283 僕は呼ばれました。
「煉君!拝殿に一緒に着て頂戴!」
「梅花さん?どうしたんですか?」
梅花さんが突然部屋に入ってきた。
血相を変えてやってきて、大声で叫ぶように言う。
「とにかく、着て頂戴。念のために桜花もよ?」
梅花さんは、僕の腕をひっぱり強引に連れて行こうとする。
あまりにも、いつもと違うので素直に連れて行かれる。
拝殿には、沢山の精霊方がおり、その向こうにヒミコさんが座って居る。
拝殿全体に、神聖な空気が充満しているのがわかる。
「ヒミコ。あの者が神崎煉であるな?」
名前を呼ばれた瞬間に、何か良く分からないけど、体に電流が走った様な、それでいて心地よい様な不思議な感覚に身が包まれた。
「そうです。」
が、それよりも【~じゃ。】と言わないヒミコさんの返事を見て少し吹き出しそうになってしまう。それに、いつもより緊張感があるのも感じた。
「よかろう。では&%$#“様のご降臨を願おう。」
神聖な気を放っている。御簾の向こうの方が偉い方なのが何となく理解したところで、聞き取れない名前の更にえらい方が呼ばれるというのを理解した。
どういう事なのだろうか?
「煉。お主と桜花はこちらへくるのじゃ。」
ヒミコさんが緊張した面持ちで来るようにと言うのでそちらに向かう。
「キヌ。お主もこちらへ。」
御簾の向こうから、今度はキヌさんを呼ぶ声がする。
「・・・かしこみ、かしこみ申す。」
御簾の向こうの方からその様に聞こえたのち直ぐに圧倒的な力の存在が御簾の向こうに降り立つ事がわかった。いや、理解させられたという方が正しいかもしれない。
そして、近くにあった鈴が一度『リン』となった。
その瞬間の圧倒的なまでの神聖なる木が御簾の向こうから放たれる感じがして、直ぐに収まった。
「ヒミコ、キヌ、神崎煉、桜花。以上の4名は御簾のこちら側に入ってきなさい。他の者は動かない様に。」
先ほどから、御簾の向こうからいらっしゃった方が、呼ばれた。
「ですが、統括神様。大丈夫なのでしょうか?」
「ヒミコよ。安心するが良い。&%$#“様が保護してくださる。」
「わかりました。」
返事を返したヒミコ様に連れられて、キヌさんと僕と桜花さんは呼ばれた順番通りに御簾の向こうへ入った。
御簾の向こうには王座の様な椅子が置かれており、そこには神々しい気を放つ女性が居り、その横には神々しい気を放つ男性が立っていた。
僕はその光景を見た瞬間に無言で頭を下げ礼を取っていた。
「緊張しなくても良い。では&%$#“様。宜しくお願い致します。」
その言葉によって呪縛から解かれたように、顔を上げる事が出来た。
それは皆も同じだったようで、顔を上げていた。
目の前に居るであろう方々が神である事は自然と理解している自分に驚きを覚える。
ただ、男神は目で見る事が出来るのだが、どうしても女神を見ても僕の眼には光しか見えない。ただ光に包まれた方が居ると分かるだけで、そのお姿が見えない。
『ふふふ。煉よ。其方にはワタクシの姿が光に包まれて見れないのでしょう?』
僕が不思議そうな顔になっていたのだろうか?&%$#“様が僕に聞いてきた。
「は、はい!」
「ば、馬鹿者が!!」
『ヒミコよ。良いのです。煉よ。それは仕方が無いのです。貴方と私の格の違いがありすぎて、目に私の姿を映す事が出来ないのです。ある意味で自己防衛機能が働いているという事です。』
「そうなのですか。わかりました。失礼な事をしておりましたら、申し訳ございませんでした。」
僕は謝罪を口にして頭を下げた。
『ふふふ。謝罪を受け入れましょう。』
そう言葉を放たれると、一息入れた&%$#“様はヒミコさんに向き直った気がした。
『ヒミコよ。今回の決断。天上の神々は承認し、祝福を与える事になりました。』
「はい!ありがとうございます。」
『祝福の証として、ワタクシがこちらに来させて頂いた。という事になります。』
「はい。」
『ですが、本当に良いのですか?今の地位をキヌに譲り、この煉に仕える精霊になるという事で。』
「はい?僕は聞いてませんが?あっ!すいません。」
初耳だったので、僕はつい口を開いてしまった。
『ふふふ。煉。大丈夫ですよ。聞いていなかったのですね?』
「す、すいません。その通りです。」
「わ、私が勝手に決めた事です。申し訳ありません。」
『ふふふ。ヒミコも良いのです。ただの確認ですから。で、ヒミコよ。精霊神である事とエリア統括である事をキヌに禅譲するという事で、本当に良いのですね?』
「はい!」
間髪入れずにヒミコさんは返答をした。
清々しくも堂々とした答え方だった。
『わかりました。・・・ありがとう。・・・キヌよ。貴女も覚悟が出来きましたか?』
「はい。謹んでお受けいたします。」
『わかりました。では、キヌに禅譲する事を許可します。』
言葉と共に、ヒミコさんから何かがキヌさんに何かが移ったような気がした。目に見える何かでは無くて、目に見えない何かが。そしてその後キヌさんから力の気とでもいうのか、渦を巻いて溢れてくる。
『キヌよ。その力に溺れる事が無い様に精進しなさい。』
「かしこまりました。」
『さて、ヒミコよ。今回の事については祝福があると伝えましたね?』
「はい。」
『では、これからも精霊神の一柱として励みなさい。格を上げ更なる高みへと精進するのです。』
「えっ?ですが?」
『だから、祝福です。貴女はこれよりワタクシの眷族神の一柱として、その煉に力を貸すのです。その依り代も用意出来ています。近いうちにそれが何かを理解するでしょう。』
「はい!精進致します!!」
『煉。貴方に力を貸してくれるヒミコの為にも日々精進するのです。良いですね?』
「はい!頑張ります!」
『桜花も頼みましたよ?』
「はい!」
&%$#“様は僕達の返事を聞き、満足そうに頷いている様な気がする。
『では、煉に桜花よ。貴方達を現世に戻します。』
そう、その方がおっしゃった時には僕の眼が閉じた。
そして僕の体がフッとなった気がした。




