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303 アギトの街にて


僕等は盗賊団との戦闘以降は平和な旅となった。

もちろん、魔物との戦闘があったりしたが、命の危険を感じる事なく進めた。


「今日は、カーリアン帝国のディケイド地区の入口のアギトの街に入るんですよね?」


「そうよ。あのディケイド王国の滅亡時に被害が少なかった街の一つよ。」


「ディケイド王国?」


僕の知識にはディケイド王国ではなくディケイド地区だ。


「そうよね。煉君は知らないわよね。元々はディケイド地区では無くディケイド王国だったのよ。その王国がカーリアン帝国に吸収される前に壊滅的な事件があったのよ。」


どうも、時の公爵家が魔物を従える事が出来る能力者を異世界転移魔法を使って呼び出し、王位を奪おうとした事件があったらしい。実際に王都は壊滅し王族の一部が命からがら脱出に成功しカーリアン帝国に保護を求め、その結果併合されたという事があったらしい。魔物に襲われた王都は壊滅したが、その能力者はその後、残党を追って森に攻め入った所で消息を絶ったという経緯がある。王都を襲った魔物の大多数は統制を失い王国内にある街を襲うに至り、被害を受けた街が沢山出たというのだ。ちなみに公爵家はその後一族皆断罪され一族ごと処刑されたという結果になったみたいで、改めてこの世界の怖さを思い知った。


「そんな事があったんですか。きついですね。」


「でもな。これにはまだ続きがあると言われているんじゃ。この公爵家は実はカーリアン帝国と繋がっていたのではないか?とかまだ公爵家の者は皆どこかで生きているとか、噂が絶えない事件・事案なのじゃよ。」


「そうね。なにせ処刑された所は誰も見せてもらえてないのよね。死体が晒されただけだものね。それにカーリアン帝国の介入があまりにも迅速だったものね。待ってました見たいな?」


「そうじゃな。じゃがまだまだワシ等が知らんおぞましい裏がありそうな気がするのぉ。」


ブライトさんとミスコンティさんの話の内容に身震いしそうになる。人間が平気で恐ろしい事が出来る種族であるという事と、沢山の人を巻き込んでいても尚、自身の栄達を求める人間の欲望に吐き気がする。


「着く。」


クリスチーナさんが外から中に顔を突っ込んできて一言。

今はバーナードさんとクリスチーナさんが馬車の御者を務めてくれている。


そして遂にカーリアン帝国内の初めての街アギトに着いた。

街はどんよりと暗い感じがする。特別に人が居ないとか物理的な暗さは全くないのだけどな。活気もない訳では無い。市場は人の通りも多く大きな声も聞こえてくる。


「何か、暗いですね?」


「そうじゃな。皆、顔が暗いわい。」


そうか、笑顔や笑い声が聞えないのだ。

そこから黙って考え事をしている間に、今日泊まる予定の宿に着いたので、皆が降りて宿に入る。僕は個室を与えられたので、ゆっくりしようと部屋でくつろいでいた。


トントン。


「はい。」


「プリメラだ。少し良いかな?」


「ちょっと待ってください。」


僕はプリメラさんを迎え入れる為にドアの前に立ち扉を開けた。


「どうぞ。」


「失礼するよ。」


プリメラさんは中に入ってくると部屋を見回している。

僕は慌てて、椅子を用意し勧めた。


「ありがとう。ゆっくりしている所、急にすまないね。」


「大丈夫です。」


椅子に座ってもらい。飲み物を用意して出してから僕はプリメラさんの前に座る。


「どうしたんですか?」


「いやなに。一度、君とゆっくりと話をしてみたいと思ってね。ただ、中々時間と都合が合わなくて、今になったという訳さ。」


「そうでしたか。」


プリメラさんはハーフエルフだと聞いているがエルフの特徴とされる尖がった耳ではなく普通の耳なんだけど、ブロンドの髪がエルフの血を継いでいると確信させるほど綺麗だ。それに歳もたいして僕と変わらないのではないかとと思うほど、見た目も若いが、ラムザさんとの関係を知っている僕としては、僕と同じ年ではないと分かっているが、年齢を聞く事は憚られるというのは、仕方がない事だと思います。はい。


「で、時に煉君。君は聴いてみたい事があるんだが、良いかな?」


「は、はい。」


「君はこの世界の住人では無いね?」


「えっと、そうです。たぶん。」


「ふむ。確証は無いが別世界から来たのではないか?と思っているという事だね?」


「はい。僕は学校から家に帰っている最中だったハズなんですが、気がついたらここの世界に居ました。」


「うん。」


「なので、本当にこの世界が違う世界なのかはわかりません。ただ、ここの世界の人達には僕が居た世界の国や地域や歴史などは知りません。逆に僕はこの世界の国や地域や歴史などは知りません。もちろん僕の知識が足りないだけなのかもしれませんけど。」


「ほぉお。」


「だけど、僕は異世界だという確証も無いんです。言葉が通じているし、偶に僕の知る世界の事が出てきます。それに、僕が精霊界を旅した時に思ったのはただ、別次元にあるだけで同じ世界なのではって事です。」


「ふむ。それはどうしてだい?」


「僕がこの世界に来た時に、神様にあったとか、特別な能力を授かったとかって事は無かったからです。授けられた物は無かったんです。」


「ふむ。迷い込んだ?そんな感じであるという事かな?」


「そうですね。迷い込んだ様な感じです。気がついたら森に居たのですから。」


そうだ。僕は迷い込んだんだ。でも何故迷い込んだのだろうか?

いつどこで?その記憶が僕には無い。確かあの角を曲がって直ぐに?

いや。学校に居た時か?それとも?段々と曖昧になってきた自分の記憶に少し驚いていた。


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