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279 決心したのじゃ。 その1


この馬鹿共が!

だから、男は馬鹿なのじゃ!

そう思った時には我は飛び出しておった。

煉とロロの間に立ち、声を掛ける。


「もう、良いであろうが?」


馬鹿が、精霊神ともあろう存在の者が我を忘れておるではないか。

ようやく、こっちを向く始末だ。


「気が済んだであろうが?」


ひと睨みし、もう一度問うた我を見てたロロ。


「俺の負け・・・だな。」


ロロは自覚したのであろう。そう呟いた。

もう、ロロは大丈夫であろう。我は振り返り煉の傍へ向かう。


「うぅぅ。」


呻き声を漏らしておる。

我は直ぐに抱き止めて、回復の魔法をかける。


「もう、終わりじゃ。この闘いに大義は無い。もうよいのじゃ。」


我はそう言葉をかけて、眠りの魔法をかける。

眠りとは回復の最大の効果を発揮する行為なのじゃ。それがゆえにかけた。

しかし、一向にその効果を発揮しない。


「一体、どうなっておるのじゃ?」


我は戸惑いを隠しきれない。

慌てて煉のステータスを見る。ほぼ、会った時と変化はない。・・・が。


=============


神崎煉


称号:伝説の武器に愛されし者

   異世界転移者

   卑弥呼の寵愛

   須佐之男命の寵愛

   輝夜姫の寵愛

   風神&雷神の加護


=================


【風神&雷神の加護】というのも驚きがだ、それ以上に【須佐之男命の寵愛】というのが驚きを越してあり得ない事だと思う。

というか、いつ手に入れたのじゃ?精霊界に着て、我に会った時には無く、今在るという事は、ここに来るまでに手に入れたという事じゃ。

【風神&雷神の加護】は、あの温泉街での温泉旅館での時に加護を得たのであろう。が、【須佐之男命の寵愛】はさっぱりじゃ。そもそも寵愛じゃぞ?契約でも加護でもなく寵愛じゃ。


風神&雷神は良く知られる存在じゃ。

字の通り風の神と雷の神じゃ。双子神としても有名じゃ。

元々変な所のある神なのじゃから、加護を与えていても不思議ではない。


しかし、須佐之男命は別格じゃ。存在すら不確かな伝説の存在なのじゃ。

荒魂をもっており、邪神扱いをされてしまう存在でもある。そんな伝説の存在である須佐之男命が鎮座する場所は高天ヶ原とされており、至高神の一柱である天照大御神の弟とされておる存在なのじゃ。

あくまでも伝説であり、存在を疑われている神だったのじゃ。

その神の寵愛を受けている。そこが不思議でならぬ。そんな時間なんぞ無かったはずなのじゃ。


「一体、この男は・・・。」


我の想像を絶する程の試練が、この煉に訪れてしまうのかもしれぬ。

どうしたものか。


「うぅぅ。」


今も尚呻き声を上げているものの、立上りロロに立ち向かおうとするその姿は、伝説のスサノオの姿によく似ているのじゃ。


「急ではございますが御前試合は、これにて閉幕となります。」


この状況になりようやくアナウンスが流れたが、無理矢理閉めた形のアナウンスに会場からはブーイングの嵐だ。

そして、そのアナウンスの後に桜花達が動き出しこちらに来た。


「うぅ。まだやれる。」


独り言を呻きながら呟く煉の姿は確かにボロボロの容姿だが、諦めていない男の姿があるじゃ。もう、見えていないであろう目は焦点は定まっていないが、闘う意志をメラメラと宿しておるのじゃ。


「もう、良い。終わりじゃ。お主の勝ちじゃよ。」


「俺の勝ち。ははは、良かった。ヒミコさんが馬鹿にされなくて済む。」


誰と話しているのかもわかっていないようじゃ。我と話しているのに我の事を言うとは。


「この馬鹿者が。」


怒鳴る事は出来ず、ただそう言った。


「そうですね。馬鹿ですね。」


そう煉は言って笑って答えた後、意識を失った様じゃった。

その顔には安堵の表情が見てとれたじゃ。


「桜花よ。」


「はい。」


「よく手を出さずに見守った。」


「・・・、それは違います。私は拒否されていました。」


「なに?!」


「たぶん、私が傷つかない様にと考えたのでしょう。実力差は分かっていたと思いますから。」


「なんと。そうだったのか。ハナからわかっておったという事か。」


改めて、煉を見る。

安堵しきったその顔を見ていると、腹が立つやら、嬉しいやら、よくわからん感情が沸き上がってきて、モヤモヤするの。


「桜花よ。済まぬが、我は決めたぞ。」


「・・・。」


桜花は何も答えなかったが、理解している様じゃ。


「我が、この馬鹿者を守る。桜花が武器となるのなら、我が守りとなろうぞ。」


「ヒミコ様の仰せの通りに。」


その言葉を聞いた桜花以外の者が驚きを顔に出す。


「ヒミコ様!」


梅花が我を呼ぶが、逆に命令を下した。


「梅花よ。急ぎ桃花を伝令として、エリアに戻りキヌに伝えよ。」


「しかし!」


「しかしもくそも無い。もう決めた事じゃ。行け!」


「はい。かしこまりました。」


梅花は引き下がり、直ぐに行動に移していく。


「桃花!」


「はい!」


「お前は、ロロに煉を休ませる場所の提供を依頼するのじゃ!」


「はい!」


こうして、その後の動きを指示し、行動させる。一旦、煉を控室に運び。それからロロが用意した場所に移る事になったのじゃ。我は常に煉の傍らに寄り添い、回復魔法をかけ続けたのじゃ。

肉体と違い、精神は一気に回復する魔法が存在しない訳ではない。精神を癒す魔法は根本的に傷を無くすこと。その傷を無くしてしまう行為は、記憶を無くす事に繋がってしまう為に、我はその方法を取らず、癒す事のみに注力したのだ。塞ぐ事は自力でしなければ、無かった事になってしまうからじゃ。それはこの煉の望むところでは無いと分かっているからじゃ。


もちろん、桜花も傍に寄り添い、見守っておったのじゃが、そこは我の方が力があるかなのぉ~。・・・何?自分を上げすぎじゃと?そんな事は無い。無いはずじゃがのぉ~。ほほほほ。


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