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329 ディケイド地区。


「遂に反乱が起こったか。」


「はい。」


反乱を起こされた皇帝は宰相に聞く。それに一言で答える宰相。

反乱を起こされた統治者にしては落ち着いた会話である。


「で、どうするのだ?」


「反乱軍との睨み合いが必要でしょう。グルスキー将軍を当てます。」


「ほぉ、ここでグルスキーとな。」


ここカーリアン帝国には沢山の将が居る。

それだけ大きな国であるからだ。現在テンビー大将軍は国軍を率いて西方への征服の為出ている。カーリアン帝国の軍部は大きく五つに別れる。


・国軍・・・帝国所属の主軸の軍。主に侵攻戦がメインとなる。

・防衛軍・・・帝国所属の国の防衛を担当する。魔物討伐も行う。

・近衛軍・・・皇帝陛下直属の独立した軍。

・諸侯軍・・・貴族が編成する軍。

・警備軍・・・国中の街や村を取り締まる。主に貴族などの諸侯に対して取り締まり中心。


グルスキーは国軍所属ではない、防衛軍所属となる。

今回の様な内乱などは本来なら警備軍が担当する事が多い。

ちなみに、それぞれの軍を統括するのが軍務卿となる大臣が統括しその軍務での代表は皇帝が兼務する形だ。おもに軍務卿はサポートがメインである。

今の軍務卿はクラトウという公爵が任務に就いている。


「はい。かの者は守りが得意な将です。かの者ならば被害を少なく済ませる事が出来るでしょう。」


「という事はまだ時間が必要であるという事かな?」


「はい。」


「だが、防衛軍を使うとそれぞれの権限を越えてしまうな。わかった。クラトウ軍務卿を呼べ。」


カーリアン皇帝の命令を聞いてメイドは部屋を出る。

直ぐにクラトウ軍務卿が姿を見せる。


「クラトウ。よく来た。すまぬな。」


「いいえ。グルスキー将軍を軍替えするという事ですな?」


「ほぉ。聞いておったか?」


「いいえ。想像しただけで御座います。してラシアン宰相。グルスキー将軍を警備軍所属にして兵は10万ぐらいでよろしいでしょうか?」


「ほっほっほ。お任せ致しますよ。クラトウ軍務卿。」


「かしこまりました。陛下。警備軍からの反発が起こっては面白くありません。副将には警備軍でもグルスキー将軍と仲の良いダーバン将軍を押したいのですが宜しいでしょうか?」


「ふふふ。わかっておるな。良かろう。そのほかの事もクラトウに任せよう。」


「ははー!」


深く頭を下げてクラトウ軍務卿は辞去し退出する。


「ラシアン。下も育っておる様じゃな?」


「はい。あ奴に任せておけば大過ないかと存じます。」


「うむ。」


満足そうに頷くラシアン宰相にカーリアン皇帝。


「次は、どうする?」


「はい。ディケイド地区の各町や各村に近衛軍を派兵します。」


「威圧か?」


「勿論それもありますが、ディケイド地区を全て押さえておく事で次が有利になります。」


「はて?」


「ロックフェラ連合を潰す為の道を作っておくという狙いがあります。」


「なるほどな。」


アギトの街の反乱を鎮圧すると共にロックフェラ連合国と対峙するという事を指していた。

現在、カーリアン帝国は西方のマグナ王国、シュタイア公国、クセニッツ帝国へと侵攻を開始している。統一への道を歩んでいるのだ。ロードスト大陸において最大の敵はフリーア・ジェスター・アスワン三国同盟だと想定しているのである。

その三国が手助けが出せない状況の内にロックフェラ連合国を叩いてしまいたいと考えているのだ。この反乱を平定する名目が在れば、国境付近に軍を派遣しても名目が立つ。平定した後、そのまま侵攻を開始すれば、三国の横槍に時間を稼げると考えているのだ。


「だが、そう上手くいくのか?」


「ふふふ。陛下。何事もそう簡単にはいかないもので御座いましょう。しかし、出来る事はやる。そうしなければ、このロードスト大陸の統一すら難しいでしょう。それに目標は世界統一でございましょうに。」


「お主には敵わぬな。はっはっは。」


世界統一。この事はまだカーリアン皇帝は公言していない。

自分の内に秘めているに過ぎないのだ。


「優秀な者が多数必要であるな。」


「はい、その為に時間を費やしてきたのですから。」


「そうであったな。」


ロードスト大陸の統一は目の前にある一つの目標に過ぎない。

世界統一をする。その為には人材が多数必要になる。

戦争をするだけの者ばかりでなく、土地を治める者も必要になる。

その為にカーリアン帝国は建国以来、血筋による世襲をなるべく少なくし、万民に教育を施し、種族の壁を取っ払う事を行ってきた。

国を吸収するのにも役に立つ事だが、それよりも世界統一の為というのが一番大きい。

そして、今それが着々と成果を見せて来ているのだ。


「そろそろ、次代の皇帝となるジェネラス皇太子にも戦を教えねばな。」


「はい。」


「良かろう。ジェネラス皇太子を将軍にし、近衛軍の指揮を任せよ。」


「はは。では私めはジェネラス皇太子に指揮の内容の説明に参ります。」


「任せた。」


ラシアン宰相が部屋を出ていくとラムタラの存在感が増す。


「どうした?」


「私の方も順調です。間もなく衝突が始まるかと。」


「そうか。ご苦労。」


笑顔を浮かべるカーリアン皇帝。

こうして、カーリアン帝国内は皇帝と宰相により策謀をめぐらされ混乱するディケイド地区を活用しての侵攻活動を始めたのであった。


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