291 契約当日に。
翌日、約束の時間にラムザさんを訪ねて行くと、ウキウキしたエリザさんが一緒に居た。
何か、良い事があったのかも知れないな。
それにしても、昨日のお好み焼きは美味かった。ちなみにあの後、特別にあのお好み焼きを10枚用意してもらった。魔法の鞄に入っている。ザバルティさんの話だと、どうも鞄に入れておくと時間が経過しないという事だ。で、用意してもらったお好み焼きが魔法の鞄に入っているというわけだ。
「うふふふ。煉君、こんにちは。」
「こんにちは。」
本当に、機嫌が良さそうだ。
一体何があったのだろうか?
僕を筆頭に、ブライトさんとかも揃っている。僕が会った事の無かった2人も一緒だ。
「揃ったな。じゃあ最終確認だ。本当に昨日話をした通り、俺のクラウンに入会してもらう。その際に秘密保持の契約をおこなう。その契約には命を懸けてもらう事になる。本当に良いんだな?」
「かまわん。」
ブライトさんが代表して返事をする。
反対する者は誰一人として居なかった。
「良いだろう。では同行を認めよう。」
「ありがとうございます!」
「まぁ、そう慌てるな。では契約といこうか。」
「その前に話がある。」
ブライトさんが待ったをかけた。
「なんだ?怖気づいたのか?」
「違うわい。ワシ等の保証はその契約で保証されるが、その方の保証は何がしてくれる?ワシ等が騙されんとどうして言えようか?」
「なんだ。そんな事か。おい、入って来てくれ。」
ラムザさんがそう言うと、奥の扉が開きザバルティさんが入ってきた。
「ま、まさか?」
「そうだ。今回の事は精霊を使った契約じゃない。神の元での契約だ。」
えっ?という事は?
『馬鹿な?!いくら使徒とは言え早々に・・・いや、ザバルティ殿であれば、そうとも言えんか。』
だよな。って最後の方が少しオカシイ気がするんだけど?
それは僕だけが思った訳ではないらしく、ヒミコさんの声を聴いた者は皆同じような反応をしてる。
「そういう訳だ。私がこの契約について干渉させてもらう事になった。どうやら初めて見る顔があるようだから、改めて自己紹介をしよう。【神の使徒】になっているザバルティだ。よろしく。」
もちろん知らない者は居ない。だけど、確かに二人ほど、顔を出していなかったメンバーが居るのは確かだけど、【神の使徒】である事を強調したかったのだろうと思った。
「で、お二人は本当に良いのかな?」
ザバルティさんは、僕も初めて会う二人に顔を向ける。
フラナガンさんとラコックさんだ。
「あと、バーナードさんも大丈夫かな?」
「ふふふ。ワタクシの事はお気になさらずに。もう過去の事ですから。」
意味深な会話をザバルティさんとバーナードさんが交わす。
「俺は大丈夫だ。」
「俺も問題はないだろう。」
フラナガンさんとラコックさんもそう答えた。
「わかりました。では、別室へ。」
なぜ、あの三人がその様に声を掛けられたのか分からないが、三人共に真剣な顔になっているのを見ると、相応に覚悟が必要なのだという事が分かった。
皆で、別室へ移る。別室とは白い空間になっていた。訓練を施された所に似ている。
そこには、一人の美しくも野性味あふれる女性が居た。その外見に似つかわしく荒々しくも神聖な空気を纏っている女性だった。
「我はギンチヨ。よろしく頼む。」
短いながらも厳かな言葉に圧倒されそうになった。
『まさか、ここに獣神化された方が居ろうとは。』
「獣神化?」
『そうじゃ。獣からの神化という所じゃな。我と同格、いや、もう我より先に進まれておる様じゃな。』
「その方、よくわかっておるな。確か精霊神ヒミコだったかな?」
『お初にかかる。おっしゃる通り精霊神の一柱ヒミコと申す。よしなに。』
「こちらこそ、亜人神ギンチヨじゃ。よろしく頼む。」
ヒミコが見えてない者は独り言のように話すギンチヨに戸惑いながらも、言葉の節々からこの場に精霊神なる者が存在して居る事を理解する。
「さて、皆の衆。この度はザバルティ様の言伝にて、神の名の元に契約となる。然るに、我一人では、足りず、ここに契約の精霊を統べる神のご降臨を願うに至った。よってこの場は神聖な気で充満させておる。キツイ者が居るようじゃが、問題無いか?」
「はい。息苦しく感じますが、大丈夫です。」
バーナードさんが、フナガナンさんとラコックさんに確認を取り返事を返す。
「わかった。では始める。」
ギンチヨ様が呪文の様な言葉を唱えだしたが、僕には理解できない文言のようで、只の音に聞こえるだけだった。しばらくすると、ギンチヨ様の横から徐々に力を感じる様になっていく。渦巻くといった方が正しいのかもしれない。あの、創造神様がご降臨された時に似ているが、全てが同じという訳では無いようだ。
ギンチヨ様の横にザバルティ様が宝物の様な物を置く。
すると、急激に圧倒的な力の存在がそこに居ると理解させられた。
「契約の神ミスラ様。本日はお越し頂きありがとうございます。」
ギンチヨ様が言葉を発すると、何処からともなくフワリと紙が浮かび上がってきた。
そして、目の前でその紙に文字が浮かび上がってくる。
その文字の内容は契約内容の様で、先日ラムザさんが言っていた内容だった。




