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324 師匠と弟子


「ぷはぁ!うまい!!だけど、本当にひどい目に遭ったぜ。」


プレストンさんはコップに残っていたエールを一気に飲み干すと感想と共に教えてくれた。


「その話は何回も聞いたよ。しつこい男だねぇ!」


ミス.ドロンジョさんは、本当に煩わしいと思っているのかいないのか笑顔でプレストンさんをドツキながら、酒を飲んでいる。あのまま、一緒に居る。ちなみに、ブリューアクサ―は槍に住まう精霊だ。だから僕にはずっと見えていたし、ザバルティさんとの戦闘時にはブリューアクサ―は片膝をついて頭を下げていた。で、今はと言うとプレストンさんの隣に立っている。


『シツコイ男なんだ?こいつは。』


『その様ね。』


『面倒である。』


苦言を言いながらも優しい目でプレストンさんを見ている。それに答える僕の精霊二人。

プレストンさんには精霊を見る事は出来てない。素質の問題かもしれないが、大半の魔槍等の持ち主はその武器や防具に宿る精霊を見る事は出来ないそうだ。勿論言葉も聞けない。しかし、何となく通ずる物があるそうだが、それは精霊の方が見たり聞いたりしていて持ち主の気持ちを考えて手助けしている様だ。


『本当に、卑弥呼様や桜花殿の様に会話が出来たりするのが羨ましいわ。僕も煉君に使ってもらえないかなぁ?』


『それは無理。』


『諦めるが良いぞ。』


慌てて反対する僕の精霊。こっちはこっちで愚痴を聞いているようだ。僕は無視しておく事にする。



◇◇◇◆◇◇◇



あれから、どれ位の時間が経ったのかプレストンは分からなかった。

実際は何年という時間が精神世界では経っていたのだが、プレストンは食事と睡眠とブリューアクサ―との攻防のみに費やされていた。気にもしてなかった。ただひたすらに目の前の相手であるブリューアクサ―を倒す事に集中していた。


「今度こそ、倒してやる!!」


「うん。その諦めの悪さは素晴らしいと思うよ?けど僕には勝てないかな?」


初めの頃の様な険悪な感じはブリューアクサ―からは感じられなくなっていた。

長い時間がそうさせたのかもしれない。


プレストンは自分の体に闘気を纏う事が出来る様になっていた。


「いくぜ!」


目に見えない程早い槍の連続突きをブリューアクサ―に見舞うのだが、それと同じスピードで同じくブリューアクサ―も突きを繰り出して防いでしまう。


「うん。なかなか成長したね?」


「その余裕を直ぐに無くしてやる!!」


「無駄だよ。まだ僕は技を出してないんだからね?」


「技?!」


「そう、例えば、これとか?」


気づくと、ブリューアクサ―は後ろにいる。


「えっ?!」


プレストンは情けない声を上げる。と共に、自分の体に穴が空いている事に気づく。

穴は左肩に空いていた。


「嘘だろ?」


直ぐに左肩を抑えてしゃがみ込むプレストンにブリューアクサ―は声を掛ける。


「大丈夫だよ。ここは精神世界だからね?」


痛みで何を言っているのかプレストンには理解できない。

そのプレストンの左肩にブリューアクサ―は手を置く。


「ほら、もう大丈夫。」


「何が大丈夫なもの・・・大丈夫だ?えっ??」


先ほどまで穴が空き痛みで一杯だったのに、ブリューアクサ―の言葉と手により痛みも空いたはずの左肩も普通に戻っていた。


「どういう事だ?!」


「だから、ここは精神世界だって言ってるじゃん?僕に掛かれば傷も治るってもんだよ。」


「そうなのか?便利だな。」


プレストンはこのブリューアクサ―を疑う事をしていない。それが彼の身を助けているとは知らずに。



◇◇◇◆◇◇◇



「それって・・・。」


「ああ、そうだ。もし俺が信じなかったら俺は精神世界で死んでいる。」


『残念ながら、信じるんだよね~こいつは。』


嬉しそうに笑うブリューアクサ―の顔はとても嬉しそうだ。

そう、精神世界でも思い込むという事で実際の体に影響を与えてしまう事は有名は話だ。

もし、ブリューアクサ―の言う事を信じずに疑うと、そのまま精神的なだけでなく肉体にもダメージがいき、死んでしまっていただろう。


「まったくもって、俺はついていたって事だな。それから今度はブリューアクサ―の持っている技。スキルを俺は憶えていく事になったんだ。あり得ないだろ?もう最後の方には師匠と弟子って感じになってたよ。」


『本当にそうだったね。不出来な弟子だよ。こいつは。』


聞えていないであろうブリューアクサ―の言葉を僕は聞いているので、つい笑ってしまう。


「そこで、こいつは精神的に鍛えられて素行がマシになったという訳じゃ。のぉ?」


「そうかもしれねぇ。だがよ、それから長い時間が掛かっているハズなんだが、起きた時にはたった10時間しか経ってなかったんだよ?精神世界ってすげぇえよな?」


『実際、最初から最後まで向こうで20年使ったからね。』


『20年も?』


『ふむふむ。それで強くなれたという訳か?20年も一緒なら師匠と弟子という関係も普通よな。』


『でしょう?本当に不出来なんだから。』


口で文句を言っているが、やはり可愛いいと思っているのかもしれない。プレストンを見るブリューアクサ―の目はとても優しいのだから。


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