315 私の王子様♡ その2
「なるほどね。で、アタシが反目する理由は?」
「はい。反目してくれていれば、敵は少なくともこの街の冒険者ギルドに対して何らかの攻撃はしないと思うのです。」
「つまりは安全確保というわけかい?それは・・・。」
「すいません。これは譲れません。祖父母との約束に貴女と逢わせるというのがありますから、解決するまでは、どうしても安全な所に居て欲しいんですよ。」
「しかし。」
「でも、敵が貴女に接触してくる可能性も大きくあります。ですので、この煉を傍においてください。」
皆の視線がザバルティ様の横に向く。
「えっ?僕ですか?」
「ああ。」
「でも、僕はザバルティさんとずっと一緒に居たじゃないですか?」
「それは大丈夫だ。ですよね?ミス.ドロンジョさん。」
「えっ?」
「ああ、大丈夫だろう。あの会場にも、冒険者ギルドにもアンタは居なかったじゃないか?」
「えっえ~!!」
「煉君。申し訳ないけど存在感が薄かったのよ?」
ミーリアさんが煉と呼ばれた男に冷たい一言を浴びせる。
「嘘でしょ?」
煉と呼ばれた男は悲しい顔になって私達三人の顔を見てくるのだが、私は横にふっと向いてしまった。他の二人もほぼ同じような感じだ。あの場に居たのだろうか?
「マジ?!」
「ふふふ。冗談よ。私が煉君が居ないという状況を作る為に認識阻害の魔法を使っていたのよ。」
「本当ですか?良かったぁ~。」
煉は力が抜けたのかヘナヘナとなった。
「そんな事が出来るとは、凄いのぉ。」
「シャーロット様。ありがとうございます。」
ミーリアさんはミス.ドロンジョさんに感謝を述べる。
「「「シャーロット?!」」」
先程まで、黙って事の成り行きを見ていた私達だったが、シンクロして聞きなおした。
「その名を久しぶりに聞きましたわ。恥ずかしいので、おやめ下さい。ミス.ドロンジョとお呼びください。」
「「「ええ!!」」」
しゃべり方まで変化したシャーロットこと、ミス.ドロンジョさんに煉と呼ばれた男も驚いた様子を見せるが、それ以上に私達三人の方が驚いた声を上げてしまっていた。
「なんじゃ?!何かおかしいか?!」
ミス.ドロンジョさんはザバルティ様の前だと言うのに、私達を睨みつける。
「「「いえ?!何も?!」」」
「まったく。お主ら後で説教だな!」
といつもの調子に戻ったミス.ドロンジョさんは本当にシャーロットという名前なのか、私には怪しいと思わされた。だってシャーロットって名前は貴族の方の名前に良く使われる高貴な名前として知れ渡っているからだ。
「ほぉ、ウジェニー。何か言いたい事があるみたいだね?」
「いいえ。」
「まぁいいさね。じゃあ帰ろうかね?」
ちょっと待てババア。約束は?という目でミス.ドロンジョさんを睨みつけた。
それに気づいたミス.ドロンジョさんは、私を睨み返すと。
「ちっ!わかってるよ!!」
と言ってザバルティ様の方へ振り向いた。
「すまないんだが、こちらからもお願いがあってだね。」
「なんでしょうか?」
「こいつらを鍛えたやって欲しんだ。」
漸く私達の本題に入ってくれた。
「そうですね。良いですよ。」
「本当かい?!」
私達は黙ったまま身を乗り出していた。
「ええ。但し一つ注文があります。事件解決までは、止めたいと思っても、開放できません。それにミス.ドロンジョさんとは会わす事が出来ません。構いませんか?」
ザバルティ様の言葉に私は迷う事は無かった。
「「「はい!」」」
「って。シンクロする返事とか、どういうつもりだい?!」
私達は驚くほどに気持ちは一緒だったみたいだ。
それを見たミス.ドロンジョさんは苦笑しながらも苦言を言ってきた。
「いや。まぁ。」
「普通です。」
「えへへへへ。」
と返した私達を見てザバルティ様は笑った。笑顔も素敵だなと思った。
これで、一緒の時間を手に入れる事が出来る。「よっしゃあ!」と心で叫んだ。
「わかりました。ではこれからよろしく。」
「「「はい!宜しくお願いします!!」」」
やはりシンクロする私達と笑って握手をしてくれた。
当分、この右手は洗う事は出来ないな。
「やれやれ、この馬鹿共が!浮かれるんじゃないよ!!」
私達は自分達が思うより以上に顔が緩んでいたらしい。
私を含めた三人はお尻を思いっきりミス.ドロンジョさんに叩かれてしまった。
「痛い!」
「イタ!」
「イっ!」
私は痛みを一瞬感じたが、それよりもザバルティ様に訓練してもらえる事に喜んでいた。
「では、早速明日からと言いたいところなんだけど、現在、拠点になる所を探している途中なんだ。落ち着いたら連絡を入れるよ。何処に行けばいいかな?」
それはそうか。
明日からとはいかないか。私達は自分達が泊っている宿を教えて帰ることになった。
後、煉とか言う青年は明日からここで冒険者として行動する予定になったようで、明日冒険者登録をするらしい。それをミス.ドロンジョさんと打ち合わせしていた。
「では、この馬鹿どもを宜しくお願いします。」
「わかりました。ではこちらも宜しくお願いします。」
こうして私達の目の前で、ザバルティ様とミス.ドロンジョさんは硬い握手を交わしてたのだった。




