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299 闇が支配するエリア


「なんだい?今日はもうお終いかい?」


「はい。明日も早いんで。ねっ?」


「はい。そうなんですよ。朝一番で洞窟に入ろうって。」


「そうそう。」


「ふん。そうかい。じゃあさっさとお帰り!」


「「「はい。ご馳走様でした!」」」


ミス・ドロンジョに大きく頭を下げたスマイル・ペウロニーもとい、ブラック・デストロイヤーの三人はそそくさと店を後にした。


「でも、本当にアタシらだけでやるの?」


「なによ。ペニー。昨日話をして決めたじゃない。」


「そうだぜ。他の国の冒険者なんかあてにせず、アタシらスマイル・ペウロニーが解決するって決めただろ?」


「ロマニーとウジェニーはそういうけどさ。やっぱ怖いじゃん。魔物なら良いけどそうじゃなかったらどうすんの?」


「なに気弱な事言ってんのよ?」


「だってさぁ~。」


「じゃあ、ペニーだけ帰っても良いわよ?アタシ達二人でやるから。」


「もう、すぐそうやって除け者にしようとするぅ~。」


パンパンと手を叩くウジェニーは二人の方に手を置いた。


「そう、カリカリするなよロマニー。それにペニーもそんに弱気になるな。アタシらはいつも三人で越えて来ただろ?」


「確かにそうだけど。」


「わかったわ。ペニー。不味いと思ったら直ぐに逃げましょ?それでいいでしょ?」


「わかった。本当に逃げるって約束よ?」


「ああ、約束だ。」

「それで、いいわよ。」


三人は改めてルールを決めて街の中を捜索しながらブラつく。

景色は昼間とは違う顔を見せる。路地裏は明かりも無く闇が支配するエリアに変っている。


「やっぱ、雰囲気が違うわね。」


「そうだな。」


「・・・。」


三人は見る景色全てが怪しく見えてしまう。

彼女達三人は、冒険者であって探偵ではない。

街の掃除はしても街を探索する事はないのだ。

街の中を徘徊するように歩き回って数時間、何も起こらなかった。


「やっぱさ、男じゃないとダメなんじゃない?」


「そうかもな。」


「どこも怪しいけど、怪しいだけだもんね?」


そんな会話が出来るほどに余裕が出てきた頃だった。


ゴトンッ!


歩いている路地の後ろの方から大きな物音が聞えた。


「何?!」


「落ち着け。ペニー。猫だよ。」


彼女達が後ろに振り返り確認すると、路地伝いの屋根から猫らしきモノが彼女たちの前に飛び降りてきた。


「ほっ。なんだ。猫かぁ~。」


ペニーだけじゃなく、ロマニーも緊張していたようだ。

緊張が解けた瞬間だった。


『お前達。何をしている?』


「「「猫がしゃべった?!」」」


三人は腰を抜かしたかのようにへたり込む。


「なんで?」

「うそでしょ?」

「ありえん!」


質問に答えない三人に対して痺れを切らしたのか猫が威嚇する姿になる。


『で、お前たちは何をしているのか?と聞いている!』


その剣幕、口調に驚いたペニーが口を開く。


「私達は、ただブラついていただけです。」


『・・・。』


そこで漸く落ち着いたウジェニーは、少しづつ動き剣に手をかけようとする。それに気づいている様子の猫は、ウジェニーの方へ顔を向ける。


『やめておけ。死にたいのか?』


それを待っていたのかロマニーは魔法を発動させる。


『やめておけ。と言っているだろ?』


ロマニーの魔法は撃つ前に無力化された。キャンセルされてしまったのだ。


「なっ?!」


「ちっ!」


その様子を見たウジェニーは舌打ちと同時に体を躍らせて猫に飛び込み剣を一閃するするのだが、手ごたえを感じない。


「えっ!」


「上!!」


ペニーの声に反応してウジェニーは上を向くとそこに猫が居た。

猫はそのまま急降下して、ウジェニーの顔に蹴りを喰らわす。

ウジェニーは受けをする事が出来ずに路地の壁までぶっ飛ばされ、壁を突き抜けてしまう。


「「ウジェニー!!」」


『他人を心配している余裕なんかあるのかな?』


猫は次の標的を決めていたようで、雷がロマニーを襲う。一瞬の出来事にロマニーは抵抗する事が出来ずもろに受けてしまい、その場に崩れた。


「ロマニー!」


『さぁ、後はお前だけだ。』


「くっ!」


素早く後ろへ下がると、回復魔法を発動させた。


『ほぉ。回復魔法の使い手か。面白い!』


猫の口の口角が吊り上がる。


「化け猫め!聖なる神の光を知れ!!」


神聖魔法の中の浄化魔法を発動させると辺りは眩しい光に包まれる。


『ほぉ。最上級魔法が使えるのか?良いだろう。その力に免じてここは一旦引いてやる。』


光が収まった後そこには猫は居なかった。


「ふぅ。」


ペニーは息を吐いた。


ドコッ!


その瞬間にペニーは後頭部に衝撃を受け意識を手放してしまった。


「厄介だな。どうする?始末してしまうか?」


「いや。神聖魔法は貴重だ。こいつらも連れて行こう。」


「そうだな。報告し指示を仰ごう。」


「ああ。そうしよう。」


忽然と現れた男達は黒いフードを深くかぶっている。

その男達は三人を担ぎその場を後にしようと動き出すが、それに待ったをかけた者が居た。


『おい。お前達は人の獲物を横取りするのか?ここが誰の縄張りか知らないと見えるな?』


そこには、先ほど戦っていた猫が居た。

その猫の体は月明かりに照らされ銀色に強く輝いていた。



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