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353 壮絶な蹂躙。


『壮絶な蹂躙』


この言葉が似合う様な気がする。

目の前の光景は、凄まじい。


先ず、全体を覆う様な大きな高い白い炎の壁を構築したアリソンさんは、その白い炎の壁を一気に中央のテント迄、飲み込ませる。


その後を追う様に風の魔法が薙ぎる。

そう薙ぎるのだ。風の壁と言うのだろうか?かまいたち現象?そのような感じで死体?が燃えている所を薙ぎっていく。切断と言えるかな?

それが中央迄一気にいくのだ。


そして、その後に、ウジェニーさんと、ペニーさんが突っ込んでいく。

そして遅れながらもプレストンさんも。


「出遅れましたね。」


「ああ、出遅れた。」


「無理ですよね。」


「ああ、無理だ。」


そんな会話を僕とパークリーさんはした。


「僕はあっちを見てきますね。」


「ああ、俺はこっちを見てくる。」


僕達二人は漏れがないかを確認する為に両サイドに別れた。

『剣技とか、武技とかそんなの関係ねぇ♪はい♪オッパピー♪』

そんな音楽が頭を占領した。


今、まさに中央のテントに向かってドッカン!ドッカン!言わせながら進むデストロイヤー二人+目がイッチャッテル一人を横目に、僕は白い炎の壁の外周を回っている。


流石に不死身と言われただけはあるようで、蠢いている様子はあるが、外周にまで到達する相手は居ないようだ。相手にも、アリソンさんレベルの魔法使いが居れば、防ぎようもあったのかもしれないが、少なくとも、現状では反応が無かった事からも魔法使いは居なかったのだろう。


この白い炎の壁を円として見て、その外周の四分の一を着た所で、人の声がした。


「なんだ?何が起こった?」


その声のする方へ眼を向けると、茫然と立ち尽くす一人の男性が居た。

黒髪の黒目。日本人だと直ぐに僕はわかった。


僕は一気にその男に近づき、逃げられる事出来ない位置に立つと、声を掛けた。


「貴方が、マコトさんですか?」


男性はビックリした感じで僕の方へ顔を向ける。

近くで改めて見ると、普通に何処にでも良そうな顔つきだった。際立ってカッコよくもブサイクでも無い。


「誰だ?!」


「僕は煉って言います。貴方に聞きたい事があります。」


「お前がこれをやったのか?」


畏怖の感情が張り付いた顔を僕に向けてきた。


「いいえ。僕じゃありません。ですが、僕の仲間がやりました。もう直ぐ、終わるでしょう。」


終わるという意味を理解したのか、男性は逃げようとする。

それを、桜花で制して声をかける。


「逃げても無駄ですよ。マコトさん。貴方はナベリウスの仲間であり、死体、または死霊を支配するスキルをお持ちですね?」


「なっ!」


何処まで知っているという顔になる男性の目は恐怖に彩られた。


「それに、この森から死体が無いのにどうやって出て行くつもりですか?」


「うっ!」


観念したのか、男性は体の力を抜いた。


「お、俺をどうするつもりだ?」


「そうですね。わかりません。少なくとも放置は出来ないでしょう。」


ガックリと肩を落とす男性。


「すいませんが、逃げ出せない様に縄を掛けさせてもらいます。」


「・・・。」


僕は警戒しながらも、魔法鞄から縄を取り出し男性を縛る。

難しい縛り方なんて知らないから、簡易的になったけど。罠で縛ってから、僕はその男性と一緒にアリソンさんとロマニーさんが居るはずの元の場所に戻る。


「ついてないな。」


「えっ?」


「こんなチートなスキルを異世界に着て手に入れても、強い奴に出会ってばかりだ。」


独り言の様に、その男性は続ける。


「【死霊支配】という名のスキルなんだが、俺はこんなスキルが欲しかった訳じゃない。俺はひっそりとこの異世界で暮らしたかった。なのにどうしてこうなった?他人に利用されてばかり。俺はどうすれば良かったんだ?」


マコトという男性は自問自答しているかのような独り言を続けた。


「そいつがマコト?」


「その様です。」


「こっちは、片付いたわ。」


そう言いながら、ウジェニーさん達が戻って来た。

皆の顔は満足そうな感情に彩られていた。


「わかった。」


アリソンさんはそう言うと、パチンと指を鳴らした。

先ほど迄外周をかたどっていた白い炎の壁は一気に崩れる様に白い炎の水の様に、中央へ向かって流れていく。


「これで死体は全て灰。」


その言葉の通り白い炎が中央に達して山になっていくとその白い炎が通った後は真っ黒い状態の平らな土地になっていた。そして全ての白い炎が中央に集まるとアリソンさんは指をもう一度鳴らす。白い炎はその中央で消滅した。


「あうあうあう。」


その光景を見たマコトという男性は、言葉にならない音を口から漏らした。


「マコトだったわね?色々聞きたい事があるの。正直に話してくれるかな?」


僕達の中央にマコトという男性を置いて、ロマニーさんが語りかけた。


「わ、わかった。だから命だけは助けてくれ。俺はまだ死にたくない。」


そう言うのがやっとという感じだった。


「う~ん。そうは言ってもアンタのスキルは厄介すぎるだろう?」


「俺だって、こんなスキルが欲しかった訳じゃない。悪用しない。だから頼む。」


「命の話は後。」


アリソンさんの一言で、その話は断ち切られる。


「お前がエグゼイドな街で死体を集めていた。間違いないな?」


「・・・間違いない。それは俺だ。」


「では、誰の指示でやった?」


「・・・ナベリウス様の指示だ。」


「そのナベリウスの居る場所はどこだ?」


「それは・・・。」


初めて言い淀んだ。


「どうした?」


よく見るとマコトという男性は苦悶の表情になっていた。


「あ、の、・・・りゅ・・・うぐっ!」


マコトという男性は白目を剥いて、喉を両手で抑え後ろに倒れる。


「お、おい!」


慌ててパークリーさんが駆け寄り、体を揺する。

すると、マコトの歪んだ顔の口の端から気泡が沢山出てくる。泡とでも表現する方が正しいのかもしれない。


「息はある。回復魔法を!」


パークリーさんがそう叫んだ時だった。


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