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321 混沌する世界と一人の男


「おい、どうやら我が国は西方へと侵攻するみたいだぞ。」


「遂に大陸統一の為に動き出すかぁ。先ずは何処に?」


「大方の予想ではマグナ王国かシュタイア公国だな。だが、俺はクセニッツ帝国だと思うな。」


こんな会話が街で飛び交いだしている。

今はプレストンさんに連れられて冒険者ギルドに併設されているバーに居る。


「きな臭い話が出てきているな。」


「そうですね。」


プレストンさんは面白くなさそうな顔でエールを飲んでいる。

というか、この話題のおかげで盛り上がりを見せている様子がある。

何故なら、戦争に冒険者でも参加する事が出来るし、功を上げれば仕官する事もあり得るからみたいだ。


この世界にはまだ銃は存在していないみたいだ。

まぁ、飛び道具は弓が主流であって、火薬の使い道は進んでいないみたいです。

銃というモノが出来てしまうと、一気に時代は加速すると思うのだけどね。

魔法が代替えになっているというか、魔法を発展させた方が良いのかもしれないけど。


「まったく、戦争なんて悲しみが増えるだけじゃないか。」


戦闘狂のような感じなのに、真っ当な考えもしているんだなって思った。失礼な事かもしれないけど。


「へぇ。少し驚きました。」


「何がだ?」


「プレストンさんは戦闘狂だと思ってたので。」


「おいおい。随分と失礼な事を言ううじゃないか?」


「すいません。」


「まぁ確かに日頃の言動はそんな感じじゃあるな。」


と言って笑うプレストンさん。


「俺はな、戦争孤児なんだ。」



◇◇◇◆◇◇◇


時は統一歴712年。

世界は混沌から抜け出せずにいた。

ジャポネス統一帝国は既に無く、世界は沢山の国に別れ戦争を続けていた。

興っては滅ぼされ。大きくなっては分裂し、安定の無い時代に突入していた。


その状況はここロードスト大陸においても変わらなかった。

特に、小国が鬩ぎ合う中央南部は酷い有様だった。

長い戦争の所為で、恨みは積りに積り、互いを滅さんと戦いに明け暮れる国ばかりであった。

その中でもカメン王国とショッカ王国は隣同士の国であり、激しく争った。

そして遂に人として問題行動に出た。一つの村を消滅させてしまう。

ヒョード村。カメン王国に所属しているその村は小さくほぼ、一族で固まっていた。

ある日、少年プレストンは森に一人で入って行った。7歳の誕生日に父からショートソードとショートボウを譲り受けていたのだ。それを持って森に入り狩りをする。この村の男は7歳になったら、そうやって家族の為に何かするのだ。勿論普通は一人では無い。一人では無いはずだったのだが、この日いつも一緒に来ていた兄が体調不良の為一緒では無かった。

普通は行かせないのだが、この日は後から父が来ることになっていた。その為、村が見下ろせる小さな丘の上で父を待っていたのだ。


「父ちゃん、遅いなぁ~。」


そう思いながら、村を見ていると急に体が動かなくなった。


「あれ?」


プレストン少年は不思議だなとしか思わなかった。だから無駄な抵抗をしなかった。

すると、後ろから物凄い勢いで横殴りされてしまう。

そしてプレストン少年は抵抗しなかった事でそのまま横にある木にぶっ飛ばされた。そこでプレストン少年は気を失った。



◇◇◇◆◇◇◇



「で、気づいた時には眼下に見える村は炎に包まれており、その時の俺じゃあ何も出来るわけがなく。ひたすらに泣いて村を見ていたんだ。って、おいお前泣いてんのか?」


その話を聞いて僕は泣いていた。

現代日本ではありえない事だ。そんなに酷い経験をしてきたなんて。


「こんな話は何処にでも転がってる話だ。泣くなよ。」


「ずみまぜん。」


言葉になって無かったと思うが謝った気がする。


「良いって。そこからはその村を領地としていた貴族様がやってきて俺を見つけて拾ってくれたんだが、雑用ばかりやらされて、気がついたらその貴族様の息子と喧嘩して逃げ出してたよ。そこからは冒険者としてやってきた。荒れに荒れてたな!がっはっはっは。」


「ぞうだっだんでずねぇ。」


「だから泣くなよ。それから、荒れくれプレストンだとか、脳筋野郎とか、プッツン野郎とか言われる様な事ばかりやってきたんだ。喧嘩三昧、酒三昧。そんな事ばかりしている俺は実力はあるが素行に問題ありって事で長い事Cランク冒険者をやったよ。でそんな時に、ミス.ドロンジョに声かけられたのさ。」


僕の涙は止まる事は無かったが、話しを聞き逃す事は無かった。



◇◇◇◆◇◇◇



「お前がプレストンかい?」


「何だババア?ぐはっ!!」


いきなり腹に衝撃を喰らったプレストンはそのまま後ろの壁までぶっ飛ばされた。

そして壁にぶつかり、倒れるとゲェゲェと吐く。


「誰がババアだって?こんな可憐な女を捕まえてよく言えたもんだ。」


周りがザワツク。


「おい。プレストンの野郎をぶっ飛ばしたぞ?」


「一体誰なんだ?つうか、今可憐な女性ってあのババ、グハッ!!」


どうも禁句である事が分かる単語があるようだと、周りに居た人間も気づき静かになる。


「何しやがる!!」


何とかプレストンは起き上がり文句を言う。が先ほど受けた腹の衝撃は半端なく。言うので精一杯であった。


「ほう。噂通りタフさはあるんだねぇ~。」


そうニッコリ笑う中年女性。しかし、言葉遣いとは裏腹に洗礼された動きは上品でもある。


「うっせぇ!!」


「ちょっと、面貸しな。お前に拒否権は無いよ。」


そう言う中年女性はスタスタと店を出ようとする。


「待ちやがれ!!」


やられっぱなしのプレストンはメンツを潰された。このまま引き下がることは出来ず後を追うのであった。


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