「ですよね。たぶんそうだとはおもいましたが。返送して偽名を使ってまでしてますからね。」
「そうだ。貴族も楽じゃないな。」
「ですね。でもあの商人の顔はムカつきますね。」
「あぁ、胸くそ悪かったよ。仕方がない事だと理解はしているが。兎に角、建物が重要だ。急ごう。」
何処にいるのかわかるのか?そりゃあね。
≪マスター。彼女達はここです。≫
◇◇◇◆◇◇◇
直ぐに合流ができた訳だが、いきなり来て50人以上増える事を話すと、ビックリしていた。が想定外っていう訳ではないようだ。
「ザバルティ様が決めた事であるなら、問題はないでしょう。それよりも物件探しを急がなければなりませんね。」
「学院が近くて100人規模の建物ですか?では、良いのがありますよ。ただ、とても古い建物である事が、欠点ですね。」
教えてくれたのは、不動産を扱うお店の方でセシリアさんの知り合いのエイクラさんだ。
「では、そこにご案内しますね。」
「ええ、お願いします。」
6人で向かった先にあるのは、敷地が広いが建物は朽ち果てそうな物件だった。古くて大きい洋館という感じだろうか?ただ、敷地面積はかなりある。かなり昔に潰れた商人の家だったようだ。だから、倉庫もあり、地下室もあるようだ。
「これでは、住む事は難しいですね。」
「ぼろい~。」
「ですよね。ここは敷地位しかお金にならない物件なのですが、立地が良いのでそこそこのお値段なんです。」
「これ良いね!」
「良いの紹介してくれた!!」
私とセシリアは喜んだ。建物?そんなのリフォームするか建て替えれば良い。とりあえずは倉庫に奴隷達を住まわせて、その間に本館を処置してしまえば問題ない。
ビックリしている4人を放置して私とセシリアは、どするのが良いか議論しだしたのだった。




