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330 一つのチートスキル。


バリーン!

男が持っていた瓶を投げつけ割れる音が部屋中に響き渡る。


「くそっ!」


男は苦々しい顔になって悪態をついていた。


「まぁまぁ。そんな事もありますよ?」


紳士然とした別の男が荒れている男に慰めの声をかける。


「うっさい!」


「ふふふ。落ち込んではいらっしゃらないのは良い事です。次の手を考えましょう。」


「何でお前はそんなに余裕なんだ?アイツを取り逃がしてしまったんだぞ?」


険しい顔で荒れている男は紳士然とした男に疑問を投げかける。


「そのことですか?まぁ、失敗は付き物です。次の策を講じれば良いだけですよ。」


「何?まだ手はあるのか?」


「勿論です。つきましては、トウジ様のお力をお借りしたいのですが?如何でしょうか?」


「だが、ナベリウス様にお聞きしなければ。」


荒れ狂っていたトウジは紳士然とした男に優しく諭され徐々に落ち着きを取り戻していた。

あくまでも顔は笑顔でどんな状態にも落ち着いて話す紳士然とした男は更に付け足した。


「なぁに、お任せくださいますとも。上手くいけば問題ないでしょう。想定外は起こり得るものですから。」


「そうか。ではノーアさんの意見に沿って動こう。」


「ありがとうございます。そう言って頂けると大変助かります。」


落ち着いた声の調子のままノーアは笑顔を絶やさない。


「では、トウジ様に会って頂きたい者が居りますので、お時間を頂けますか?」


「わかった。」


「では、少しの時間お待ち頂かなければなりませんので、私からのささやかな贈り物でお時間を御潰し下さい。」


パンパンとノーアが手を叩くと、扉が開く。

その扉から、薄着の綺麗な女性が5人ほど出てくる。


「えっ?ノーアさん?」


「どうしたのです。トウジ様は英雄の一人です。英雄の方には美女が必要でしょう?」


トウジは英雄という言葉に反応した。


「僕が英雄?」


「そうです。貴方様のお力は英雄の力です。」


「ただの虫使いだ!」


「確かに、虫使い様でございます。しかし只の虫使い様ではございません。この世界で一番数が多い生命体は蟲で御座います。その世界全ての蟲を好きなように扱う事が出来る方が英雄でなくて何なのです?」


ノーアの英雄という言葉。甘い囁きにトウジの頭は徐々に麻痺していく。

確かにノーアの言う事は一理ある。ただの虫使いでは契約を交わした虫しか利用できない。しかし、トウジのスキル【昆虫支配】は全ての虫に命令し行動させる事が出来る。その数に限りは無い。チートスキルである。更にこのスキルは虫達の特徴も知る事が出来る上に改良も出来てしまうのだ。改良とは虫と虫を掛け合わす事で新種の虫にする。魔法の力で成長を早める等がある。


「そうか。僕は英雄なんだ。」


「そうですとも。」


ノーアの言葉は甘い。言葉はトウジの頭に入ってくる。

がトウジの目は薄着の綺麗な女性達に釘付けになっている。

だめ押しの様にその綺麗な女性達が我先にとトウジの周りに集まってくる。


「トウジ様。御情けを下さいませ。」

「英雄様。御手付けを。」

「トウジ様にお仕えしたいのです。」

「英雄様の御傍に。」

「トウジ様にこの体を捧げます。」


次々にトウジが喜びそうな言葉を言いながら寄ってくる綺麗な女性にもみくちゃにされるトウジ。既に先ほどまで話していた事や、ノーアの存在を忘れていく。


「良いぞ。お前らは僕のモノだ!」


「逞しい英雄様。」


女の一人が直ぐトウジの前でかがみ込み、トウジの体を裸にしてしまうと自ら口で咥える。

また別の女はトウジによって服の隙間から手を突っ込まれ揉みしだかれる。

別の女はトウジの片足にのりトウジの顔を塞ぐ。絡み合う男一人に女五人はそのまま、淫靡な音を部屋中に響き渡らせるのであった。

その様を一人ノーアは見て歪んだ笑顔になる。


「ふふふ。ではごゆっくりと。」


ノーアは一人つぶやき、部屋から出た。


「確りと見張っておけ。奴はまだ使える。同じ様なミスは許されない事は分かっているな?」


「はっ!」


いつから居たのか、部屋の外に数名の男が立っていた。

ノーアの言葉にビくっとなりながら返事をする。


「ここの管理はこのまま、ソブリンに任せる。随時報告を寄越せ。アイツを衰弱させる事も許さんぞ。」


「はっ!」


厳しい顔になったノーアは厳しい言葉を並べたてソブリンと呼ばれた男は返事を返すのみ。

ノーアはそのままそこから離れていき屋敷を出た様だ。

ノーアの存在感が薄れていくと同時にようやくソブリンは顔を上げた。


「命令は皆聞いたな?」


「「「「はっ!」」」」


「英雄様の接待任務が優先される。確りと遊ばせてやってくれ。くれぐれも過ぎない様にな。」


「「「「はっ!」」」」


「では各自予定通り行動をせよ。」


その言葉を最後に皆が動き出す。ただ二人を除いて。


「まったく。面倒な話だ。誘導はしても魅惑するなとはな。」


「その通りでございます。」


「リーロ。上手くやってくれ。」


「かしこまりました。」


ソブリンは、そうリーロに話すと自分は奥の部屋へ向かう。


「待たせたな。」


「かまわんよ。お前のボスが来ていたのであろう?」


部屋には一人座って居る者が居た。ソブリンはその者に謝罪をする。


「しかし、ボスが気配を感じている様子がなかったが、気をつけてくれよ?」


「無論。そうするとも。しかしまぁ、大陸長が噛んでいるとはね?」


「それはな。例の奴らがうまい事取り入ったみたいだぜ。そのおかげで俺に子守りまでさせやがる。」


「子守りか。まぁそんなもんか。だが、アイツは転移者だ。スキルが厄介なんだろ?」


「あぁ、だが今はただの女に溺れているだけの男だ。」


「まぁそうかもな。で今は何処まで進んでいる?」


「そうだな。順調とだけ言っておこう。」


「そうか。ではもう直ぐ出会いか?」


「ああ。そう仕向けたからな。ワザと失敗させて、挽回策を取らせてからな。」


ニヤリとソブリンは笑う。

その顔には自信が溢れている。


「では、その様に陛下に伝えておこう。」


「ああ。よろしく頼む。」


二人は笑いあった。そしてソブリンの目の前に居た男はスッと存在を消した。

もう目の前にはいなくなっている。そこには椅子と飲みかけのワインが入ったグラスがあるだけであった。


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