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332 初めての・・・。


結局その日はもうトウジさんに会う事は出来なかった。

そして、ナベリウスの居場所も教えてもらう事は出来なかった。

僕は肩を落として帰る事しか出来なかったんだ。

二人の精霊は僕にかける言葉を探している様子はあったが、黙って一緒に居てくれている。


僕の頭の中は混乱の極みにあった。

どうすれば良いのかわからなくなっている。


「おい。どうだったって、その顔の様子じゃ。何かあったのか?」


声のした方へ顔をあげるとそこにはプレストンさんが居た。

あれ?ここは冒険者ギルド?


「まったく。ボーっと歩いて来たかと思えば、焦燥感漂う顔で俯きやがって。」


「す、すいません。」


「で?何が待っていたんだ?」


僕は全てをプレストンさんに話した。

主語述語・時間の経緯何かもバラバラで感情も入り混じった話の内容になっていたと思う。

それでも、何も言わず聞いてくれていた。全てを言い終わるとプレストンさんはコップに残っていたエール一気に飲み干してドン!とコップをテーブルに置いた。


「そうか。よし!飲もう!!」


「えっ?!」


「こういう時はな、頭をリセットしなきゃいい案なんて浮かばねぇ。ほら飲むぞ!!」


そう言って笑うと僕の分のエールも注文してしまった。


「今日は朝まで付き合ってやるよ!」


「いや、それ単純にプレストンさんが飲みたいだけじゃ?」


「そうとも言うな。まぁ、そう言わず付き合え。」


僕はその押しに負けて人生初のアルコールを口にする事になった。

そして、公約通り朝まで飲んだらしい。僕は途中からの記憶がない。あははは。



◇◇◇◆◇◇◇




『どうしてあげたら良いのでしょうか?』


『難しいのぉ~。今の我らでは実体のない精霊であるからのぉ~。』


『そうですよね。』


『我らの役目は精霊として力を貸すのみじゃ。』


『そうなんですけど。』


悔しいそうな顔になる桜花を見て、同じく苦々しい顔になるヒミコ。

二人は傍で酔っ払って眠る煉を見て、辛そうな顔になった。


『どうにかしてあげたい。』


『そうじゃな。どうにかしてやりたいのぉ~。』


切に願う二人に月は優しい光を注ぐだけ・・・では無かった様だ。


『ふふふ。私の出番ですわね?』


『お前は?!』


『かぐや姫様?!』


そう何と、月の姫でもあり月の精霊であるかぐや姫が現れたのである。


『まったく。ヒミコちゃんは精霊神になっているのに、解決策がないとは・・・やはり脳筋?』


『なっ?』


『解決策があるんですか?』


脳筋という言葉に反応してしまうヒミコとは違い、桜花はその前にカグヤが発した言葉に反応した。


『勿論です。』


やはり、脳筋の話ではなく解決策の事で胸を張って答えるカグヤ。


『では一体どんな方法があるんですか?』


『簡単な方法は、依り代を人に替えるというのがありますね。』


『それは分かっておるのじゃ。それが出来れば、こんなに難しく考える必要は無いから困っておるのじゃ!!』


『はいはい。で、もう一つは魔力によって造られたゴーレムに依り代にするというモノです。』


『そんな簡単にゴーレムがあるわけ・・・ある。あるのじゃ!』


『ようやく思い出しましたか?』


カグヤはニコリと笑ってヒミコを見る。


『思い出したとも。そうじゃ、あれを使えば出来る!』


苦々しい顔をしていたハズのヒミコは今はすっかり笑顔になっている。


『ですが、そんなゴーレムがそう簡単にある訳はないのでは?』


『確かにそうですね。ですが私はその在り処を知っています。』


『なんと。そうなか?では我らに教えるのじゃ!』


さっき迄流暢に話していたカグヤはもったいぶる様に口をピタッと閉じてしまう。


『ぬぅ。交換条件か?』


『ふふふ。わかりましたか?』


『勿論じゃ。長い付き合いじゃからな。』


そう言って忌々しい顔になるヒミコ。

二人のやり取りが分からず、ただ黙って事の推移を見守る桜花。

しばしの沈黙が流れる。


『よかろう。カグヤの思惑に乗ってしまうのは気に入らんが、全ては煉の為じゃ。』


『ふふふ。交渉成立ですね?』


『ああ。しかし、優先されるべきは桜花に儂じゃ。それはかまわんの?』


『ええ。勿論です。』


『では、交渉成立じゃ。』


ヒミコとカグヤの間でのみ理解されている話に桜花はついて行く事は出来ない。


『ヒミコ様。本当に大丈夫なのですか?』


カグヤが去った後に桜花はヒミコに質問をする。


『問題は無い!とは言えない部分があるが、カグヤも精霊神の一柱じゃし、煉に寵愛を与えてもいる。無茶はすまいよ。ただし、我らにとっては手強い恋敵が加わってしまうがの。』


『なっ?!』


煉は精霊界の旅で、気がつくと寵愛を三つ獲得していた。その内の一つがここに居るヒミコであり、もう一つがカグヤである。


『ぬぅ。益々事が大きくなる気がするのぉ~。』


『なぜです?』


『もう一つの寵愛を授けた【須佐之男命】がより気になるのじゃ。ここまで姿も影すらも見せておらぬ。寵愛を授けた者の動きは分かっているハズなのじゃがな。』


眉間に皺をよせ深く溜息を吐く。


『まぁ、何にせよ。準備が必要じゃ。桜花は精神世界に煉を引っ張り出し、訓練をする必要があろうな。桜花が持つ刀技の全てを叩き込め。』


『わかりました。』


ヒミコは眉間の皺を解くことなく、そのまま深く考える様な様子になった。

そして桜花は、ヒミコに言われた事を一人思い出し、恋敵に負けない様に誓うのであった。


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