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314 街は【ザバるん応援隊】に占領されました。


「参ったな?」


僕の目の前でザバルティさんは苦笑いを浮かべている。

その向こうには女性という女性がザバルティさん目当てに押し寄せてきているのだ。

先日の闘いを見たりした者が口伝で町中に伝わったらしく、僕達が行くとこ行くとこに町中の女性がついてくる始末だ。その中には貴族の者から冒険者から人妻の様な人までいてどこもかしこもお祭り騒ぎだ。

中には【ザバるん応援隊】なる垂れ幕を持って駆けつけている人達もいる。

どこで、名前が入れ替わったのか、ザバルティさんは皆からザバるん様と呼ばれている。


「ザバるん様!こっち向いて!!」

「ザバるん様!笑顔ください!!」

「ザバるん様!握手してください!!」

「ザバるん様!匂いをかがせてください!!」


少し変態チックな声掛けもあるが、皆が夢中になっているのは間違いない。

イケメンであり優雅な立ち振る舞い。そしてあの圧倒した強さ。


だからこそ、街の男どもは怖くて手が出せないか、連れている女性が綺麗な事もあって嫌われたくないからと、子供が憧れた男だからとかで、絡んでくる者が居ない。


そう、子供にもその武勇伝が広まっていて、男の子は同性の目標として母親も一緒になってファンになっていたり、女の子も夢を見る男性として憧れているという感じの様だ。


「凄いですね?」


「あぁ、凄いな。」


あれ?他人事みたいになってる?


「ザバルティさん目当てですよ?なんで他人事みたいなんですか?」


「うん?あぁ、まぁ、わざと目立つ様にやったからな。」


「え?」


「あれは、ミーリアの案なんだ。ちょっと目的があってな。」


「そうなんですか?」


「ああ。」


なんてことだ。これ全部が狙ってやった事だって?


「ふふふ。ザバルティ様が少しちゃんとするだけで、今の様な状況になるんですよ。」


「そうなんですか?」


「ええ。だからいつもはこうならない様に自粛しているという感じですかね?」


「そんなカッコいいもんじゃないさ。ただ、私は全てに答える事が出来ないのが嫌なだけさ。」


「ふふふ。そうしておきましょう。」


意味深なやり取りを躱すザバルティさんとミーリアさん。


「私が目立てば目立つほど、目立たなくなる存在が居るってことさ。」


「そういうもんなんですか?」


黙って頷くミーリアさんは楽しそうで、ザバルティさんはツマラナそうだ。


「何かミーリアさんは嬉しそうですね?」


「ふふふ。わかりますか?」


「はい。」


「だって思いませんか?昨日の一瞬の出来事だけで、あれだけ街の女を夢中にさせる事が出来る方を主人として仕えているんです。それも昔から。世間から認められたと思うと嬉しくなるんですよ。」


「もしかして、それが本当の目的とかじゃ?」


「ふふふ。秘密です。もう少し時間が経てば、煉君にもわかりますよ。」


今日はご機嫌な感じのミーリアさんはとても和やかな笑顔で答えてくれた。

僕は、理由を秘密にされたのにも関わらず、不思議と嫌な気分にならなかった。

僕も、身内が誉められた時の様な不思議な気分を味わっていたからかもしれない。


「もう。これ位で良いだろう?宿に戻ろう。」


「かしこまりました。」


ミーリアさんはそう答えたので、僕達は揃って宿に戻った。

僕が注目されている訳じゃないけど、注目を浴びるザバルティさんと一緒に居る所為か、気疲れしたなと思う。有名人や著名人の人のシンドサが少しわかった気がした。

見られ続けられるのは非常に疲れる事だ。


宿に戻ると、ミス.ドロンジョさんが、ブラック・デストロイヤーだったか三人の女性冒険者と来ていた。


「今回は本当に申し訳なかった。貴方の祖父母様の事を悪く言って申し訳なかった。目が曇っていたのはアタシの方だった。」


そう言って土下座して謝ってくるミス.ドロンジョさんをザバルティさんは立たせた。


「いえ。こちらこそ、目的があったとは言え、やり過ぎました。申し訳ありませんでした。だから、お互い様という事で終わりにしましょう。」


「本当に良いのかい?」


「勿論です。それに、今回はまだ続きがあります。だから、ミス.ドロンジョさんには手伝ってもらいたい事があるんです。」


「何でも言ってくれ。アタシに出来る事なら、何でもするよ!」


「では、今まで通り私に対して反目する形をとってもらえませんか?」


「いやいや。それは無理だよ。恐れ多い。」


「すいません。今回の事件が解決するまで私と対立していて欲しいんです。この街の様子では悪者役になってしまいますが。」


「それは、どういう事だい?」


「実は、私はあえて貴女を煽らせてもらいました。初めてお会いした時に決めたのですが、貴女はこの街でも有名な方の様ですね?どのみち“武”によるアピールは必要だったんですが、それを快く思わない存在としてこの街に居て欲しいんです。」


「もしかして?人が関係していると?」


「はい。今回のご依頼の事件を少し私の方で探ったんですが、今回の事件は人の感情と知恵が見え隠れしています。なので、あれだけ“武”をアピールしたので、少しの間大人しくしていると踏んでいます。その間にこちらの体勢を整えたいと思うんです。」


そう力説するザバルティさんは頼もしい人だと改めて思った。

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