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288 闇があれば光がある


「おい、ザバルティ。」


精悍な顔つきの男が呼ぶ。

ザバルティと呼ばれた青年?少年?は声を聴いて笑顔になり答える。


「おはよう。ゆ、ラムザ。何か用事かい?」


「ああ、ちょっと相談に来たんだ。」


「どうした?」


ラムザは実に渋い顔になって話を始めた。

終始黙って聞いていたザバルティも徐々に真剣みが増していく。


「と、言う訳なんだ。部下を10名程送る事になっているんだが、情報部からの報告だとあまりにも不味い状況の様なんだ。自分で行く事も考えたんだが、今はダメだとエリザ達に、言われてな。こうして相談しに来たわけだ。」


「そうだろうな。ここに来るだけならゲートを利用するだけだが、そうはいかないからな。わかった。じゃ、先ずはゲートを繋げよう。どのみちカーリアン帝国には行かねばならなかったからな。」


「すまん。俺の部下に運ばせるから頼む。」


「良いよ。気にするな。で、こちらからもお願いなんだが、あいつをその旅に行かせたい。」


「おいおい。大丈夫か?戻って来たばかりだぞ?」


「それなんだが、随分と強化されて戻って来たんだよ。どうも精神回路を開発されたみたいだ。それに武器と防具が揃ったからな。問題ないだろう。」


「そうか、じゃあキャラバンを組んで俺の組織の商会を立ち上げよう。それならば、敵視される事なく、潜り込めるだろう。」


「じゃあ、詳細を詰めるか?」


「ああ、そうしよう。」


ザバルティとラムザの二人はそこから、詳細までを練り上げた。


「考えれば考えるほど、アイツが関わって居そうな件だな。」


「ああ、間違いなく【邪神の使徒】はこの件に関わって居るだろうな。」


「いざという時は出るしかないか?」


「いや、ここは煉に任せたら良い。じゃないと成長できないぜ。」


「そうかもな。ダメだな。どうしても甘やかしてしまう。」


「仕方がないだろう。お前も人の子だってことだ。」


「そうだな。あははは。」


そうして二人は笑いあう。

傍から見るとただの親子の様に見えなくもない二人は、お互いを信頼しあう友なのだ。


「でラムザ。そろそろエリザと結婚しても良いんじゃないか?」


「なっ?!お前急になんだ?」


「だってそうだろ?人生の目標だったシャルマンの事は片付いた訳だし、順調に都市国家スパルタの独立は進んでいる。【シャルマン商会】は世界一の商会と名高い。【クラウンシャルマン】は全世界には届いていないが、世界の半分には冒険者を派遣している一大組織だ。その両方を束ねる会長なんだから、そろそろ良いだろ?」


「もちろん考えてはいるさ。しかしな、俺は一度結婚していて、息子がいる身だぞ?エリザは若いんだ。良い男なら他に一杯いるはずだ。そうだ、お前だってその一人だぞ!」


「えっ?お前は馬鹿か?あんなにお前に惚れている女が他の男が相手にするわけないだろ?」


「そんな風に見えるのか?」


「当り前だ!誰が見てもそう答える!」


不毛なやり取りであろうこの会話は幾度目かの会話である。

その事を知っているのか知らぬのか、ドアをノックする音が聞こえる。


「ザバルティ様。」


「あぁ、ミーリアか、入って。」


「失礼します。」


扉を開けて、優雅にお辞儀をすると配膳車を押して入ってくる。


「少し休憩に致しませんか?軽食を用意しましたので。」


「ありがとう。」


配膳者にはイチゴやフルーツで盛られたケーキが乗っていた。

ミーリアはそのケーキを上手に切り分けると、それぞれの前に置いた。

そして紅茶を入れて同じく置く。


「お二方とも、正にお互いに今と同じ様な状況ではありませんか?」


意味深な言葉を残し、ミーリアは出ていく。

残された二人の男はしばしその言葉の意味を考え、そして共に苦笑し、そして共に美味しくケーキを食べたのだった。


一時の休憩を挟んでラムザとザバルティは詳細な部分までの作戦を考案し完成させた。


「ふぅ。こんなもんか?」


「そうだな。これで行こう。」


「まぁ、状況が刻々と変化するから、どうしても難しくなる事があるからな。」


「それはそれで面白いがな。それに、そうでなければ皆の成長に繋がらん。」


「そうだな。これ位が丁度いいのかもしれんな。」


「ああ。」


二人はやりきった顔になって頷きあった。


「で、行動はどうする?動くなら早い方が良いと思うが。」


「そうだな。そう言えば憶えているか?」


「うん?」


「風林火山だよ。ほら、お前が好きだった武田信玄公のやつさ。」


「あぁ、憶えているよ。懐かしいな。よし、風のごとしで行くか?」


「そうしよう。では早速明日発表し、明後日には出発としよう。」


「おいおい。いくら何でも早すぎないか?こっちの準備もあるんだぜ?」


「またまた、どうせもう下準備は出来てるんだろ?人選やそれに関わる準備も終わってるだろ?準備できてないのはこっちだろうが?」


「なんだよ。わかってんのか?」


「当り前だ。」


「まぁ、そうなるわな。わかったそれで行こう。」


二人は硬く握手をしその日は解散となった。

忙しく動き回ったのは、二人より選ばれた者達だったのは言うまでもない事だった。


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