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297 初陣


「良いかな?煉君。戦というのは数が多いい方が有利だと言われているのは知っているかな?」


「はい。」


「数で勝る事は何事においても有利だ。しかし、烏合の衆という言葉を知っているね?」


「はい。数だけで統率の取れていない集団を指す言葉ですよね?」


「そうだ。だがね。たとえ統率が取れた集団でも、(トップ)がやられては同じ末路を辿ってしまうのだよ。それが集団戦の難しい所であり、楽しい所だ。」


ユカさんは凛々しい顔を更にピリッとさせて話を続ける。


「逆に言うと大将さえ居れば持つとも言えるし、大将が先頭に立つ事でいつも以上の力を発揮させる事も出来るとも言える。もちろん、それには色々な要素が重なる事が重要だ。で、私のスタイルだが・・・、わかるね?」


「はい。」


「では、ここからはトーマス殿に任せよう。」


スッとトーマスさんが横に来る。


「では、頼む。騎馬隊第一・第二・第三は私に続け!第四・第五は指示あるまで待機!!」


目の前に砂煙が立っているのが僕にもわかる様になってきた。

その間にもユカさんはスルスルと隊の前に進み出る。そして時間を測る様に静かに何かを待っている。そして目視でも見える所に来た。


「行くぞ!!!」


ユカさんの掛け声と共に騎馬隊が前進をスタートさせる。


「始まるぞ。」


トーマスさんの声と共に今までよりもより一層スピードを上げた騎馬隊が突撃をかけた。

真正面からの突撃はユカさんが先陣をきりそれに続くように騎馬が中央を突破していく。


「よし!騎馬第四は左翼。騎馬第五は右翼に突撃!」


トーマスさんが測る様に見守りながら指示を出す。

その突撃をユカさんの突撃により左右に分かれている所に見事に決まる。そして、その突撃が済んだ所で、敵はまた中央に戻ってきておりその中央舞台をユカさんの隊が突撃しこちらへ戻ってくる。


「よし!煉君行きたまえ!!歩兵第一・第二・第三続け!!!」


「はい!」


自分の体が震えているのが分かる。怖いのか?興奮しているのか?何なのか僕には理解できない何かが僕を震わせる。


「さぁ、煉!行くぞ!!」


「あっロバートさん?!」


「俺は第一歩兵隊を率いている。第二はシェリル。第三はステファネスだ。安心して好きなように動け!後ろは任せろ!!」


その言葉にどれだけ安心したかわからない。今まで止まっていた時が動き出したのか?それとも爆発的な何かが起こったのか?僕は真っすぐに敵に向かって突っ走った。


「うおぉぉぉ!!」



◇◇◇◆◇◇◇



あの後の記憶は曖昧だ。

僕は我武者羅に戦場を駆け巡った気がする。

その際に切り殺した相手も居たと思うけど、どれだけの数を切ったとか数える事は無かった。ただ、人を切る事。殺す事に対しての罪悪感はあったけど、吐いたり気持ち悪くなるという感覚は芽生えなかった。心が壊れてしまったのだろうか?そう思っていた時がありました。


「おぇ~!」


盗賊団を鎮静化させた後、一息ついた瞬間にやってきました。


「げほっ!げほっ!」


「大丈夫か?」


僕にそう声を掛けてくれているのが声でかろうじてロバートさんだと認識しているが、僕の目は涙で一杯で見えていない。口からはもう胃液が出ていて口の中は酸っぱい匂いで一杯だ。鼻水も流れていると思う。


「凄い有様だな。とにかくここは任せて馬車内のシャワーを使わせてやれ。」


そんな言葉が聞えたような気がした。その後、僕はたぶんロバートさんだと思うが連れられてそのままの格好でシャワーを浴びた。どれくらいの時間を浴びて居たのか分からないけど、僕の体は綺麗になった。それと同時に涙も鼻水もスッキリと止まった。


『立派じゃったよ。』

『立派でした。』


今まで、黙って近くに居てくれた卑弥呼と桜花。その精霊であるヒミコさんとオウカさんが声を掛けてくれた。


「何が立派なの?こんなだよ?」


『最後まで気を保っておったじゃろう?』

『そうです。闘いが終わるまで。』


「でも、皆はそうじゃなかったろ?」


『それは慣れじゃ。幾度となく戦を経験しておる者達だからじゃよ。』

『そうです。初戦であれだけ動けたら立派以外あり得ません。』


一生懸命に説明をしてくれる二人に少し癒されたのかな?少し頬が緩んだ。


「ありがとう。」


『ふむ。』

『ふふふふふ。』


二人と一緒に少しの時間和んだ。


しばらくすると。


「おい。煉。まだか?」


「はい!今出ます!!」


僕は慌てて一度全てを外し、普通に体を洗い乾いている服に着替えを済ませて外に出た。


「あれ?」


そこは白い空間になっていた。ベットが数個置かれて居た。


「ようやく出て来たか。もう合流したから、ブライト達が心配して居たぞ。顔を見せてやれ。」


「わかりました。」


慌てて出ようとした所でトーマスさんが待ったを掛けた。


「そんなに慌てるな。それより今回の事とゲートとこの馬車の事は内緒だからな?」


「不味いんですか?」


「そうだな。今はまだ早い。秘密に頼むぞ?」


「わかりました。」


返事を返して僕は馬車から出た。


「おぉ、大丈夫か?」

「煉。問題ない?」


「えぇ、大丈夫です。ご心配をおかけしました。」


僕を迎えてくれたブライトさん達は僕の顔を見て安堵した顔になっくれた。


「次からはワシ等も絶対同行するからの?!」

「そうよ。ダメよ?独断行動は!」

「気が気じゃありませんでしたよ?」

「めっ!」

「これでアリアに殺されなくて済む。」


この後、盛大に説教されました。


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