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316 一体、あいつは何者だ?


ドン!


「くそがぁ!」


荒れ狂う男。

自分の不甲斐無さに荒れ狂っている。

愛魔槍【ブリューアクサ―】にすら笑われている気がして握る事すら出来ずにいる。


「あの男は一体何者なんだ?」


あの後、プレストンはその事が頭から離れず、ずっと酒を飲みながら考え荒れ狂っていた。


「畜生!」


バリン!と酒瓶が割れ、中に残っていたアルコールがまき散らされ匂いが漂うが本人は酔っていてわからない。


プレストンは只のならず者だった。

それを、ミス.ドロンジョさんによって一端の冒険者にしてもらった恩がある。

世界一になって、自分を救ってくれたミス.ドロンジョさんに恩返しをする。

そう思っていた。だが、自分は結局何も出来なかった。

あの男に手も足も出せないどころか、体が恐怖で震えてしまった。

大失態を演じてしまったのだ。


「ミス.ドロンジョさんに会わせる顔がねぇ!」


深く傷つき、部屋にこもる事になってしまってからもう一週間が立っていた。


ドンドン!


「うるせぇな!」


鳴り響くドアを叩く音に怒鳴り返したプレストンだった。


「邪魔するよ!」


その返事を気にすることなく、女性が青年を連れて入ってきた。


「ミス.ドロンジョ。」


「たく!何やってんだい!!この木偶の坊が!!一体何日休めば気が済むんだい!!!」


バシン!!


と部屋に響き渡る音はミス.ドロンジョがプレストンの頬を引っぱたいた音だった。


「だってよぉ~。」


「何がだってよ~だ!男の癖にメソメソしやがって!!情けなったらありゃしない!!!」


「さぁさぁ、直ぐに冒険に出る用意をしな!それにしても、臭い部屋だね!!こんな所に長く居られないね!外で待ってるから早く準備しな!!」


言いたい方だ言ってミス.ドロンジョは部屋を出ていく。

あっけに取られるも、ミス.ドロンジョの命令は絶対だ。

直ぐに裸になって水を浴びに風呂場へ直行し、体を洗い水を浴び、髭をそり、新しい服に着替え、冒険に出る準備を整えて家を出るとすぐ目の前の庭にミス.ドロンジョと見かけない青年が立っていた。


「ようやく、準備できたか?」


「はい。」


「うん。まぁ良いだろう。」


プレストンの前に仁王立ちになってミス.ドロンジョは頷いている。


「煉。こっちに来な。」


後ろに控えていた男をミス.ドロンジョは手招きで自分の横に呼ぶ。


「こいつは、煉って言う昨日、ギルド登録した者だ。田舎育ちで色々わからないらしいから、お前が面倒をみてやりな。実力は折り紙付きだから安心をし。」


「いや。でも・・・。」


「なんだい。女々しいね。とにかく頼んだよ。後、この子はアタシの古くからの大切な親友から頼まれた子だ。何かあったら許さないからね!!頼んだよ!!」


「おい。待ってくれ。」


「ふん。アンタの言いたい事位わかってる。聞いてやるつもりは無いよ。いいね?」


「・・・わかった。」


「よし、それで良い。じゃあ頼んだよ。」


ミス.ドロンジョは言いたい事だけ言って頼み終えるとさっさとその場を後にした。

その場の空気が重くなったのを機を使ってなのか、煉と呼ばれた青年はプレストンに頭を下げた。


「煉と言います。宜しくお願いします。」


「プレストンだ。」


そっけなくプレストンは煉に返事をした。


「まぁ良い。それじゃついて来い。」


プレストンはミス.ドロンジョに強引に押し付けられてしまった事だが、自分が了承してしまった為に、投げ出す事が出来ずに、連れて動くことを選んだ。

連れていない所を、ミス.ドロンジョに見つかってもバツが悪いのもあるが、それ以上に承諾した事とミス.ドロンジョの大切な親友からの頼まれ事だという事が一番大きい。


プレストンはその見た目からや立ち振る舞い。言葉遣いによって【ならず者】判定を受けてしまうのだが、義に厚く、熱い男なのだ。


それに、前回の大失態があるので、断る事など出来ようが無かったというのもあるのは間違いない。

だから、諸手を挙げて大歓迎とはいかなかったのだ。


そんな心情を知っているのか知らないのか分からないが、煉という新米冒険者は何も文句を言わず、プレストンの後について来る。


「お前の獲物はその刀か?」


「はい、そうです。大切な仲間に譲ってもらった物です。」


「そうか。良い仲間を持って幸せだな?」


「ははは。そうかもしれませんね。」


「で、その仲間とやらは?」


「この街に来る途中の街で別れました。」


「そうか。」


それ以上は聞いてはいけない気がしてプレストンは口を噤んだ。

暫く沈黙の中、街を出て近くの森に入る。


「今日は、お前の腕が見たいから、浅い所で少し狩りをする。」


「わかりました。」


二人は必要のない言葉はあまり交わさずにそのまま魔物狩りに突入した。


その日、狩った魔物を煉が持っていた魔法鞄に詰めて冒険者ギルドに戻った二人。

その街の冒険者ギルドで記録的な結果になった。

それを見ていたミス.ドロンジョにプレストンは質問した。


「一体、あいつは何者だ?」


それを聞いたミス.ドロンジョがニヤリと笑った。


「凄いだろ?私の大切な親友が紹介してくれた初心者だよ。」


そう言ってカッカッカと笑い声を上げたのだった。


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