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290 焼き方が違うのだよ。


僕は、直ぐに部屋を出た。

準備は万端におこなう事。「段取り八分」物事の正否は段取りに掛かっているという意味だと祖父から教えられた言葉だ。

自分の部屋に戻って、着替えの服などの旅支度を始める。

この間、ザバルティ様に頂いた【胴丸鎧・卑弥呼】だけじゃなく、収納袋も貰った。肩掛け鞄の様な形をしているが、魔法の鞄でおよそ1キロ四方空間の容量で物を入れる事が出来る。この魔法鞄も【神話級】ランクの格を持つのだから、あの人の規格外ぶりを証明する品だと思う。

その魔法鞄に必要な物というか、僕の私物を詰め込んでいく。

入れるだけだから、あっという間だった。


「よし!」


家具以外では寝具があるくらいで、部屋は綺麗になったぞ。

僕は満足し、消耗品の予備を購入する為に街に出ようと思ったけど、夜中になっていて断念し、寝る事にした。買い物は明日の朝に行こう。


トントン。


ノックの音がした。


「はーい。」


「夜分に申し訳ない。ザバルティだ。」


「どうぞ。」


珍しいな。と正直思った。この部屋に来られるのは初めてじゃないかな?


「遅くに悪いね。」


「いえ。大丈夫です。それよりどうしたんですか?」


「あぁ、煉がシャルマン商会の新規店舗開発の旅団に参加すると聞いてね。」


「はい。確かにその通りです。カーリアン帝国に行くという話だったので、ラムザさんにお願いしました。」


「そうか。目的は?まぁアリアさんの為という事かな?」


「そうですね。まぁアリアさんがそこに居るとは思ってないんですが。」


「まぁ、そうだな。」


「正直言うと、何かしていないと気が狂いそうなんですよ。今は少しでもアリアさんに関係しそうな事は動きたいと思って。」


静かに頷いて聞いてくれるザバルティさん。


「情けないですよね?」


「うん?何がだ?」


「好きな子一人守れないんですよ?正直どうしたら良いのかわかりません!」


ザバルティさんは優しい目で僕の眼を覗くかのように見つめる。何だろう?この感じ前にも同じことがあった様な?


「煉。本当にそう思っているのか?」


ザバルティさんの問いかけが深く心に入ってくる。

どうだろうか?本当に今、僕が思っているようにどうしたら良いのかわからないのだろうか?少なくとも、自身の訓練は怠っていないし、好きな人を助ける為にカーリアン帝国に向かおうとしている。今出来る事はしていると言えるんじゃないだろうか?


「いえ、何とか今出来る事はしてます。」


「そうだな。ちゃんとわかってるじゃないか。」


「はい。」


「焦る気持ちはわかるが、まだその時が来ていないというだけだ。【邪神の使徒】なのだから少なくとも、約束は守るよ。だからその時が来るまで、確りと今自分に出来る事を、煉が出来る事を行っていれば良い。そうしたら必ずそこに活路が現れるよ。」


「はい。わかりました。」


ザバルティさんに言われると、確かにそうだと思える。何だっけ?天の時を待つだったっけ?


「さて、煉、夕飯がまだだろう?」


「あっはい。そうです。」


確かに何も食べずに準備していた。

食事の事を言われるとお腹がグ~と鳴る。


「あははは、じゃあ一緒に食べないか?」


「はい!」


こうしてザバルティさんと食堂に行き一緒に食事をとる事になった。

食堂に行くと、ミーリアさんが待っており、一緒に食べる事になった。

この二人と居ると何故か安心する。この気持ちがあの夢を見せたのかな?


「今日は?」


「お好み焼きです。」


「お好み焼きもあるんですか?!」


僕は堪らず大声を出していた。

一体この食堂シェフは何者なのだろうか?

そう言えば、この間マヨネーズがあったっけ?それにソースも常備されているんだから不思議な事では無いのかもしれない。


「煉はお好み焼きは嫌いかな?」


「いいえ。祖父母の住んでいた所はお好み焼きが有名だった所だったので、大好きです。」


「そ、それは良かった。」


そうか。お好み焼きが食べれるのか。

そして席について待っていると、目の前にお好み焼きが運ばれてきた。


「うっそ?!広島焼!!」


流石に異世界で広島焼き(広島風)が出てくるとは思なかった。

関西焼き(関西風)の方が作り易いと思っていたからだ。

具は全部生地に混ぜるからだ。だけど、広島焼きはそうはいかない。

生地とは別に、焼きそばを作ったり色々と加工が必要なんだ。


「何か?おかしいか?」


「いや、まさかこの焼き方が出てくるとは思ってなくて。」


「お、お好み焼きと言えば、これだろう?」


「まぁ、はい。そうですね。」


うん。何かもういいや。

とにかく、僕の好きなお好み焼きが食べれる事に感謝しよう。

そうして、出てきたお好み焼きを箸を使って小さく切っていく。

ヘラがあったら楽なのに。そう言えば、通は鉄板の上でヘラで食べるとか聞いた事があるな。

そう思いながらザバルティさんを見る。


「ヘ、ヘラがある!?」


「うん?お、お好み焼きと言えばヘラだろ?」


さも当然の様にヘラでザバルティさんは食べていた。

なんなら、ミーリアさんも。それに食堂を見渡すと皆はヘラを使って食べていた。


「うそん?!」


「さぁ、そんな事は良いから食べてみろ。」


ザバルティさんに勧められお好み焼きを口にする。


「マジ?!これは田の〇のエビ〇―ゼ!?」


お好み焼きの生地と焼きそばの間に具を入れるのが広島焼き、その中にマヨネーズで炒めたエビが入っているのが田の〇のエビ〇―ゼ。

100パーセント一緒だ!

広島出身の人がこの世界に居るのか?!


「美味しいか?」


「はい。美味いです!!」


その後、僕は夢中になって食べた。

結果、5枚も。もちろんお腹はパンパンになった事は言うまでもない。


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