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300/367

300 夜は続く。


「ふん。獣の分際で俺達に楯突くのか?」


『何か勘違いしているんじゃないか?我の獲物を置いていけと言っている。誰もお前たちの事などどうでも良い。他は好きにしろ。だが、我の獲物を横取りするな。』


「ちっ!今は騒ぎになる訳にはいかん。降ろせ。」


「ほらよ。獣が人の女に興味を持つとわね?くっくっく。」


『・・・。』


銀色の猫はそれに言い返す事はせず、ただフードを被っている者達を睨みつけているだけで動かない。更に煽ろうとする者を他の者が制しフードを被った者達は風の様に消え去った。



◇◇◇◆◇◇◇



少しして、ペニーがいち早く目を覚ました。


「えっと?痛い!」


後頭部を殴られた時に出来たのかコブが出来ており、そこが痛んだ。

だが、目の前には銀色の猫が自分を見ている事に気がつき身構える。


「!」


『気がついたか?まったく情けない者どもめ。これに懲りたらもう夜道を歩きまわるのは止める事だな。』


「アンタがしたんじゃない?」


『我が後ろから殴りつけるような無粋な真似をすると思うとは、全くもって救いようのない奴だ。』


「じゃあ誰が?」


『我がお前に話す義理はない。そんな事よりお前の仲間を助けなくて良いのか?』


「あっ!」


漸く近くに倒れているウジェニーとロマニーの事を思い出したペニーは慌ててそばに居る二人に回復魔法をかける。


「うっ。う~ん。」


ウジェニーが先に気づいた。


「ウジェニー大丈夫?」


「う、うん。全身が痛ぇ。ペニーは大丈夫なのか?」


「大丈夫よ。」


「あの猫は?」


「そこに居るわよ?あれ?居ない?」


先ほどまでいたハズの場所にあの猫は居なかった。


「い、痛い。」


そこでロマニーが気づいた。


「ロマニー、大丈夫か?」


「う~ん。頭がボーっとするわ。でも大丈夫よ。」


ペニーとウジェニーはロマニーの言葉で安堵した。


「とにかく、今日は家に戻りましょう?」


「そうだな。」


「わかったわ。」


三人は家路につく。

その間は互いに体を支えながら、なるべく大きな道を通って帰った。

支えあってはいるが無口になる三人。


家についた後、一番最初に口を開いたのはウジェニーだった。


「やられたな。」


「そうね。圧倒的な力の差だったわ。」


「・・・」


円卓の前に座る三人は黙り込んでしまう。

少なくともAランクパーティーとして名前が売れて来ていて、自身もあったのだが、それを粉々に砕かれてしまったのだ。あの猫に。

少しの沈黙の後に、突然ウジェニーが笑い出した。


「あははははは。」


「どうしたの?」


「どうしたもこうしたも、アタシ達ブラック・デストロイヤーとまで呼ばれる三人がたった一匹の猫にヤラレタんだ。これが笑い話じゃなくて何なんだ?」


自嘲気味なウジェニーの発言にペニーは答える。


「私達はまだまだっていうだけの話よ。」


「そうね。どんな相手であっても何とか今回も生きて戻って来れた訳だから、良しとしましょう?」


「そうだな。」


自嘲的な笑いを止めたウジェニーも同意した。


「まだまだって事で頑張りましょうよ?ねっ?」


「うん。」

「ああ。」


ペニーにウジェニーとロマニーは笑顔で答える。

明日への道が途絶えなかった事を喜ぼう。そう三人は思った。

その時、フッと風が部屋に入って来たかと思うと、部屋の明かりが消えてしまった。


「二人とも、気をつけろ!」


ウジェニーは一気に立上り、剣を抜く。

ロマニーは無詠唱で魔法の光を灯す。

ペニーは防御魔法を展開する。


「くっくっく。やはり獣だからかこんな上玉を放置して生かしてやるとはな。」


「誰だ!」


「あの獣と遊んでいる所に通りすがった者だよ。」


意味深な、そして不愉快な声に三人は警戒心を最高まで高めた。

普通の者ではない。そう心が警告するのだ。


「さぁ、今度は俺と遊ぼうじゃないか?さっきは俺の部下が頭を殴って悪かったな?ペニー。」


その言葉を言われたペニーは体中に悪寒が走り鳥肌が立つ。


「じゃあ、その場所に猫以外の者が居たって事か?」


「気づかないとはな。本当にAランクパーティーかよ。やっぱ、女は男の下で喘ぐしか能がないようだな。」


「「「何!」」」


女だからと侮辱するだけならまだしも、喘ぐだけ。男を喜ばすしか能が無い。そう言われた三人は激昂した。激昂する事で、ようやく気持ち悪さから解放されたのは皮肉なものだ。


「ふざけんじゃないわよ!!」


その中でも一番、激昂したのはペニーだった。


「駄目よ?ここは!」


「そうだ。ここじゃダメだ!!」


そのペニーの様子を見たロマニーとウジェニーは慌てて、ペニーを宥めだす。


「なんだ?本当の事を言われてムカついたのか?ほら、俺と遊ぼうじゃないか?ニッシッシ。」


「もう無理。我慢の限界!」


「ねっ?そう言わずにねっ?」


「そうだ。ペニー。こんな奴は気にするな。アンタもさっさと帰ってくれ。」


「おいおい。そんなつれない事言うなよ~。ちゃんと三人とも可愛がってやるよ。」


「良いから、出ていけ!」


ウジェニーの剣幕は鋭く侵入者を射抜く。が堪えた様子は無い。


「どいて!」


ウジェニーとロマニーを押しのけたペニーは男の前に仁王立ちになる。


「アンタみたいな男が、私は一番嫌いなのよね!」


ペニーはそう言うと唇を噛み血を流す。


「アンタみたいな男は死ねばいい!」


ペニーは体中から煙を噴き上げたのだった。

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