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341 生かされた私達の選択。 その2


トントン。


ノックをする音が聞えた。


「はい。」


「コーネスです。食事をお持ちしました。」


「今、開けます。」


そう言って私はドアを開けた。


「失礼します。」


そう言ってコーネスさんは入ってきた。

今、私達の面倒を見てくれている人でハイエルフの人だ。エルフ族の特徴でもある透明感のある美しさを持った美人さんだ。というか、この屋敷にいる女性は全員美人だ。


「今日は、『うどん』という食べ物です。」


「いつもありがとうございます。」


持ってきてくれた『うどん』という食べ物は麺類の様なのだけど、スープの中に入れられている。長ネギが入っているのは分かるんだけど、この茶色の物はなんだろう?それにこの渦巻く模様の平べったいのも初めて見るし、麺自体も太い。


「初めて見ますよね?私も最近知ったばかりの食べ物なんですけど、ザバルティ様曰く、消化が良い物のようです。美味しいので召し上がってください。」


「はい。」


「で、インディラさんの体調は如何ですか?」


「だいぶ良くなりました。」


「そうですか。それは良かったです。ではそろそろお風呂に入って綺麗になりましょうか?」


「えっ?良いんですか?私達は捕虜なんじゃ?」


「ふふふ。気になさらずとも大丈夫ですよ。屋敷の外に出ようとされない限りは自由にさせて良いとザバルティ様はおっしゃっておられました。後でお風呂へご案内しますね?」


「「はい!」」


「ちょっと、被んないでよ?」


「それはインディラでしょ?」


私達は他愛もない言い合いをしてコーネスさんに笑われてしまった。


「ふふふ。元気になられたようですね?」


「「あははは。」」


私とインディラはお互いに顔を見合わせて苦笑いだ。恥ずかしい。


「あのコーネスさん、私はザバルティ様にはお会いできますか?」


「えっ?」


「いや、この(タマル)が、純白の翼が舞っていた。なんて言うので、気になって。」


「ちょっと!インディラ!!」


「いいじゃない。私の話をしてみたいんだもの。タマルだって、落ち着いた今こそ話をゆっくりしたいでしょ?」


「もう!」


「ふふふ。わかりました。ザバルティ様に伺っておきましょう。ですが、基本的にはこの屋敷には夜しか戻っておいでではありません。早くても今日の夜になると思いますが良いですか?」


「「もちろんです!!あっ!!」」


また二人被ってしまった。インディラも顔を赤くしている。私も頬が熱くなるのを感じた。


「ふふふ。とても仲がいいんですね。」


「「あははは。」」


私達は申し合わせたかのように、苦笑いをして顔を伏せた。


「では、ごゆっくり食事を楽しんでくださいね。後程、案内をしに戻ってまいりますね?」


「はい。」


こうして私達は部屋に残されて、食事を済ませた。

食事が終わったら少しして、コーネスさんが戻ってきてショートケーキという食べ物を用意してお茶を入れてくれた。


「「美味しすぎる!!」」


ここでも私達はハモってしまうという恥ずかしさを味わった。

そしてその後、コーネスさんに屋敷の中を案内してもらった。

色々と設備にも驚いたのは間違いないのだけど、それよりもここがアスワン王国の王とテーストである事が一番の驚きだった。


「タマルは意識あったんでしょ?何で知らないわけ?」


「いや、だって私はあの時、インディラの事しか見てなくて他の事なんて目に入っても無かったんだから仕方がないでしょ?」


何て言いあう一幕もあった。

どうやら、ザバルティ様は転移魔法が使えるらしい。

それで、あの戦闘していたエグゼイドの街の時計塔の前から一瞬で今私達が使わさせてもらっている部屋に来たらしいのだから、私が認識できるハズも無かったんだけどね。


「こ、これが風呂?」


「デカい?!」


今はコーネスさんに連れられて大浴場というお風呂場に来ている。

あまりの大きさにビックリした。

この規模のお風呂って世界を見渡してもそうそう無いと思う。

少なくとも一貴族が持てるお風呂の規模では無いと思う。王族だってこんな風呂を持っているとは思えない。温泉宿レベルを超えている。


「まぁ、必要に駆られてって言うのが大きな理由なんですよ。何せ、ザバルティ様から『仲間』と呼ばれるザバルティ様に仕えている者の大半がここで生活をしていますから。」


「えっ?このお風呂に皆が入れるんですか?」


「ええ。ザバルティ様は上下関係なく利用するようにとおっしゃってます。」


あり得ない。

貴族様と平民という垣根だけでなく、人種の垣根も超えるなんて。


「でも、私達はお仕えしている身ですので、分を弁える様に務めておりますよ。」


そうだった。

確かに、様付けだし、敬語を使っていたハズ。

だからとはいえ、凄い環境であるのは間違いない。


「ふふふ。不思議ですよね?私もそう思いますけれども、ザバルティ様がどうしても譲らない所なんですよ。ですから、私達が主として使える態度を私どもは譲っていないというだけなんです。本来はタメ語で話して欲しいと思われているかも知れませんね。」


そうコーネスさんは言っていた。

そして付け加える様にもう一つ。


「結局、どの様な環境でも状況でも、モラルやマナーがによって健全な関係は保たれると私は思いますよ。だからこそ、ここでは人種や上下での差別なんてありませんよ。」


その言葉は私の心に、深く、深く突き刺さった。


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