327 蟲と戦う。
「困ったなぁ~。」
少なくとも場所が分かれば対応が出来るかもしれない。
「普段なら、どういう対応をするんだ?」
「蟲の特定をして、手術でしょうが、基本的には助からない場合が殆どですから事例は少ないです。」
確かにそうだろうな。凶暴な寄生虫だとすれば対処が見つからずにそのまま死ぬまで見守るしかないもんな。そう言えば、日本では薬で出すという方法もあった気がするな。
「今回の寄生虫の動きが早いという点から考えてある程度の大きさを送りこまれたと考えれます。そこから、傷口からとかではなく存在する穴からと言えるのではないですかね?」
シェリルはその手の事にも相当に詳しいようだ。
『シェリルの意見でほぼ間違いは無いと思えます。』
カミコちゃんからのお墨付きもでた。
「そう考えると、頭の部分か腹の部分という事になるな。口か耳だろうからな。」
「腹であればまだ対応しやすいが脳であれば厳しいかと思います。」
実際、医療従事者でも要れば少しは違うだろうが現場居ないし、この世界の医療技術は高くないだろう。何せ科学の発展がまだまだなのだから。
「では、先ずは腹を切ってしまおう。回復は魔法で何とかするから。」
「わかりました。」
他にも方法はあるのかもしれないが、現状ではその方が早いと判断した。
早速お腹を切る為に麻痺の魔法をかけて痛みを感じないようにする。
そして、ミーリアが腹を捌くとそこには大きな蟲が入っていた。大きさは大人の腕のサイズ程ある蟲であった。
「これは痛々しい。」
その周りには食いちぎられた様子の内蔵が散見された。
素早くその蟲だけを転移の魔法で退かし、二のあるガラスの入れ物に入れた。
そして回復魔法で完全に治した。傷は見当たらない。中の方は先に回復させているので傷が無くなっていたのを確認している。また寄生虫は卵を直ぐに植える事でも有名な為、同じ様魔力を帯びている物を検知し全て除去もしている。他に100個程あった。
「蟲とは怖いものですね。」
その感想は皆が思った事だろう。
今パークリーという男は安らかな顔で寝ているが自分の体が侵された事を知ったらどうなってしまうのだろうか?私は自分がそうなったらと考えるだけでも恐ろしい。
魔力感知を怠らず、口にする物には当分気を付ける事になったのは言うまでも無い事である。
蟲の件が全て片が付いて、一人看病する者をおいてあの蟲の入った瓶を持って部屋をでた。
流石寄生虫という事もあり見た目はグロテスクだ。それに魔法により改造されている節もある。この蟲を調べる事で、証拠を掴めるかもしれないのでこの様に保存しているという訳だ。氷漬けにはなってはいるが。
「シェリル。この蟲は何という蟲かわかるか?」
「いえ。申し訳ありません。知識でそういう蟲が居るというだけです。」
「わかった。」
蟲の事は地球でも進んでいるとは言い難い。
「とにかく、この蟲を使った者を探すのが先決だな。この件はミス.ドロンジョに報告をしておいてくれ。」
「わかりました。」
直ぐに、ミーリアが部屋を出て行った。
さて、これからどうするのか?そこが肝心だ。蟲使いは今後も向かって来るのか?そうでないのか?裏は盗賊ギルドが握っているのか?それとも別の存在があるのか?その背景を探り対処しなければいけない。
一つだけ、助かるのは蟲とは言え魔力があると言う事だ。そのおかげで感知する事も可能だ。
ここはカミコちゃんに任せる事になるのだが。
「シェリル。背景を探ってくれ。皆にカミコちゃんのフォローをさせる。」
「わかりました。」
シェリルはステファネスを伴い部屋を出る。
暗殺という手段を用いるほどに殺したかった。
情報はここの地下にいるパークリーが持っているという事だ。
そう考えているとミーリアが戻って来た。指示を出してきたのだろう。
「先ずはこの施設の防御を固める必要があるな。」
「そうですね。」
そうと決まれば、やる事は簡単だった。亜空間を大量に作りそこを魔法の障壁を用意する。後は認証式にしてしまえば、認証外のどんな生物も入れなくなる。
そこにパークリーの部屋を用意し寝かせる。後はゲートの入口も同じく亜空間に設置する。
「これで良いだろう。」
ミーリア達に手伝ってもらって完成させた。ちなみに亜空間同志を繋げる事も可能になっているので、商会機能を持つ建物上部とも繋がっており、プリメラさんやリスターさんも困る事が無いように配慮済みである。
ちなみにここは元々大きな貴族の屋敷だったようで、敷地面積は大きく、シャルマン商会とクラウン・シャルマンの拠点にもなっている。東と西に出入口を用意しそこをシャルマン商会とクラウン・シャルマンが利用している。正面は私の屋敷としての入口だ。
「護衛も増員させる必要があるかもしれないな。」
「そうですね。ユカに選別させましょう。」
「後は私設兵団の増員も考えなばな。」
拠点が増えると見込んでいたので増員していたが、予定より複雑な感じになりそうであるので、更なる増員が必要になった。
「では、明日にでもチャンプリンさんとオードリーンさんに連絡を取りましょう。後はラムザ様に増員をお願いしてきましょう。」
「それはリスターさんも連れて行く方が効率が良いだろう。」
「かしこまりました。」
こうして、拠点の防衛を強化していくのであった。




