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295 未来に賭ける


「うぅうぅうぅうぅうぅ。」


微かに口から漏れ出る呻き声。

その女の口の端から泡が立ち始める。

しかし、男は腰の動きを止める事は無く。そして女の首を絞め続ける手の力を弱める事も無い。ただ自身の快楽の為に。


「うぉおおお!」


締めつけが一段と強くなり、漸く男は腰を一段と差し込み。手を離す。


「はぁはぁはぁはぁはぁ。」


男は肩で息をするも満足そうな顔で笑っている。


「お前、中々気持ちよかったぞ。」


優しさの欠片も無く、女をベットから投げ退かす。

ドサッ!

ただその音が響くだけ。

男はベットから離れ風呂場に向かう。


「捨てておけ。次はもっと丈夫で良い女を用意しろ。」


「はっ!」


部屋の外に待機する従者に言いつける。

従者は慌ててその場を離れ主人の部屋に駆け込むと、女を見つけ素早く回復魔法をかける。


「ぶはっ!ぶへっ!はっはっはっはっはっ。」


息を吹き返した女に従者は水をやると、女は勢い良く水を飲む。


「ゴホッ!」


女は水を少し吹き出しつつも最後まで飲み干した。

男はその最中ずっと背中をさする。飲み干した後、女の私物を持ち、自身の部屋へ連れて行く。部屋で待っていたメイドに体の洗いと身支度の整えを言いつけ、男は館を出る。


足早に街の路地を歩くと、一つの建物の前でふと立ち止まり中に入っていく。

その建物の中に入った男は迷う様子も無く、奥の部屋の隅にある床をめくると体をその穴に入れて階段を駆け下りていく。


降りた先の廊下を歩き徐に一つのへやの扉を開け中に入ると目の前にあった俵の様な物を殴りだす。


「くそ!くそ!くそ!くそ!くそ!」


思いのたけをぶつける様なその行為の代償はその男の拳に現れる。


「はぁはぁはぁ。」


肩で息をする男はそれでも殴る行為を止めない。

そんな男の方に一つの手が置かれる。


「アスラン。もう、それぐらいにしておけ。いくら回復魔法が使えるからって無茶しすぎじゃないか?」


「ほっておいてくれ!」


「そうはいかないだろう?さぁ、向こうに行こう。」


男の方に置いた手に力を入れ行動を阻害すると、アスランは漸く動きを止めた。

その拳は鮮血に彩られている。部屋を替えて椅子に座るともう一人の男は水を渡した。水を飲み漸くしてアスランは落ち着きを取り戻した。


「・・・すまない。」


「構わんよ。心情はわかる。で、今回は生き延びる事は出来たか?」


「あぁ、何とかな。後でここに連れてこられるだろう。」


「わかった。準備をしておくよ。」


「頼む。ところで、キラ。準備は順調か?」


「問題ない!と言いたいところだが、上手く行っていない。」


「そうか。厳しいか。」


「あぁ、当初の予定より半年は先になる見込みだ。」


「俺自身、我慢できるかわからんぞ。今日も殴り掛かりそうになるのを必死で我慢したんだ。」


「アスランばかりに厳しい目に合わせてしまってすまない。」


「キラ止めてくれ。俺が志願した事だ。愚痴だ。許してくれ。」


「それでも尚、目のあたりにする事はキツイと思うよ。」


「そう思ってもらえるだけで良い。ありがとう。」


アスランはキラに感謝を示す。そして真剣な顔になって話しだす。


「シャルマン商会がここに到着するのはいつになりそうなんだ?」


「カガリからは、およそ2週間後になるとの連絡を受けた。1週間は伸ばしてくれたみたいだ。」


「そうか。2週間の我慢が必要か。」


「ああ、俺の方もそれまでには何とかしておくよ。」


「頼む。」


「で、カーリアン帝国の方はどうなんだ?」


「ラクスからの連絡では、やはりシャルマン商会がカギになりそうだと返事がきている。」


「そうか。どちらにしても後二週間は死ぬ気で動かなければダメだという事だな。」


「あぁそうだな。そうしなければあのくそ野郎を取り除くことは厳しいという事だ。」


「それにカーリアン帝国からの独立。ロックフェラ連合国入りも果たさなければいけなくなりそうだな。」


「ああ。厳しいが、それが現実だな。」


厳しい顔になる二人。それほどまでに厳しい現実が彼らを襲っている。


「だが、本当にシャルマン商会は助けてくれるのだろうか?」


「わからん。しかしカガリが太鼓判を押しているんだ。信じるしかないだろう?それにシャルマン商会というよりクラウン・シャルマンは軍事介入した事があるというのはよく聞く話だ。理由は表に出て来ていないが、少なくとも善性である事を信じよう。」


「わかった。カガリは直接交渉出来なかったのか?」


「いや。したみたいなんだが、確約できないと言われたそうだ。商会の代表プリメラ殿には見てからだと言われたらしい。」


「おい。そんな悠長な。見てからでは遅くないか?」


「慌てるな。だからこそ俺たちが自身で動くのだろう?」


「それはそうだが。」


「それに後ろ盾になって貰うだけで良いじゃないか?俺たちの手で成し遂げる事が重要なんだから。」


「確かにそうだ。すまん。」


「ははは。そこがアスランの良い所だよ。的確に最善が見えている。俺だって後ろ盾じゃなく介入してもらえる方が格率が上がると思っているよ。」


「そう言われると、恥ずかしいな。わかった。とにかく頑張ろう。」


「ああ、頑張ろう。」


だからこそ、その未来に賭ける者達。行く先は天国か地獄か。それとも・・・。


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