352 デストロイ?
翌日の朝、僕達は森の中へ入った。
前日にアリソンさんとプレストンさんが森に入った時に、人が動いた形跡を見つけていたので、それを辿るというモノだ。
朝一で、アリソンさんの仲間が3人ほど、合流した。
その三人に、馬車は任せる事になった。
どうやって、この場所が分かったのかは深く考えなかった。
だって、ザバルティさんの仲間だよ?あの人達の事を考えても仕方がない。
目印を色々置いていたのか、それとも別の手段なのか?少なくとも、僕が考える事じゃない。
不思議ではあるけれど。
「一体、どんな方法を使ったんだ?」
プレストンさんとパークリーさんはすごく不思議そうにしていたけど、詮索はしないつもりのようだ。アリソンさんが昨日おこなった魔法による整地でも分かるが、常識が通じないメンバーであると思ったのだろう。
ここからは、徒歩での行動になる。
森は、ある意味捜索しやすい。
未踏の地である為に、大勢が入るとその痕跡が多く残る。
「どこまで行ってるかな?」
「少なくともゼロワン河までは続くだろう。」
そんな感じでスタートした捜索は、途中であきらかに多くの物が通った痕跡が残っていた。
ただし、周辺に生き物が多く存在している事から、時間は経過していると考えた。
そしてその痕跡を辿って進むと、生物の存在が少しづつ減っていくらしく、アリソンさんとプレストンさんが少しづつ険しい顔になっていった。
「注意しろ。」
たった一言だけども、それで皆は察した。
それから、僕でも分かる程に、周りから生き物の声や音が聞えなくなった。
「これは、やばいな。生き物が居ない。少なくとも動ける生き物はこの辺りから居なくなっている。」
全員の緊張感が大きく高まる。
野生動物や魔物は、危険察知能力が高い。
現代地球でもそれは知られている。
有名なのは自然災害と呼ばれるモノが起こる前兆に野生動物が逃げ出し始めるというモノ。
火山の噴火が起こる前に逃げ出したりするという。
この世界でもそれは同じ様だ。
「この先のある一角から周辺に全くと言って良い程、生命の活動を感じない。」
「当たりだな。」
パークリーさんとプレストンさんは頷きあい、僕達に目で合図をおこなう。
ここからは、隠密行動。静かにゆっくりと進む事になった。
それから少し歩いた。どれ位だろうか?30分位かな?
その時にプレストンさんが立ち止まった。ジェスチャーで身を屈める様に合図してくる。
斜め前を見ろとの合図で僕はプレストンさんの横に行く。
丁度今いる場所は少し丘の様な感じになっている場所で、下が見える。
その先には、多くの死体?人がひしめき合う様に横になっていた。
その中央には、小さなテントが張られている。
順番にその光景を目にして、プレストンさんをその場に残して、僕達は少し下がる。
「やばいね。」
「あれ、どれくらいの数何だろう?」
「たぶん、3千人とかかな?」
「鎧を着て居たり、ボロ服だったり、まちまちね。」
見た感想を述べあった後、対策を考える。
「テントの中に、例の男が居るのかな?」
「だろうな。」
真剣な話をしていると突然、アリソンさんが立ち上がる。
「燃やす。全て灰」
「えっ?」
「後の事は、その後考える。」
「はい?」
「まっ、その方が早いよね。」
「って?」
「破壊して再生させる。」
「「ええ?!」」
アリソンさんだけじゃなく、ウジェニーさんもロマニーさんもペニーさんもやる気だ。
僕とパークリーさんは最後には同じタイミングで驚くばかり。
「じゃあ、いっちょやっちゃいますか?」
「「「おお~!!」」」
ロマニーさんの軽い言葉に残りの女性三名が腕を挙げる。
う~ん。あっ!思い出した。ブラック・デストロイヤーという名前を。
目の前で、腕をパンパン鳴らすペニーさん。いつの間にかナックル系の武器を装備している。
いつもしてるっけ?いつもはロングローブに杖じゃなかった?あれ?
ウジェニーさんはジャンプしながら、気合を入れてる。
大きなバスタードソードを持って。って、いつもは只のロングソードじゃなかった?
そしてロマニーさんはもう既に魔力を込めだした。
練り上げるというのだろうか?魔法をタダ放つだけなら、いつもそんな感じの集中はしませんよね?
僕とパークリーさんは顔を見合わせる。
そんな僕とパークリーさんの肩に手を置く人が居た。
「デストロイ♪」
ニッコリと笑うアリソンさん。
これぶっ放すね。
そう確信した僕とパークリーさんは直ぐにプレストンさんの所へ向かう。
「デストロイ!」
その言葉で、何故か直ぐに理解した顔になった。
「デストロイ!」
プレストンさんはその言葉を返してきたんだ。
そして、ゆっくりと女性陣が後ろからやって来た。
改めて、見ると美人さん四人なんだけど、どうもその顔はやる気が溢れている。
その上、とても嬉しそうなのが、印象的だった。
戦う女神達ってこんな感じなのかも?
そういうイメージを沸かせる。
うん。少し、相手が可哀そうだなぁ~と思ってしまう。
『私も参加したい。』
『儂も、儂もやりたいのぉ~。』
『ふふふ。良いじゃないか!滾るね。木偶の坊!体を貸せ!!』
という、三名?の精霊の言葉が僕の耳に届いた。
えっと、女性ってこんな感じ?アリアさんもそうなのかな?
僕の脳裏には目の前の女性達と同じ様にやる気に溢れ嬉しそうなアリアさんの顔が浮かんできた。
あははは。




