335 脳筋になるんじゃないよ?!
僕とプレストンさんは毎日訓練を兼ねて街の近くの森に入る。
その前後の時間で飲食や情報集めを行っている。
情報屋に依頼した情報は紙面で盗賊ギルドからもらったが、満足いく内容では無かった。
ミス.ドロンジョさんに見てもらったが改竄の跡が見受けられると指摘していて、冒険者ギルドとして金銭の返還要求をしてくれる事になっている。
それに、欲しいと思っていた解決情報は何一つなかったの大きいし、パークリーとも会えずじまいである事も納得できない部分だ。
で先日、その盗賊ギルド大陸長のノーアさんに言われて会ったトウジさんがアリアさんのに近づく事が出来る情報を持っていると思えたけど、途中で終了してしまい情報を得るには至らなかった。
「焦るな。焦ったらしくじるぜ。」
プレストンさんに慰められて今は通常の日常を送っている。
僕自身も自分の力を上げる為に夜、桜花さんとの精神世界での訓練をして能力向上に努めるという事で自分を保っているというかんじだろうか?
「今日もそこそこだったな。」
「そうですね。」
「何がそこそこじゃ。呆れてモノも言えんわ。」
素材買取のカウンターでは収まらないので、いつも奥にある倉庫に着て提出する。
今は訓練を兼ねているのでどうしても個体で強いか、群れに挑むかしてしまうので、小さくなる事はない。
今日は群れに対する殲滅戦を仕掛けたので、数が多い。オークという種で通常のオーク達ではなく、ジェネラル率いる武闘派との戦闘だった。キングは居なかったようだが、正直居ないとは言えないのではないだろうか?で、そのオークの死体が30体程になるから呆れられるんだろうと思う。
「煉。プレストンに感化されて脳筋にだけはなるんじゃないよ?」
「はははは。」
「オイオイ。ミス.ドロンジョ、それは無いだろう?俺は脳筋じゃねぇ!」
「脳筋な奴ほど、そう言うんじゃ。」
「けっ!」
結局、口ではプレストンさんに勝機は無い。負けるだけだ。
こうして毎日欠かさず素材提供をおこなっているので、ギルドに対する貢献度は上がる一方で、早く昇格試験を受けろと言われているが、今はギルドランクよりアリアさん救出が大切なので、構っていられない。というのが僕の考え方だし、プレストンさんもミス.ドロンジョさんもそれは理解してくれている様で、二人はそれについては何も言わない。
「さて、今日も一杯やるかぁ?」
「いえ、僕は一度ザバルティさんの所へ行こうかと思ってます。」
「それは、やめときな。」
直ぐに、ミス.ドロンジョさんに反対された。
「アンタも、今は目立ってきている。迂闊に関係がばれる様な行為はしない方が懸命だよ。」
「わかりました。」
プレストンさん同様に僕も怒られた気分になる。
「つう事は今日も飲む事で決定だな。」
「痛いですよ。でもそうですね。美味しい料理を食べに行きましょう。」
バンバンと肩を叩いてくるプレストンさんに同意したが、酒を飲む気はなかった。
やっぱ酒はヤバいっす。
「まぁ良いか。じゃあ上手い飯を食べに行くか?」
「はい。」
「換金は明日で良いんだね?」
「はい。」
「おお。」
やれやれという顔になったミス.ドロンジョさんを置いて僕達はギルドを後にした。
なんやかんやと話をしてこの街で美味しい飯を出してくれる【ゲッタウェイ】というレストランに向かう。
「あそこはな、豚料理が美味いんだ。色々と工夫されててな。調味料も確りと使っている様だしな。ただ高いのは仕方がないだろうがな。」
「こんな鎧姿で大丈夫なんですか?」
「ああ。それなら大丈夫だ。着替える場所が設置されているしな。それに水も浴びれる。」
そういう話を聞くと、ザバルティさんの屋敷が恋しくなる。
美味しい料理にシャワーやお風呂があったからだ。う~ん。
「すいません。貴方が今この街で噂の冒険者達ですか?」
不意に声を掛けられたので、そちらを見る。
そこには同い年位の女性が立っていた。
「おめぇは?」
『注意せよ。その者は普通ではないぞ。』
警戒した感じの声で聴くプレストンさんに注意をくれるヒミコさん。
何故か?それはその者から発せられる空気が、普通の人のモノではないからだ。
「ふふふ。そんなに警戒されなくても大丈夫ですよ?」
「有名かどうかはわからんが、勘違いじゃないか?今有名な冒険者は少なくともパーティーのはずだが?俺達はペアだ。」
安易に名前を言わずにいる。今この街は【ザバるん応援団】フィーバー中だ。そんな中で僕達の事は霞んでいるハズで、目立つと言ってもギルドでの話だ。
「ふふふ。間違いではないと思うんですが?プレストンさんと煉さんのお二方ですよね?」
「で、そうだとしたら?」
僕はプレストンさんの返事を聞きながら、右手を桜花に添える。
プレストンさんも聞き手を魔槍ブリューアクサ―を触っている。
「ついて来て頂きたいのですが?」
「行く必要があるかな?嬢ちゃん?」
返事を返したプレストンさんを見るではなく辺りを見渡すその女性は少し悲しそうな顔になる。
「ちっ!そういう事か。ねぇちゃん。デートは嬉しいがこちとら腹が減っている。時間指定でそっちに向かうっていうのはダメなのかい?」
「・・・。」
少し考えている様子に見える。
「わかりました。良いでしょう。ぶしつけなお願いはレディーとして失礼でしたね。三時間後、お二人揃って大時計の前に来てください。」
「わかった。ジオウ大時計に三時間後だな?」
「ええ。お待ちしています。もし来られなかったら・・・。」
「ああ。皆迄言うな、わかっている。で、ねぇちゃんの名前は?」
「失礼しました。私はインディラ。ナベリウス様に仕える第12階です。ではお待ちしております。」
インディラと名乗った女性は消えた。
正確には上空に飛んだというのが正しいのだろうけど、目で追う事は出来なかった。
「やばいな。」
「いえ。僕としては手掛かりの一つです。」
「それもそうか。まぁ考えても仕方がない。飯を食いに行こう。どうせ行動は見張られているだろうからな。」
「そうですね。それに本当にお腹が空きました。」
「がははは。お前も相当だな。」
と言ってプレストンさんは僕の方を叩いてきた。
本当に痛いんだけどな。これもコミュニケーションだと思って我慢しているだけで。とほほ。




