326 救出作戦。
「ザバルティ様。お時間です。」
「わかった。」
私はミーリアを伴い部屋を出る。
ここは、私のエグゼイドの拠点ではなく、王都テーストの屋敷である。
毎日この屋敷に戻って寝食をしている。少なくとも寝るのと、朝食は確実に。
廊下をあるいてゲートを通り、エグゼイドの拠点に行く。
毎日このルーティーンだ。ゲートの先では今回一緒に行動しているシーリスとアリソン。
そしてブラック・デストロイヤーの三人が合流する。あれ?スマイル・ペウロニーだっけ?
「「「おはようございます。」」」
とにかくこの三人は元気が良い。
「おはよう。」
私やミーリアが挨拶を返す。
「今日の予定は、昨日言った様に森の探索に向かうから、油断しない様に。」
ミーリアの言葉に皆が真剣な顔で頷く。
私達は今、最も注目を浴びている冒険者だ。いや、存在と言って良いかも知れない。
「ザバルティ様。これを。」
トーマスが私に渡してきた物。それは・・・。
「今日もこんなにあるのか?」
「はい。貴族からの依頼なので断っておりませんので。」
白紙色紙だ。サインを書いて欲しいという依頼なのだ。
何故こうなったのか、それはワザと注目を集める為に派手な事をしたからだ。
巷では【ザバるん応援団】なるもの迄あると言う。溜息しかでないが、ワザと目立つ行動をしている手前仕方がない。
「仕方が無いか・・・。わかった。明日の朝に渡すよ。」
「ありがとうございます。」
返事を貰ったトーマスはホッとしているのか、緩んだ顔になる。
「どうした?」
「いや~。毎日大変なんですよ。捌くのが。」
「すまない。」
どうも、大変な労力を費やさせている様だ。
「まぁ、頑張ります。」
そう言ってくれるトーマスの顔には疲れがビッシリと浮かんでいる気がする。
色々と思う事もあるが、あまりミーリア達を前には言えないな。ははは。
「じゃあ、今日も張り切って目立ちましょう!!」
「「「おう!!」」」
皆、やる気満々だ。
これも煉の為と思えば、良いのだろうか?出来れば、ゆっくりと冒険者をしたいんだけどな。
「少し、良いですか?」
「シェリル、どうした?」
「お耳に入れたい事があります。」
「わかった。」
シェリルとミーリアを連れて別室に行く。
「で、どうしたんだ?」
改めてシェリルに聞きなおした。
「はい。実は問題が起きました。」
シェリルの部下達にこの街の情報を集めさせていたのだが、どうやらこの街の盗賊ギルドの者が襲われていたので助けた様だ。その者の名前はパークリーと言うらしく、この街の支部長らしい。襲っていたのも盗賊ギルドの暗殺者だが、ここの街のギルドメンバーでは無い様なのだ。
「それは、色々と怪しいな。」
「はい。でザバルティ様に回復をお願いしたいのです。色々な毒を使っていたようで、今は何とか私どもで維持させているレベルと言う状況でして。」
「わかった。この拠点に来させても構わないが行く方が良さそうだな。」
「そうなさった方が良いでしょう。」
こうなると目立っているが故に出にくいのだが。
「アリソンとスマイル・ペウロニーの四名で表から出しましょう。ザバルティ様はその間に裏から出て、魔法でここに戻ってきてください。」
ミーリアの策に乗っかる事にした。
四人が表から出るタイミングで裏から急いでシェリルと出て、シェリルの案内でそのまま街の中を動き匿っている場所まで行く。後を付けられている様子はあるが、そんなの関係ない。直ぐに建物に入ると、そこには横になっている男とステファネスが居た。後の者は身を隠して辺りを警戒しているのであろう。
「直ぐに転移するから、行くものは掴まれ。」
そう言って私はその横になっている男に触り、辺りを警戒していたであろう者達に私に掴まらせた。
「行くぞ。」
「「「「「はい。」」」」」
皆に確認をとり直ぐに転移魔法を使う。
そして見慣れてきた、エグゼイドの拠点の地下室の一室に戻ってきていた。
「直ぐに、回復魔法を使う。」
「「「「「はい。」」」」」
皆を少し離してから魔法をかける。
独特な毒を利用している様子が見受けられるが、先ずは傷になっている所の回復をする。
強い光が周りを包み落ち着くころには傷は無くなった。
次に解毒に移るが、ここで問題が起きた。
「うぅうぅうううう!!」
パークリーが急激に痛み出したのだ。
「もしや?蟲を注入されているのでは?」
「蟲?」
「はい。暗殺の手段は色々とあるのですが、中でも手の込むモノで、体内に寄生虫を入れるというのがあります。回復魔法でその蟲も回復してしまったのかもしれません。」
寄生虫まで、この世界では暗殺に使うのか。
もしかしたら蟲使いとかいるのかもしれないな。
「蟲の駆除か。とにかく、毒を抜こう。」
そして、辺りがまた眩しく光り、毒を抜いたが予想通り、痛みで唸り続けている。
「間違いなく、居ますね。」
どうすれば良いのだろうか?
現代日本であれば、エックス線写真とか出来るのであろうが、この世界の化学はそこまで発達していないし、私が手術出来るわけでもない。
「魔法で、蟲を眠らせましょう。」
ミーリアが魔法を行使した。
強制的に蟲を眠らせるとようやく、落ち着いた感じに寝息を立て始めた。
しかし、根本的な解決ではない。どうすれば良いのだろうか?




