306 祖父母の依頼。
「父上。母上。それに、お祖父様にお祖母様まで。一体どうされたのですか?」
「いや、驚かせてすまない。折り入ってお前に頼みたい事があるんだが・・・。」
私が驚いて聞くと、父上が歯切れ悪く口を開かれた。
そこから私は暫くの時間、聞き役に徹した。
◇◇◇◆◇◇◇
「なるほど、そうでしたか。それでは、父上も動けませんね。お祖父様とお祖母様を行かす事も勿論、私は反対です。」
「だよな?」
「そうは言うが、儂と婆さんでいくしかあるまいが?なぁ婆さん?」
「そうですよ。私達はまだまだ若い者には負けません!!」
私と父上と母上は溜息をつくしか出来なかったが、私は厳しいく言う事にした。
「すいません。歳をお考えになって頂けませんか?それに、私達が世間に責められてしまいますよ?」
「なに。黙っておればわかりはせぬよ?」
「そうですとも。」
老いて益々盛んとはこの事なのだろうか?私も記憶があるから強くは言いたくないけど、流石に無茶だし、私としても心配この上ない。
「わかりました。では私が行きますよ。で、何処になるんですか?」
「うむ。カーリアン帝国のディケイド地区の北のエグゼイドという街じゃ。今はミス.ドロンジョと名乗ってはいるが我らの一族のフリーア王国出身者じゃ。元は公爵令嬢じゃった。本名はシャーロット・フリーアじゃ。」
うん。どこからミス.ドロンジョになったのだろうか?謎だ。カーリアン帝国に行く事で緊張したが、それよりもその名前に衝撃を受けて吹っ飛びそうになったよ。だって元々はシャーロットっていう名前でしょ?貴族の中の貴族って名前なのに、ドロンジョとは。
「わかりました。とにかく行ってみましょう。どちらにせよ、私もカーリアン帝国に拠点を構える必要がありましたから、問題ないでしょう。」
「おぉ、そうか。やはり儂の孫は話がわかるのぉ。どこかの石頭の息子と違って。」
「なんですと?!」
「はいはい。親子喧嘩は無しですよ!」
お祖母様に止められているが、まだ続きそうな気配だ。
「すまないね。ザバルティや。」
「いえいえ。大丈夫ですよ。」
「ありがとう。ザバルティ。」
たぶん母上が一番ヤキモキしていたに違いない。
「いいえ。それよりあまり心配なさらずに。」
「わかっているわ。でもこればかりは仕方がないのよ。」
「そうですか。それでは毎日、この屋敷に帰る事を約束しますよ。帰れないときは連絡を入れます。だから、この屋敷に滞在してくださいね?」
「そう言って貰えると嬉しいわ。」
「儂らも良いかの?」
「もちろんです。好きなだけ居てください。父上もどうですか?」
「いや。俺は領地に戻っておくよ。何かと物騒な感じになっているからな。それについては後程書面でお前にも教えるよ。」
「はい。是非お願いします。」
「うむ。」
ゲートが有るので、実際の所そんなに難しい話では無いのだが、やはり領主たる者、領地優先なのは私に見せる為だろう。
「お会いさせて頂いて、信頼できる方であれば、ここにお連れしますね?」
「おぉ、本当か。これは楽しみが増えたわい。では、返事をザバルティに持たせねばいかんな。婆さん。急いで部屋に戻ろう。」
「はいはい。わかりましたよ。」
祖父母様二人は直ぐに部屋を出て行かれてしまった。
迅速な行動は素晴らしい。どうも私達はあの血を確りと受け継いでいる様だな。
その二人を苦笑しつつ見送った父上と母上。
「では、俺も領地に戻るとしよう。」
「私も一度戻って子供たちを連れてこなければいけませんね?」
「あぁそうしてくれると助かるな。あははは。だが、その分寂しくなるなぁ。」
父上にとって、弟達の面倒を見るのは難しいらしい。苦手では無いが、色々と来客など有って忙しいのだろう。
「まぁまぁ。弟が居るからいいではありませんか?それより飲み過ぎにならない様に気をつけてくださいね?」
「勿論だ。だが、偶には顔を見せに戻ってきてくれよ?」
「はいはい。わかりましたよ。」
うん。まぁこんなもんかな?
お祖父様とお祖母様が凄く嬉しそうにしているので、出来るだけ呼びたいなと改めて思うが、実際の所は何処まで出来るかはまだ分からない。状況が分からなすぎるからだ。
一旦シェリルに調べさせる必要があるかもな。
こうして、私はカーリアン帝国内へと足を運ぶことになったので、拠点をエグゼイドの街に設ける事にした。
先ずは、馬車を動かさねばならないし、トーマス達の動きもどうするのかをラムザに相談せねばならないな。参ったな。
「ふふふ。何やら楽しそうですね?」
私は自分が困った顔になっていると思ったが、どうやら違うらしい。
「そうかな?これでも困っているんだけどな?」
「ふふふ。ではそういう事にしておきましょう。」
私がそう弁明するが、ミーリアはそうは思ってくれていないらしい。
「私が直接大きく介入すると少し問題になるかもしれないな。やはりここは煉に表に立ってもらわねばならないかな?」
「そうですね。その方が良いでしょうね。」
「そうなると、やはりラムザに大幅な計画の変更を伝えねばな。」
計画とは絶対では無く、この様に変化するものだ。その変化があるからこそ面白いのだ。
予定外の事をどのようにクリアするのか?真価が問われる時でもあるな。そう思うとワクワクするものだ。うん。やはり、私は楽しんでいるのかもしれないな。
私は、軽く食事を済ますとシーリスを伴ってラムザの元へと急いだのだ。




