40 国家企画
難を逃れ一人王城へ向かう私。(難ってつい言ってしまった。)
馬車の中で一人想像を膨らませる。そう、これから行う予定となっている国家プロジェクトだ。
何を隠そう、一大プロジェクトにはあの試験の時の提出した設計図が関わっているのだ。
そう、夢の温泉宿を造るのだ。これは、妥協できない事が多数ある。特に【和】だけは何としても取り入れる。悲観はしていない。何せこの世界に【和】があるとは思えないから。全くないとは言えないかもしれないが、あの世界感は現代日本が歩んできた道のりでしか体現できない物であるから、転生や転移した日本人が居ない限りはこの世界にないと言える。
≪現在、確認はされておりません。≫
システムのカミコちゃんのお墨付きありだから多分世界初の建物になる予定。
少なくともこの国では温泉宿は無い。この間行ったあの西洋式がいいところだろう。あれば、カミコちゃんが教えてくれるけどね。
≪その通りです。もっと頼って良いんですよ?≫
ありがとう。最近近くに居る女性が怖いので、二次元に逃げてしまいそうになる。カミコちゃんは女性の声だから、勝手に想像している。少しでも助かる。気分だけだけど。
≪マスター。不審者らしき者発見しました。≫
王城まではどれくらい?
≪10分位ではないでしょうか?≫
ではスルーだな。こんな日中で無茶はしないだろうしね。帰り道には注意しておいてくれ。
≪了解です。≫
それから何事もなく王城へ着き。マリリン第三王女に連れられて会議室へ向かうのだった。
◇◇◇◆◇◇◇
「如何に凄い物かは、良くわかった。これほどの物となると莫大な費用が掛かってしまうな。どうやって工面する?」
「それは、国が出すわけにはいかんのか?」
「そんな無茶を言わんでください。」
「確かに。どこまでやるかにもよるが、国関与となれば、妥協は許されまい。」
「妥協するぐらいなら造らぬ方が良いだろうな。」
国の要職に就く方々の話し合いはこのような感じで平行線。結果資金面と国の体面と未知への投資が無駄になるのではないか?との懸念が一番大きいかな?このままいくと時間ばかりが掛かるような気がする。どうだろう。金は自分で用意して初めてしまった方がいいのではないだろうか?土地の問題があるんだよな~。別に国に頼らなければならない事なんてほとんど無いからな。
「すみません。ではお金は私が用意します。資材や土地を用意してもらう事は出来ませんか?それらを買い取ります。つまり、国家計画ではなく、私個人のプロジェクトに国が協力する形をとってもらえないでしょうか?それであれば、今回の超特待生への優遇処置ともとれますから、国の体面も守れるし、上手くいけば、国が援助したという結果が付いてきます。どうでしょうか?」
「ザバルティ君。君はそれで良いのかい?しかしお金はどうやって工面するのだね?」
「そこは、追々考えます。今は計画として進めていくのが大切ですので。」
「ザバるんじゃなかった。ザバルティさんがそれで良いのでしたら、それで決定しましょう。皆さんも良いですか?」
賛成多数で可決された。
「では、土地候補探しと資材準備を国が請け負うがあくまでも、超特待生主席であるザバルティ・マカロッサへの援助であり、資金調達から運営費に売り上げ等の金銭的な物は国は一切関わらない物とし利権は全てザバルティ・マカロッサの物とする。以上、異論はありますか?」
マリリン第三王女は周りを見渡し、異論が無いのを確認した。
「異論はないようですので、これは国の決定とし国とザバルティ・マカロッサの間で交わす契約と致します。以上、解散。」
異論があったような人もいた様子があったが、概ね賛成多数で決定された。
つまり、国は初回は援助という形で体面を守りつつ損害を受けないようにした。
で、私個人のプロジェクトとしてスタートをきる事になる。資金ゲットが最初の課題かな?
それさえ確りとクリアすれば、問題ない。私の野望を遮る物なのないのだ!と心の中で叫んでみた。
かなりストレスが溜まってるのかな?
≪その通り、ストレスが多く見受けられます。お気を付けください。≫
うん。気をつけよう。
「ザバるん。本当に良かったの?」
「もちろん。協力ありがとう。助かったよ。でも、いつもと違う姿が見れて新鮮だったよ。」
「いやぁ~。惚れ直した?」
「いや、新鮮だった。」
「あれが、いつものマリリン第三王女の姿、対応でございます。ザバルティ様の前がおかしいのですよ。どこでもいつも通りしていれば良いのに、おかしくなるんで困っています。いつもは冷静で高潔な第三王女であられますのに・・・。」
横から、メイドさんが小言のように言う。
やっぱりそうなんだね。私の前だけオカシイんだね。いつも通りで良いのにな。トホホ。




