345 ザバルティさんに呼ばれました。
その日、僕はザバルティさんに呼ばれた。しかも、プレストンさんも一緒だ。
「おい。何で俺も呼ばれるんだ?」
「さぁ?何でですかね?」
それほど、ビビらなくても良いのにな。と思うんだけど、どうしてもトラウマに近い感情を持ってしまっているのは事実の様で、先日の闘いの後での遭遇も嫌だったみたい。
「お待たせしました。もう直ぐ、ここに来られます。」
ミーリアさんが部屋に入って来てそう告げた瞬間に勢いよく起立するプレストンさんを見ると少し笑いそうになる。
「今日は呼び出して悪かったね。どうしても君達に会いたいと言う人が居てね。入って貰って良いかな?」
ザバルティさんが来て軽く挨拶を交わした後に、そう言った。
「はい。プレストンさんも良いよね?」
「ああ。」
「ありがとう。では入ってくれ。」
ザバルティさんに催促され、入ってきた人物を見て、僕は大いに驚いた。
「なぜ?どうして?ここに居るんだ?お前が。」
「本当ですよ。パークリーさん。」
そう、パークリーさんが僕達に会いたいと言っていた人だった。
「話せば長いんだが、少なくとも死にかけた所をザバルティさんに助けてもらったんだ。」
苦笑いをしながら、パークリーさんは僕達にそう説明をした。
どうやら、色々と調べている内に、盗賊ギルド内に今回の事件に関わっている者が居るという疑いを持ったらしい。盗賊ギルド内での事件の情報が何者かによって弄られている様子があったとか。そして自身で別ルートを使い調べている内に色々と分かった。そして最後の調べに入った所で暗殺者に襲われた。その時に死にかけたのを、助けてもらったという事の様だ。
「でも、この街の盗賊ギルド長はパークリーさんでしたよね?」
「そうだ。なのに俺が知らない間に情報を弄られていた。」
「それ、一大事なんじゃ?」
「そうだ。で俺はこの事を一部にしか報告を上げてない。で確信したんだ。」
「首謀者が分かったんですか?」
「ああ。おそらく君達もあっているハズだし、想像できるんじゃないかな?」
「もしかして、大陸長ノーアさん?」
「そうだ。」
「でも、ノーアさんはパークリーさんの師匠なんじゃ?」
「ああ。だからこそあの人の恐ろしさは良く知っている。信頼していたが、襲われたタイミングを考えると、あの人しか居ない。」
「でも、そうだとして何で?」
「あの人は、例え師弟であっても、自分の都合によって切り捨てる。まぁ盗賊ギルドなんて所はそういうのが出来ないと、厳しい世界だからな。まぁ、された方の俺は、もうギルドに戻るつもりは無いがな。」
パークリーさんは笑い飛ばしているけど、目が笑ってなかった。
悲しそうな目をしていた。
「とにかく、首謀者でなくとも、その近くに居る人物の一人がノーアだっつう事だな。」
「ああ。そうだ。そして今回お前らがあったトウジはそのノーアに使われている一人で【昆虫支配】を利用して俺を殺そうとした人物だ。」
「えっ?トウジさんが?本当ですか?」
「あぁ、間違いない。そしてミツムという男が【魔獣支配】。そしてもう一人転移者でありアイツらの仲間が居る。マコトという男だ。こいつが【死霊支配】のスキルを持っている。」
「あっ!まさか、この街で死体が無くなるのは。」
「ああ、その予想で間違いない。私の推測とも合う。」
「ザバルティさん?」
それまで無言で様子を見ていたザバルティさんが口を挟んだ。
「煉。煉にはそのマコトを追って欲しいんだ。そのマコトを抑える事で、このエグゼイドの街の事件は解決するハズだ。」
今までに無く、ハッキリとそう断言したザバルティさん。
「頼めるかな?」
その真剣な眼差しは僕の心を熱くする。
「僕はもちろん構いません。プレストンさんはどう?」
「俺は元々、この街の問題を解決するようにミス.ドロンジョから言われている。」
ぶっきら棒に答えるプレストンさん。
「ありがとうございます。という訳なんで、任せてください。」
「よろしく頼む。」
「はい。任せてください。」
僕はプレストンさんと快く受けた。
そしてプレストンさんはパークリーさんに顔を向ける。
「なぁ、パークリー。お前、俺らのパーティーに入らないか?盗賊ギルド辞めるんだろ?」
「良いのか?俺が居ると面倒な事が起こるかもしれないぞ?」
「ああ。ノーアさんの事ですね?元々信用してませんでしたし、僕等に嘘ついてましたからね。」
「煉の言う通りだ。どうせ俺は冒険者ギルドのはみ出し者だ。盗賊ギルドのはみ出し者が一人増えた所で変わんねぇよ。」
「それだけは、お前に言われたくなかった。お前だけには・・・。」
ガックリという感じのパークリーさん。
「はぁ?それはどういう意味だ?あぁん!」
キレるプレストンさん。
「「「あははははは。」」」
笑うその他大勢。
「なっ!何故そこで笑うんだ?笑う所じゃないだろう?おい!煉!」
一人憤慨するプレストンさん見てパークリーさんも笑う。
「だってねぇ?」
僕も笑いながら答えるから、一言だけで精一杯。
ここでようやく、パークリーさんの笑顔が本当の笑顔になった気がする。
だって、目が笑っていたからね。




