272 和のエリア捜索完了。
僕達一行は精霊界をめぐる旅に出ている。
温泉街を出発してから、ヒミコ様の統括する地域を隈なく移動した。
温泉街程のインパクトは受けていない。
まぁ、あれは規格外だったのだろうと結論が出ました。
流れるプールならぬ流れる温泉など、現代日本でもそうそう御目に掛かれない施設だと思います。
「さて、ここでヒミコ様の統括する地域は最後になりました。」
最後となったのはエリアの外れにある地域の村の様な集落だった。村と言っても活気のある村で祭とか行事を沢山している様だ。一応まとめ役になる村長が居り組織化されていた。
人間と違うのは組織運営は円滑に物事にあたる為のモノであり、欲を持って行動する為のモノではないという所が大きく違う。領土拡大なんて必要が無いようだ。
「では次はどちらに向かいますか?」
そう、僕達の次の行先はヒミコ様の統括する地域外という事になるのだ。
何処が良いのだろうか?
「おすすめはヒミコ様と仲良くされている方の統括する場所かとは思いますが・・・。」
「それは何処なんですか?」
「中華です。ただ、中華は・・・。」
梅花さんは何故か歯切れが悪い。どうしたと言うのだろうか?
「どうしたんですか?中華に問題でもあるんですか?」
「問題と言うか、個人的に行きたくないと言うか・・・。」
「梅花お姉様に求婚している者が居る場所なの。ちなみに、私も求婚された事があるのは、中華の人でぇ~す。」
その後、色々と聞くと、どうやら中華では梅や桃は重宝されている物らしくその精霊である梅花さんと桃花さんは人気者になっているらしい。
「精霊界でも結婚とかあるんですね?」
「そうですね。人のそれとは違い生命を誕生させ育む事はないのですが、一緒に住むなど色々と同じ所もありますね。」
という事らしい。
つまり子供を産む事は無いけど、そういう営みはする様だ。ぶはっ!!
「だ、大丈夫ですか?」
「すいません。大丈夫です。」
少し想像してしまい、鼻血が出てしまいました。
ちょっと僕には早かったみたいです。
「スケベ。」
「エッチですね。」
「煉の変態!」
意味に気づいた面々から口撃を受けました。武による攻撃の方が優しく感じるのも精神世界ならではなのでしょうか?
「と、取り合えず行きたくない方が居るのであれば、今回は無しで。他にはどんな所があるんですか?」
ホッとした顔になる梅花さん。どうもよっぽど嫌だった様だ。もしかしたらそれなりに権力者の相手なのかも?それともとっても気持ちの悪い相手なのかもしれないね。
「中華以外でしたら、そうですねぇ・・・北欧何かはどうでしょうか?」
一気に飛びました。北欧ってどんな感じなのだろうか?イメージがわかないなぁ。
「北欧ってどんな所になるんですか?」
「そうですね。有名なのはヴァイキングでしょうか?」
「ヴァイキング?」
「海賊っていう意味も持っている場所ですね。北欧は海賊王が居ますね。」
「海賊王?」
もしかして≪海賊王に俺はなる!≫って人かな?な訳ないか。
「ロロ様という方が現在統括されています。」
「現在と言う事は?」
「はい。北欧は神化する存在が多くて有名な場所でもあります。また、現世に一番影響を与えている地域とも言えますね。フェンリルとか聞いた事がありませんか?」
どこかで聞いた気がする。フェンリルって狼系統の神獣じゃなかったっけ?
「現在もフェンリルの子孫は現世で反映しており、神獣として現世で君臨していると伺っています。後はヨルムンガルドというウミヘビを期限に持つ神獣も居たと記憶しています。現世に子孫が居ると聞いた事がありますよ。後はドワーフ族やエルフ族の起源や現在は魔物扱いとなっているゴブリンなんかも北欧に起源がありますね。現世でははみ出し者的な扱いをされていると聞いていますが、そもそもが北欧の精霊界から神によって現世に肉体を得た者の子孫が今の現世を構成している者達の一部となりますね。」
「じゃあ、北欧に行くと魔物のゴブリンが居るって事ですかね?」
「確かにゴブリンは存在しますが、現世の様な劣悪な性格ではありませんよ?寧ろ温和な性格だと思って良いと思います。」
「マジですか?!」
「マジですよ?!」
梅花さんはノリノリでノッテきてくれた。
どうやら、本当に中華は勘弁だったようだ。
「じゃあ、そこに行きましょうよ。」
「良いんですか?」
「はい。梅花さんのおススメでもありますし、それに現世での影響が強いエリアってのも気になります。もしかすると色々とヒントが見つかるかもしれませんから。」
「わかりました。では天狗様を呼びますね?」
そう梅花さんはおもむろに懐から横笛を取り出して吹き始める。
民謡?童謡?で何か聞いた事ある曲が流れる。これってもしかして【かごめかごめ】じゃないか?とか考えていると、ブオン!という音と共に天狗様が登場した。
『梅花よ。呼んだか?』
「はい。天狗様。どうか私どもをロロ様の統括エリア北欧に連れて行ってくださいませ。」
『ふむ。人間が一緒だから呼んだのだな?』
「はい。」
『良かろう。ではワシに掴まるが良い。』
そう言うと皆が掴まれるように背中を向ける。
皆が掴まったのを確認した天狗様はヤツデの葉を振る。
『行くぞ。』
その掛け声と共に僕達の体は宙に浮き天狗様がヤツデの葉を振るごとにドンドンとさっき迄居た場所から離れていく。
さぁ、次は精霊界の北欧エリアだ!




