350 私の王子様♡ その4
「あの、シャーロットって?もしかして?」
「そうよ。煉君の想像通りの人よ。」
「マジっすか?」
煉君が驚くのも無理はない。
ミス.ドロンジョという名前が先に立っているし、シャーロットって感じじゃない。
どうしても、ミス.ドロンジョという名前が先に来る。
◇◇◇◆◇◇◇
私達がシャーロットさんによって連れられて来た場所は大きなお屋敷だった。
「さぁ皆、入っておくれ。」
ビクビクしながら屋敷の中に入った私達を待っていたのは執事とメイドさん達だった。
「「「お帰りなさいませ。」」」
全員でお出迎えをしているのか結構な人数で迎えられた。
「フレイズ。後は、いつも通り任せたよ。」
シャーロットさんは、一人の紳士的な恰好をした執事に言っていた。
その人がフレイズさん。シャーロットさんの執事であり、右腕でもある。
「かしこまりました。では、皆さん。体を洗いましょう。先ずはお風呂へ案内致しますね。」
そうフレイズさんが言うと、私達の前にメイドさんが立ち先導するように皆を風呂場へと連れて行った。
そこにはメイドさんがズラリと横一杯に並び、皆を一人ずつ順番に洗っていった。
この時が、人生で初めて体を洗った記憶になる。
綺麗になった者から浴槽に入れられた。
そして長い事お風呂に入ってなかったからなのか、体を温めたらもう一度洗われて、別の浴槽に入れられた。
こうして、皆体を綺麗にさせられて、真新しい服を与えられた。
アワアワしている間に綺麗になった私達を見たシャーロットさんはニカっと笑った。
「良いじゃないか~。
そして次は美味しそうなご飯が並べてある部屋に通された。人数分のお皿に食事が並んでいる。
「美味しそう。」
皆がそんな感想を思い浮かべたと思う。が、誰も手を出さなかった。
たぶん、圧倒されていたんだと思う。
フレイズさんが私達の前に立った。
「皆さん。手を合わせてください。」
「「「「「はい。」」」」」
「頂きます。」
「「「「「頂きます!」」」」」
「どうぞ、召し上がれ。」
「よし、ご飯をお食べ。お腹いっぱい食べると良い。」
そう言われてようやく、一人二人と食事に手を付ける。
「おいしい!」
その言葉を聞いて皆は一斉に食べだした。私も漏れずに食べた。
その後どれくらいの間食事をしていたか、わからない。
ただ、お腹いっぱいになった事は憶えている。ひたすらに夢中に食べた記憶と共に。
一人一人にベットがあてがわれて、その日からそのお屋敷で済む事になった。
ちなみに、シャーロットさんは私達以外にも子供を連れて帰って来ていたようだった。
一年に一回のペースで。今現在も一回の人数は減ったようだけど、続けているみたいだった。
私達の年は一番多かったみたいで、およそ23人基本的には毎年10名位だったみたいで、先輩という位置づけの人も多く居たし、後輩も毎年増えて行った。
但し、いつまでもこの屋敷で世話をされる訳じゃない。
16歳の誕生日に、屋敷を出て一人立ちする様にと言われる。
その時に選択を求められる。
何をして生きていくのかを。
それを、この屋敷に来た2日目に言われる。
だから、皆真剣に色々な事に取り組む。
無邪気に遊ぶ時間は殆ど無かったと思う。
それから毎日は充実した日々を送る事になった。
午前中は読み書き等を含めた座学をして、午後からは戦闘訓練をした。
フレイズさんを筆頭とした方々の指導・教育は厳しく毎日ヘトヘトになったのを覚えている。
それから数年たった時には、皆それなりに成長していた。
10歳の年齢に達した子は冒険者登録をして冒険者としての活動にも従事した。
中には戦闘に向かない子もいて、そういう子は勉学を一生懸命おこなったり、執事業務やメイド業務をする者も居た。とは言え、戦闘訓練を全くしない訳じゃないのでそれなりに腕はあがっているけれども。
そして、私達の同期の中からも16歳の年齢を迎える子が少しづつ出てくる。
冒険者・メイド・執事・商人等、好きなモノを選んで良いと言われる。
もちろん、冒険者になって欲しいとシャーロットさんは思っていたハズだ。
しかし、適正が高い事で生きていく方が良い事も理解されていた様だった。
そして私とペニーとロマニーの三人は冒険者になる事を選んだ。
「そうかい。アンタ達は冒険者になるのかい。期待しているよ。」
「「「はい!」」」
「ここを出たら、私の事はミス.ドロンジョと呼ぶんだよ。良いね。」
「「「わかりました!!」」」
私達三人は親の顔を知らない。
誕生日なんて分からない。
だから唯一三人の中で誕生日が分かっていたペニーと同じ日を誕生日とした。
ペニーはずっとあるペンダントを持っている。
日頃は服の中に有ってみる事は出来ないが、その中にペニーという名前と誕生日が書かれている。私とロマニーはペニーから名前を貰った様なモノだ。
『私はペニー。貴女達の名前は?』
『名前なんか無い。』
『うそ?じゃあ、私がつけて上げるね。』
そう言って出会った時につけてくれた名前。
私は、ウジェニー。そしてもう一人がロマニー。
意味なんて無いと思う。只の思い付きだろう。
だけど、それは私にとって嬉しい出来事だった。
「住む所は見つけているのかい?」
「「「はい!」」」
「良いだろう。これは成人祝い金だよ。」
「「「ありがとうございます!」」」
「何かあればここに来てフレイズに頼りな。」
「「「ありがとうございます。」」」
こうして私達は一人金貨一枚という破格の祝い金を貰ってシャーロットさんの、いや、ミス.ドロンジョさんの屋敷を出たのだった。




