3 宴会
半刻後、ポワロの準備を待ち、一緒に館に戻る兄弟達。
行きは2人だったが、帰りは50人位となっていた。船員達も見張り番以外の者が来ているのだ。
マカロッサ家の領内にある領都アンバーは港を擁しており交易が盛んな街である。
人族の街であるのに、多種多様な種族の者が行き来している街中を行進のような形で進んでいく。
「ポワロ様、お帰りなさい。」
「皆さん、お待ちしているわ。」
「今回はどんな話をしてくれるの。期待してるわ。」
等、様々な言葉でもって一行は迎えられている。
向かう先は丘の上にある城である。王が住む城ではない。しかし、アスワン国の東の玄関口という立地から外敵からの攻撃を想定した立派な城だ。海のような青さが特徴的であり、今のように平和であると観光スポットのような扱いを受けている。
城の入り口には沢山の人影が見える。
「兄上、ただいま戻りました。」
「よく戻った。元気そうで何よりだ。」
「無事で何よりです。ザバルティとシャルマンはご迷惑をおかけしませんでしたか?」
「いいえ、エスネス様。二人はよく案内をしてくれました。立派になられましたね。」
「やんちゃばかりで、困っておりますのよ。」
父アルカティと叔父ポワロはハグをしあいお互いの無事を確かめ喜び合っている。
母エスネスとエルフのキーファも笑顔で挨拶をしている。
「あなた、早く皆さんに中に入っていただきましょう。」
「おお。そうであるな。皆の者、まずは中へ入ってくれ。」
「おおー。」
その後はポワロ帰還のパーティーである。大人達は大騒ぎであった。
その晩は遅くまでパーティーが続き、母のエスネスに子供達が寝室へ連れて行かれるまで大はしゃぎであった。沢山の海の冒険者達から、色々な話を聞いて子供達も大はしゃぎである。
ザバルティには兄弟が5人居る。
長男で嫡男でもあるザバルティ(9)に、次男のシャルマン(7)。長女のリスター(5)に次女のキティ(5)。三男のスイード(3)である。長女と次女は双子である。
「では、そろそろ子供達は寝室へ下がりなさい。」
「えぇ~」
大ブーイングである。
しかし、母に宥める様な話しをされては、子供達も引き下がるしかない。
「ではポワロ叔父さんにキーファお姉さん、そして皆さん。おやすみなさい。」
「おぉ、お休み。また明日。」
あちこちから、声がかかる。母に連れられて子供達はそれぞれの寝所に向かった。
◇◇◇◆◇◇◇
その夜。ザバルティは夢を見た。
≪目覚めなさい。≫
「貴女はだれですか?」
光が眩しくて見にくいが、絶世の美女?が立っている。
≪うまく転生出来たようですね≫
「なんの事でしょうか?」
≪今から、それを思い出すでしょう。私の事も。≫
そういうと、手を頭に置かれた。
その瞬間からザバルティは急激な頭痛に襲われ意識を手放した。
◇◇◇◆◇◇◇
子供達が去った後の広場の隅の方で兄弟が中央で騒いでいる船員達を見ながら、話しあっている。
「兄上よ。どうやらキナ臭い状況になってきているようだ。」
「やはりそうか。気を引き締めていかねばならぬか。」
「うむ。最悪の場合は一方的に攻められてしまう可能性がある。」
「それも、仕方のない事か。ただ、民を思えば玉砕だけは避けねばならぬ。」
「そうだな。まぁ、何か起こった時は俺が逃がしてやる。」
「これは、心強い申し出だ。万が一の時は頼む。」
「任せておけ。ただし、最後まで諦めるなよ。」
「分かっているよ。先祖伝来の地を簡単に逃したくはないからな。」
「さぁ、無粋な話はこれぐらいにして、今宵は飲もう。」
二人は改めて酒を酌み交わすのであった。
夜はさらに更けていく・・・。