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322 一つの出会い。


スタスタと黙って歩いていく中年の女性の後をごっついプレストンがついて行く。


「おい!何処に行きやがる!!」


声を掛けても、無視をされる。

仕方がなくプレストンもついて行く。そして、ふと中年女性が立ち止まる。


そこは冒険者ギルド。


「きな!」


そのまま、冒険者ギルドに入って行くので慌ててプレストンはついて行くしかなく中へ入る。すると、そこにはギルド職員と思わしき人物があの中年女性に頭を下げている所だった。

プレストンは思った。「何だ?このババアは?」心の中でババアと呼んだだけなのだが、それに気づいたのか、中年女性はキッとプレストンを睨む。


「あいつを、訓練場に連れて行っておくれ。」


「かしこまりました。」


職員と思わしき男に指示を出す中年女性はそのまま奥の方へと去ってしまう。


「おい!なんだよ?!」


「静かに、プレストン殿。貴方は私の後に続いてついてくれば良いのです。」


馬鹿丁寧な言葉遣いに戸惑いつつも、職員らしき男を見るプレストンは気づく。

この職員に隙が無い事を。


「アンタは誰だ?」


「これは申し遅れました。私はフレイズと申す者です。どうぞよろしくお願い致します。」


丁寧な挨拶と身のこなしを見せるフレイズに少し圧倒されるプレストン。


「ああ、プレストンだ。」


つい、挨拶を返してしまう。


「では、ついて来てください。」


そして、案内されるままに訓練場へと行くのだが、いつもプレストンが使っている場所では無く、別の訓練場だった。


「こんな所があったのかぁ?」


「ここは特別な場所ですよ。では暫くここでお待ちください。」


「ちょっと待ってくれ。」


「どうなさいました?」


「あのバ、じゃなくてあの人は誰なんだ?」


「ふふふ。ご存じありませんでしたか?後程、ご主人より話されるでしょう。ではお待ちください。」


「おい!」


フレイズはプレストンの言葉を放置して出て行ってしまった。



◇◇◇◆◇◇◇



「おかしいだろ?ババアって言っただけで、吐くほどの攻撃を受けるんだぜ?」


「そ、そうですね。くっくっく。」


先ほどと違い笑っている僕は腹が痛い。


「笑い過ぎだろうが?」


「す、すいません。でも、くっくっく。」


僕の脳裏にその時の情景が浮かび笑ってしまう。「ババア」という言葉はどんな女性にとっても禁句のようだと思った。



◇◇◇◆◇◇◇



「お待ちくださいって、どれだけ待たせるんだ!!」


独り吠えたプレストン。

プレストンはあの後、大人しく待っていたのだが、流石に一時間も待たされると痺れを切らすというモノだ。

その声を待っていたのか、何食わぬ顔で中年の女性が入ってくる。


「待たせたな。」


「待たせたなじゃあるか!!」


「レディを待つのも男の甲斐性というものじゃろう?」


「何をこの・・・。」


ババアと言いそうになった瞬間にキツイ目で睨まれてしまうと流石のプレストンも言い淀む。


「ミス.ドロンジョじゃ。」


不意に名前を名乗る中年女性に仕方がないと腹を括ったプレストンはグッと我慢した。

もう一度腹パンを喰らう訳にはいかないというのも理由の一つだ。


「で、ミス.ドロンジョ様は俺に何の用だ?」


頑張って、口で対抗しようと皮肉を込めて様を付けた。


「ふむ。お前を指導してやろうと思ってな。」


「はぁ?!何の為に?」


「決まっておろうが、ギルドの為じゃ。」


「どうしてだ?」


「こう見えてもウチはこのギルドの副支部長でね。近いうちにエグゼイドのギルド支部長になる予定でね。優秀な冒険者が必要なんだよ。」


「で、俺に目を付けたという事か?中々見る目があるじゃないか?」


「何か勘違いしている様だね?あんた、剣を使っているね?」


「ああ、それが何だ?」


「剣の筋が悪いから、止めな。アンタの力の半分も出てやしない。適性が低いんだろうね?」


「なんだと!黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって!」


「仕方がないね。剣の使い方を教えてやろうかね?」


そう言うとミス.ドロンジョは訓練用の剣を手に取る。


「何ボサッとしてるんだい?早く剣を持ちな。」


「おいおい。いくら何でも年寄りを甚振る趣味はもってねぇよ。」


「良いから、早くおし。」


渋々ながら、プレストンは剣を選びミス.ドロンジョに対峙する。


「仕方ねぇ。」


「それじゃ、行くよ!」


ミス.ドロンジョの言葉で闘いは始まった。



◇◇◇◆◇◇◇



「で、ボコボコにされたって事ですか?」


「ああ。物凄くボコボコにされた。」


想定通りというか、規定通りというか、徹底的にやられたそうだ。

プレストンさんが剣に適性が低い事を分からせる為に、スピードは互角レベルにしていたそうだ。もちろん腕力はプレストンさんの方がある。だけど、剣技が圧倒的に無かったプレストンさんは圧倒的に一方的にやられたようだ。


「俺は自身を無くしたね。そりゃあ酷い落ち込み様だったさ。」


「ですよね?」


「ああ、現場を離れて20年は経っていたらしいからな。それなのに剣技で圧倒的にやられたんだ。目も当てられねぇ状態よ。」


過去の話であるはずなのに、プレストンさんの目から涙が零れ落ちた。


「やっぱよぉ。男は剣に。聖剣とかに憧れるだろ?その才能がないっていうのはつれぇよ。」


男のロマンが打ち砕かれたらしい。

それで、拘って剣を使っていたのか?男ってしょうもない。と僕は自分を棚上げして思っていた。


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