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30 奴隷商と買込み



「いらっしゃいませ。本日はどのような奴隷をお探しですか?」


「この館にいる全てのハーフ系奴隷を見せてくれ。」


「見せるのは構いませんが、冷かしは困りますよ?」


「金ならある。」


ドンと置かれた革袋にはこの国の最高硬貨である大金貨が溢れんばかりに入っている。

見た目にも沢山入っている事がよくわかる。重さ音でわかる。受付の者がニコニコしだした。


「かしこまりました。混ざり者達でよろしいのですね?欠損奴隷はいかがしましょう?」


「何を聞いていた全部だ。」


男は「混ざり者」という言葉を聞いて眉間に皺を寄せた。その顔を鋭く観察している者が居た。


「これはこれは、申し訳ございません。私はこちらにて奴隷商をしております。ザンギスでございます。お客様、どうぞこちらへ。」


如何にも怪しい感じの女はザンギスと名乗りここの店主である事を告げ、奥の部屋に案内する。

奥の部屋は貴族の屋敷の応接室という感じの部屋だ。とても豪華に見える家具や調度品がある。

部屋の中央のソファを勧められた。


「奴隷商というのは儲かるようだな。」


「滅相もありません。ここには身分の高い方も来られるので、失礼が無いように用意した品ばかりでたいして高くもありません。」


男は納得した顔を見せた。


「では、お客様。お名前を教えて頂けますでしょうか?身分証になる物があればそれも見せて頂きた。」


「何故、名前や身分証が必要になる?」


「私どもザンギスの館では、商品とは言え、人を売っております。信用が無い方にお売りするわけにはいきません。」


「おかしいな?どこの奴隷商でも身分など問われた事はないぞ?金さえ払えば良いのではないのか?」


「ふふふ。他の奴隷商はそうでしょう。ですが、私はお金だけ払えば誰にでも売るという商売はしておりません。」


さぞ可笑しいというかのような笑いをザンギスと名乗る女はする。男は苛立ちを見せる事なく答える。


「そうか。では何故、お前はそうのようなルールを設ける?」


「先ほども言いました通り、信用のない方にはお売りしません。売られる奴隷の生涯が掛かっているのですから当然でしょう。」


男はザンギスと名乗る女の目をジッと見る。ザンギスも見返す。少しの間の後、男は負けたとでも言わんばかりに首を振る。


「よかろう。お前を信用しよう。私は、ラムザ・ハイマー。冒険者をしている。これを。」


と言って冒険者証を見せる。そこには【A級冒険者】という称号が記載されている。


「そんなにあっさり信じても良いのですか?」


「お前、精霊が見えているだろう?俺の隣に居る精霊が見えるのだろう?」


ザンギスはニコリと笑うだけで答えない。


「俺の相棒が、ハーフエルフでな。わかるんだよ。その反応が。このデカいソファに座っている位置が隣に座れるスペースが俺の隣に一人分あるよな。普通は真ん中にお前が座っているのだから俺も真ん中に座るはずだから、オカシイはずなのに、少しもお前は反応しなかった。もう一人来ているとわかっているからだ。」


「ふふふ。流石元Sクラス冒険者のラムザ様。現在はAクラスでしたか?私の同胞がお世話になっております。」


「ちっ。エリザと同じハーフか。」


「そうです。試すような事をして申し訳ない。」


ザンギスはフードを脱ぐ。そこには綺麗なエルフの耳がついた頭を下げ謝罪する。


「私は、ご存じのようにハーフエルフです。私は縁があり前の館の主人からこの地位を頂きました。それからは、同胞を売るこの商売を続けてきました。よりよい主人にめぐり合わせれるようにと。結果はうまくはいってません。しかし、そのような行為が誠実な態度と見られるようで、上流階級の方々に信頼を頂きこの街一番の奴隷商になりました。自身がハーフエルフである事を隠し今までやって来たのです。」


「おいおい。お前こそ秘密をばらすなんて、俺を信用していいのかよ?」


「ふふふ。事前に調査しておりましたよ。エリザを助けた経緯もしっておりました。」


「どうやって調べるんだよ?エリザと知り合いか何かか?」


「いえいえ、貴方様ほど有名な方であれば、調べるのは簡単です。」


「こえぇな。」


ふふふと笑った後、急に真剣な顔になってザンギスは言う。


「そろそろ、本題に入りましょう。ラムザ様は、自分の子供を探すため仲間を作ろうとしている。間違いないですか?」


「ああ、そうだが、何でしっているんだ?」


「それは、おいおいお話しますよ。で、何故、ハーフの奴隷を買う事にしたんですか?」


「偽善だと言われるだろうが、迫害を受けているハーフを助けたい。一人の人間として人生を送らせてやりたい。そう思っている。だからだ。」


「なるほど。」


「それにな、ハーフは凄い奴らが多いのも事実だ。普通の純潔種よりハーフ種の方が優秀な者が多いと俺は思っている。そんな奴らがまともに生きていけるそんな所が一つ位はあっても良いんじゃないかって思ってる。」


今度は、ザンギスが黙った。更に俯く。が突然大声で笑いだした。


「馬鹿ですねぇ~。とびっきりの馬鹿だ。」


≪お主。黙っておれば図に乗って・・・≫


ペレが遂に発した言葉を遮るようにザンギス言葉を続ける。


「ですが、本当に面白い考えだ。私には思いつかなかった事だ。良いでしょう。お売りしましょう。」


「そうか。それは助かる。」


「ただし、条件があります。」


と真顔でザンギスは切り出した。








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