表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
336/367

336 泣かされた僕。笑わされた僕。


僕は、ナベリウスという名前を聞いて決めた事があった。

プレストンさんを置いて行くという事だ。

だからこそ、僕はあの場で取り乱す事をしなくて済んだと言える。


「これ美味いな。」


「本当に美味しいですね。」


予定通りに豚料理が美味しいレストランに入って食べている。

本当に美味しい。豚を煮込んだ料理やステーキ。そしてライスに混ぜてあるモノまであった。

豚のフルコースとでも言うのか、豚に拘った料理の数々が出された。

後はどの様にプレストンさんを置いて出るかだ。それを考えていた。


「おい、煉。」


「はい。」


「一人で行こうとするなよ?」


「えっ?」


ビックリした。

僕の心が読まれている?そう思ってしまい、心臓が止まるかと思った。


「やっぱりな。お前の考えそうな事だな。だが、俺はついて行くぜ。」


「・・・。」


僕は言葉が見つからなかった。


「お前は分かり易い。凄腕の冒険者でもやはり経験が少ないからか、顔に書いてあるぜ。」


「・・・そんな事。」


「無いってか?俺はな、お前とはミス.ドロンジョに強制的に組まされたが、もう仲間だと思っているんだ。大切な仲間だと思っている。」


少し顔を赤らめて言うプレストンさん。恥ずかしいのだろうか?

オッサンの恥ずかしい顔っていうのはあまり見たいもんじゃないなぁ~。

と誤魔化してみるけど、僕の眼がしらが熱くなるのを止める事は出来なかった。


「俺達は相棒だろ?」


それが止めを刺した。

涙が溢れ出した目頭を隠す様に手を置く事しか出来なくなっていた。

何も話せず、ただ泣いた。

その姿を目撃した人達は奇異な目を僕達に向けていた事だろう。

幸いな事に僕にはそれを気にしたり見たりする事は無かったけど。


思いっ切り泣いた後に、食事を食べ終わって僕達は約束の場所へと向かう事になった。


「少し早いが向かおうか。女性を待たしちゃ不味いだろうからな。」


「そうですね。でも本当に良いんですか?」


「当り前だ。相棒と一緒に向かう危険地帯。お前と一緒なら乗り越えれるさ。」


と言ってがははは。と笑うプレストンさんの肩が少し震えているのがわかるし、ブリューアクサーが伝えてくる言葉はプラスの言葉じゃない。


『こいつ、カッコつけてるね。まぁ気持ちは真実なんだろうけどね。怖いのも事実みたいだね。』


でも、こういう時にプレストンさんみたいな男は引けないだろうなって思う。

男は時にはプライドで無茶をする生き物だって何かに書いてあった気がするし、そもそも怖いのは僕も一緒だ。あの女性、インディラは上位者である事に加えて空を自由に飛べるという事も分かっている。飛ばれてしまったら捕まえるのは難しい。


「よっし!気合い入れていこうや!」


「はい!」


ヤレヤレという顔になるのは精霊三名。


『まぁ、煉の体は確りと儂が守るから安心せい!』


『私もどんな敵であろうと、切り裂いてみせます!』


とヒミコさんと桜花さんが心強い事を言ってくれる。

とても心強い。ちなみにブリューアクサーも色々と聞こえない相手であるプレストンに言っているが、任せろって言うより、貶してる?感じがするのは気のせいだと思いたい。

だって、所々で「この馬鹿」とか「私の方が強い」とか「間抜け」とか言ってるから、全てを晒しずらい。はははは。でもそのおかげなのか僕の緊張はほぐれるのだけど。


気合いを入れてから移動を開始したのだけど、着く間のプレストンさんは無言だった。

僕も同じく無言。色々と考えていた。こういう時は戦い方を考えるモノだと思っていたんだけど、実際そうなってみると、戦いの事よりも家族の事や他の些細な事を考えていた。

もちろん、その中でも僕の場合はアリアさんとの事ばかりを思い出していた。

あの時はこうだった。とかこの時はこうしたとか。イチャイチャしていた期間は甘い記憶として僕の中にある様だ。という発見もした。そう、僕はブリューアクサーのおかげで、頭はスッキリと冴えわたっていたんだ。色々と思い出してもそれを分析するぐらいの余裕があったんだ。それはそれでビックリだけどね。


「ここだな。」


僕が無言で居なずくと、プラストンさんがおもむろに上を見上げた。

そこには大きな時計塔の時計の部分が月光に照らされて針が輝いていた。

この世界には魔法の光はあるが、電飾関係は無い。

ここの時計塔では針が暗闇の中で輝く様になっているみたいだ。

四方から見れる様に同じモノが四方についている特徴がある。

まだ、約束の時間よりも30分位は前の様だ。


「ふぅ。」


緊張感を思いっ切り高めているプレストンさんを見ていると僕迄緊張しそうなのだが、その横にいるブリューアクサーが、あまりにもひどい事をプレストンさんに対して言っているので、その緊張感が台無しになってしまうが、僕にとってはありがたい。


『くそ木偶の坊!そんなに緊張してんじゃねぇ!不細工で弱っちい癖に強がって来たのはお前だろうが!腹括れや!!』


どこかのカチコミに入る某団体の人が言うセリフが聞えてくる。不細工は関係ないと思う。と感じた瞬間に少し吹き出してしまった。


「ぷっ。」


「なんだ?煉はヤケに余裕そうだな?」


「あっ?イヤ、なんか、すいません。」


「いや頼もしいと思うから謝らなくて良い。」


そう言って真剣な顔のプレストンさんを見るとどうしても笑いがこみ上げてくる。

その隣でブリューアクサーがまた悪態をつくから。うん。内容は控えよう。

そんな事を考えている時だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ