4 高熱
私は夢を見た。
私は地球で日本という国に生まれた。88歳で家族に看取られながら、死を迎えた。
そして、神に会った。
次に一人の若い男の子の人生だろうか?
走馬灯のように2つの人生の経験が頭に入ってくる。
頭が痛い。物凄く痛い。何年か経ったのではないか?と思えるくらい続く。
そして、ふと痛みが無くなった。
目を開けるとあたりは明るい。何時くらいかな?と思い周りを見渡すとベッドの横に母が居て、私の手を握っている。頭には氷袋が置かれており。あれ?と思っていると。
「ザバルティ様、お目覚めになられましたか?」
と心配そうに私の専属メイドをしてくれているミーリアが顔を覗かせる。
「あれ?これはどういう状況?」
聞くと、親切丁寧にミーリアは答えてくれた。一週間もの間寝ていたらしい。
その間、母が付っきりで看病してくれていたようだ。その間には医師や神官などを呼んで状態確認と治療を頼んだが原因が不明だったようだ。
「ザバルティ、起きたのね。良かった。本当に良かった。」
と途中で母が気づき涙を流して喜んでくれた。気を利かせたミーリアが父と他の家族に声をかけに行ってくれたようだ。
「髪の毛が白くなってしまった時は本当にダメかと思いました。???目が白くなっているではないですか?見えてますか?」
母上の言葉にビックリしてベットから降り鏡の前に向かう。
鏡の前で改めてビックリした。白くなっていた。いやどちらかというと白銀色だ。
「意識がもどったか!」
「兄上、大丈夫ですか?」
父上が大きな音をさせながら入ってきた。その後に弟達が続いて顔をみせてくれた。
弟達も目の端に涙を貯めながら笑顔で気遣ってくれたのだった。
「すいません。御心配をおかけしました。」
「無事であれば何よりだ。」
「ありがとうございます。」
家族の優しさと温かさに前世を思い出し、涙が後から後から溢れてしまった。
◇◇◇◆◇◇◇
その後、聞いた所によると、私はこの一週間の間中、高熱を出し続けていたらしい。
髪の色が黒から白銀へと変化をしていたらしく、治療師や高僧をよんで見てくれたらしいが原因不明。どんな術もきかなかったようだ。
変化は外見だけではない。私は前世を思い出したのだ。
神様から力を与えられた上に、地位や生活環境に教育環境まで整っている。
かなり幸運であると言える。この状況ですら、神様のおかげであるだろう。
私は改めて神様から言われた事を思い出す。
私の感性で生きる。特にすべき事が決まっているわけではない。
であるならば、楽しむ事が一番だと思う。
楽しむと言っても、若い時に死んで転生したわけではなく、一生を終えた爺さんであった訳だから、この世界でしか出来ない事や、前世でしてみたかった妄想を実現するのが面白いかな?
また、この世界は私の知る限り、多種多様な種族がいるし、剣や魔法がある世界のようだ。
まずは堅実に自分の能力を磨く事が大切だな。結局、こっちの世界でも勉強は重要って事だね。
◇◇◇◆◇◇◇
高熱を出してから数日後に突然頭の中に言葉が響いた。
≪ザバルティ様、初めまして。≫
「誰?」
思わず口に出した。響く言葉は続ける。
≪私は貴方様のサポート役を授かったシステムです≫
システム?どういう事だろうか?サポートしてくれるとはなんだろうか?そんな事を考えているとまた響く。
≪貴方様は神様に選ばれた人間です。覚えていらっしゃるのではないでしょうか?≫
そういえば、転生する時に神様にお会いした。だけど、明確な事は言われてない。手伝って欲しいとしか言われてない。けど、力を与えると言われていた。
≪そうです。その一端として私がおります。貴方様は神様の使徒としての力を授かったのです。私は貴方様に「念話」の形にて貴方様に話しかける事ができ、貴方様も私に話しかける事が出来ます。≫
それで、さっきから声を出していないのに答えてもらえるのか。と納得した。
所で、どんな力をもらったのだろうか?
≪貴方には神の寵愛が授けられており、色々な成長補正がつきます。また、神の使徒という特殊職業を獲得しておりますので、神の能力の一端を使えるようになっております。その一つが私の存在です。また、使徒レベルが上がるにつれて使用能力が解放されていきます。≫
なるほど、すごいね。
≪現在解放されている能力は、「賢者」「鑑定」「飛翔」「マップ自動表示」「並列思考」「幸運」「魅力」となっています。また、それ以外として、技能・魔術の全適性はオールSとなります。≫
そうか、わかった。ありがとう。Sって高いのかな?低いはずはないだろうけどね。
≪そうですね。人族は平均的な種族ではありますが、平均としてはDとなるようです。また現在確認出来ている物は上からSS・S・A・B・C・D・E・Fという区分けになっております。≫
ふむふむ。かなり優遇されてるね。益々、「何かをさせたい。」という意思を感じる。まぁそんなに深く考えるのはやめよう。先ずは、自身の強化が必要だな。
「ザバルティ!どうした?」
「えっと何でもないです?」
父上が怪訝な顔でこっちを見てる。
かなり長い事ボ~っとしてたのかな?気をつけないと変な人になっちゃうな。
「では、近日中に快気祝いを兼ねた誕生日会をするとしよう。」
「えっ?」
「お前の専属従者になる予定の3名も呼ぶ。また、10歳の記念であるから、全ての貴族にお披露目を兼ねて招待する事になる、心しておくように。」
「かしこまりました。」
我が、マカロッサ家は子爵家でありながら、交易都市を抱えている為に大掛かりな事をしばしばおこなう。もちろん外国の有力者も呼ぶ事になるのだろう。
「では、仕立て済みの衣装を着てみる等、エスネスと準備を進めてくれ。」
「かしこまりました。」
「ドドリゲス。招待状の手配を頼む。ミーリアは式の準備をエスネスに相談しながら進めてくれ。」
「はっ(い)。かしこまりました。」
大事になってきた。うん。面倒だがマカロッサ家としては仕方がない事かと思う。ただありがたい事に、この歳でも婚約者を用意されない事だ。他の貴族では10歳には婚約者がいるのが、この国では普通の事だ。親同士が決めてしまう。しかし、私の父上と母上は、そのような風習は好きでは無いらしい。自由を愛する家風のおかげでもあるだろう。