313 私の王子様♡ その1
「それじゃ、始めるよ!双方良いかい?」
ミス.ドロンジョがこれから戦う二組を正確には私達19名と相手の一人を見渡した。
今回は異常な闘いと言って良いと思う。
だから私はあまりこの闘いに乗り気では無かった。
弱い者いじめをしている様な気にさえなったのだ。
私がその人を初めて見た時の感想は「凄くカッコいい!!」だった。
白い鎧に白い剣を持ち、銀髪の青年。歳は16歳ぐらいだろうか?
話し方や行動の一つ一つが洗礼されていて、素敵な立ち振る舞いで見ているだけだった。
私の仲間のロマニーとペニーに至っては唖然としながらも涎を垂れていた。
「やばい!」
「王子様降臨!!」
どうやら、二人とも同じ感想の様だ。私は二人を見て自分の感情を抑える事が出来た。あぁはなるまいと。だって、二人とも目はハート形になってるし、その目からハートが飛んでいくのだから、見ている方は気持ち悪い。
そして、ミス.ドロンジョに呼ばれて奥の部屋に入っていった時はフロア中があの人の話でもちきりになった。連れていた女性が綺麗だった事でより一層の話題ぶり。
そして、出てきてミス.ドロンジョが怒鳴り散らしている様子を見て、最初はミス.ドロンジョが気を悪くした意味がわからず、諫めたほどだ。だが、理由を聞いて私は激昂した。
私達を馬鹿にしているのかと。
そこからは、絶対に私達で倒すぞ!と3人で話し合った。
そして今日、会場に来てみたら、全員対一人と言う。
あの人の頭は大丈夫なのだろうか?
私が正気にさせてあげよう。調子に乗って命を失うには勿体ない。そう思って闘いに臨む事になった。世界中の女性の為にもあの人を正気に戻そう。失うには世界の損失だ。
「始め!!」
ステージから審判役のミス.ドロンジョが降りて、始まった。
「おい!兄ちゃん本当に良いんだな?」
再度の確認をするプレストンはニヤニヤしている。あの顔は悦に入っている時に見せる顔だと私は気づいた。
「君達に私と闘う事が果たして出来るかな?」
「なに!?」
変な言葉だなと思った瞬間だった。
それまで感じていなかった絶大なプレッシャーがある場所から発せられた。
威圧?殺気?神気?
それが織り交ざった絶大なプレッシャーを放ったのは紛れもなく一か所から。
そう、目の前に居るあの人。ザバルティ様から発せられたのだ。
私は、マズいと思って体を動かそうとするが、一歩もほんの少しの動きも出来ない。
顔を動かせず、目で見渡すが、誰も動けなていない。
先程まで、ペラペラと話をしていた実力だけならSランク冒険者のプレストンに至っては体が震えている。
「何なんだ?一体?」
かすれた震えた声でプレストンは言った。それが近くに居た私にはかすかに聞こえただけだ。私達の異変に気付いたのか、ミス.ドロンジョが大声を上げる。
「一体、どうしたって言うんだい?!誰でも良い早くやっちまいな!!」
その言葉に反応したい私達は何とか動かそうと思う反面、体がすくんで動かない。
頭で体を動かそうとするのだが、心がそれを止めてしまう。そんな感じだ。
「やはり、君達では無理だったか。残念だ。」
非常に残念そうな顔でそう告げたザバルティ様。
「うがぁ!」
この声はペニー?!
もしかして、理性が飛んだ?!
「そうか、君が暴走する事で必要以上の力を発揮する子か。」
そう
ザバルティ様がおっしゃった瞬間に暴走ペニーが飛び掛かった。
あのペニーの攻撃を受けて立っていられた者や建物は無い。正直「行ける!」と思った。
「残念だ。」
ザバルティ様の目の前に飛び出し、目に負えない程速さで繰り出されるペニーの攻撃を慌てる様子も無く躱している。
「嘘でしょ?」
少しの間、交わした後。
パシッ!
という音がした、遂に捉えたかと淡い期待をしたのだが、直ぐに落胆に変った。
「もう十分かな?」
そんな呟きと共に片手で、ペニーの蹴りを受け止めていた。いや、蹴り出した足を掴んでいたのだ。
「眠っておきなさい。」
その言葉と共に、ザバルティ様から魔力?神力?が感じられた。と思ったら、ペニーは力なく倒れそうになる。それを御姫様抱っこで抱きかかえるザバルティ様を見た瞬間、私は体の抵抗を止めた。【超カッコいい!!】心で叫び、私は決心した。
「アンタたちは何をやってるんだい?!」
一人だけ、ミス.ドロンジョだけが、憎しみを持って行動をしている。
「何をしたんだい?!」
「では、貴女も同じ体験をしてみますか?」
「やれるもんならやってみな!」
「わかりました。」
その返事を持ってから、しゃべる事さえできなくなって体は震えに震えているミス.ドロンジョは顔が青ざめていく。
「わかりましたか?私の相手が出来ない事を?」
「うぅぅぅう!」
言葉にならない声を出し、目だけはまだ、媚びなてない事がわかる。
「仕方ありません。ちょっと強めますよ?」
そうザバルティさんが声を出すと、私は更に動けなくなった。声すらも出せない。自然と頭を垂れたくなる。恭順を表したくなってしまう。物凄いプレッシャーが降り注いだ。あれでもまだ本気じゃなかったんだ。
ミス.ドロンジョは上がらう事が出来ず、頭を下げてしまっていた。
「ザバルティ様。もうそれぐらいで良いのでは?」
一人の女性がザバルティ様に声をかけた。
「そうだね。わかった。」
そう言ってクルリと背中をこちらに向けて抱きかかえたまま歩き出した。
一気にプレッシャーが無くなったと同時に、ミス.ドロンジョは横に倒れた。
どうも頭を下げた時にそのまま気絶してしまっていた様だ。目がひっくり返っていた。




