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338 観戦する者あり。


「ザバルティ様。煉が動きそうですよ。」


私の前で珍しくワクワクしているミーリアを見たな。という感想と共に、私は煉を見た。

そう、私達は今、上段に構えた煉を遠くから見ている状況だ。

今の私達の周りには結界を張っており、彼らには存在すら分からない様に存在感も小さくしている。今の私達は彼らからすると、虫レベルに感じているのではないだろうか?

つまり、意識の外に置いているハズだ。

下手にゼロにすると、手練れには異質感を与えてしまう。何もないのは変だからだ。

なので、虫レベルに小さくする。人間はこの世界においても虫に対して迄、意識を持たない様に無意識に感知させない様にする。全てを感知していると脳がその情報でパンクしてしまうからだ。まぁ、確りとそこだけに意識すれば感知出来ない訳じゃないので、絶対にバレない訳じゃない。しかし、他の事に集中している段階では難しいだろう。並列思考があっても中々に厳しいものである事は私が身をもってわかっている。


「それにしても、煉も少しの間で見違える様に強くなってますね。」


「そのようだね。」


実際に感じるのは間違いなく強くなったであろう煉の姿だ。

見た目に変化は無い。けど、どこか洗礼された動きに見える。今上段に構えている姿を見てもそう思う。訓練を欠かしていなかった様だ。

はたして、スマイル・ペウロニーの三人とどっちが強くなってるかな?


「それに、前回見た時のプレストン殿よりも今回の方が断然強く見えますね。」


煉だけではなく、プレストンという男も強くなっているのがわかった。

今、相対すれば、今の彼なら少しは私と闘えるんじゃないだろうか?


「でも一体何故なんでしょう?」


そう短期間でこうもレベルアップするのは不思議な事だ。

でもその不思議は人間である限りありえない事では無いと私は知っている。


子供とは急成長する時がある。

その時、どんな事が起こっているのか私が推測した結果で得た結論がある。

人は、精神面での成長が肉体の成長とかみ合った時に急激な成長を見せる。

正確には成長ではなく、覚醒と呼べるのかもしれない。

真に目覚めた能力の開花。素質が表に出てくる瞬間なのかもしれない。

理由は色々とあるが、そういう時がある。彼らにはここまでの短い間にそういう事があったのだろう。

少なくとも、彼らは精神面での成長か安定が出来たハズだ。


「良いパートナーに出会えたのだな。」


「そのようですね。」


私の呟きに、ミーリアが頷き返してきた。

今の煉は集中している。一刀を決めようと考えているのだろう。


「もう少し、見ているか。」


「はい。成長を見守りましょう。」


たぶん、今回の上位者のとの戦いで勝手も負けても何か得るだろうと思う。いざとなれば助けに入れば良い。その時にナベリウスが来たとしても、負けるつもりは無い。


「気が膨れ上がりましたね?」


シーリスの言う通り、プレストンから闘気が膨れ上がった。

仕掛けるつもりだろう。


プレストンの連続攻撃のスピードが上がった。少しづつ上げていたスピードが一段と早くなる。徐々に三人が一か所に追いやられる感じになっている。特にタマルと名乗った女性は苦労している様子が伺える。彼女は他の二人より何段階か能力が低いのだろう。

その気になれば飛べるであろう彼女達を飛ばさない様に上手くプレストンが誘導している。


「だが、少し様子が変じゃないかな?」


そうちょっとした違和感を感じている。

確かにタマルと言う名の女性はあの三人の中でも弱いだろう。

しかし、他の二人がカバー出来ないレベルの攻撃ではない気がする。

特に、ギャネックという女性にとってはもう少しカバーする事が出来るのではないかと思ってしまうのだ。しかし、一切ギャネックはカバーしようとはしないのだ。

そのくせ、ギャネックはインディラのカバーをしている時があるのだ。

ただ、そのカバーも能力不足からくるような中途半端なカバーだ。


「やっぱりオカシイな。」


「煉達は気づいているんでしょうか?」


「どうかな?」


誘っているのか?

少なくとも何かを企んでいる様子があるな。


「どういたしましょう?やはり介入いたしますか?」


「いや。今は見守ろう。」


経験は大事だ。

こういう経験が活きてくる時が必ずくる。

激しい戦いをしている時にも冷静に観察し違和感を感じ取り、それに対処する。

今、彼らはその経験を積んでいる時だ。

知能が低いとされる魔物との戦闘では得る事が出来ない経験だ。


対人戦の時に面倒なのはこういう企みをだ。

単純な戦闘では無い、色々と知恵を使う戦いがある。

対人戦の経験は今後必要になるだろう。

これだけ、大陸が、世界が躍動を始めたのだから。


この世界は魔物という人類の最大の敵がいる。

しかし、それは一つの資源でもある。

魔物からとれるモノは資源として人々に消化される。

また魔物は脅威の一つであるが、一番の脅威は同じ人類だ。

この世界でも人類が一番繁栄している。

何故か?

知識と知恵というモノを活用し、力だけではないモノを手に入れているからだ。

そしてその知識と知恵は欲望を持っている。

その欲望によって人々は争う。

その欲望によって繁栄する。


人は知識と知恵を手に入れたと同時に欲望も手に入れてしまった生き物なのだから。


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