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270 神々しく輝く黒き八羽。 その2


ナベリウス様がお立ちになられてから、大隊長の逃亡と残酷な死を見た後、私達は戦った。相手は人と魔物の混成軍だった。


私達は拠点を失うまいと、必死に戦った。

大隊長と副大隊長は同時に逃亡した為に、この軍を指揮する者が居なくなってしまったので今は私が指揮している。


「もう、本当に厳しいわね。」


「はい。私達は一杯一杯でありますが、向こうはこちらを嬲るかのように余裕を持って攻め立てて来ています。もってもあと1日かと。」


私は静かに聞き頷いた。

今回、偶々学生の方が魔法に長けた者が多く居たおかげもあり、ここまで何とか持ちこたえてきたというのが現実だ。

そして、昨日、魔物の統率が無くなったタイミングがあった為に、その隙をついて昨日は少しは楽な戦いになり希望を抱いたが、今日は逆に統率がシッカリと取れていた為に、相当数の怪我人と死者を出してしまった。今は絶望が蔓延している。

今日の戦で半数に最初の激突から考えると半数になってしまっている。

焦る気持ちが高くなるのは当たり前だ。打開策が無いままにここまでやられてしまっては数の暴力で圧倒されてしまうだろう。


「兎に角、一日でも長く粘るんだ。そうすればナベリウス様が戻って来られるだろう。助かる道はそれしかないだろう。」


そう締め括り、軍議を終了し各自、自分の寝床に戻っていく。

私は、助かりたいというより、もう一度お会いしたいという思いの方が強かった。

また、今日も、ナベリウス様の事を思い眠りにつく。



◇◇◇◆◇◇◇



翌日の戦は壮絶を極めた。

魔物の数が圧倒的に増えているのだ。

3000の数だと認識していたのだが、増援が来たのかもしれない。


「シャリ―!」


今も目の前で一人の仲間が、魔物に腕を持っていかれてしまった。

かくいう私も、左腕を失っている。

五体満足の者はもうごく少数になっている。

それでも、引かないの一重にナベリウス様との約束を果たそうとしている事と、引いても殺されるだけだという思いからだ。


「くっ!」


流石に血を多く流しすぎたのかもしれない。立っておられず、ついにしゃがんでしまった。

目の前に魔物がきており口を開けているというのに、避ける事が出来ない。せめて剣を振り威嚇するだけだ。


「くっそう!」


まだ、死ねない。まだ死にたくない!ナベリウス様にもう一度逢いたい。

もう一目見たい。死にたくないよ~!

私は覚悟が決まらないまま、目を閉じた。


だが、少し待っても食われない。それどころか、辺りから魔物の反応が感じられなくなった。

一瞬の事だった。私は閉じていた目を開けた。


「黒い羽?!・・・ナベリウス様!?」


「すまない。待たせてしまった。」


懐かしさを感じるその声は申し訳なさと怒りが満ちていた。


「今の俺には血止めをする位の回復魔法しか使えない。申し訳ない。」


私の眼に飛び込んできたのは血に汚れてしまったナベリウス様の姿だった。

目からは血の涙を流していた。

王都では壮絶な経験をしてこられたのであろう。悲しみと怒りを同居させた目になっていた。


「お前もしつけぇ~奴だな!ここまでやってくるとは!!」


向こうの方で、声がするが私もナベリウス様もそちらを見る事はしなかった。

ナベリウス様は全滅しかけた。いや全滅していた私達を一人一人優しく抱きしめると一か所に集めた。

その間も向こうの方から、「無視するな!」とか聞えていたが、魔物は一定以上の距離を保ったまま周囲を囲うだけしか出来なかった様だ。中に入ろうとすると、粉々になりぶっ飛んでしまっていた。

集められたメンバーは13人。かろうじて生きていた者達だ。

私の隊の隊員全員と、女学生二名と女の教師1名だ。

皆、何処かを失っていた。


「今は俺の血を飲ませて眷属にするしか助ける術が無い。眷属に成りたくない者は言ってくれ。安らかな死を与える。」


その質問には誰も答えなかった。血の涙を流すナベリウス様を見て、答えれる者などそこには居なかったのだ。


「返答無しは承諾と見なすが良いか?」


「わかりました。私達に断る気などありません。どうぞ、お助け下さい。」


私が代表として答えた。特に嫌がる者は居なかった。


「では、俺と契約する事を承諾したとみなし血の契約を結ぶ。」


そうナベリウス様はおっしゃり私の唇を塞ぐ。そして舌を私の口の中に入れてきて血を飲ませてくる。私はその血を飲み込んだ。


すると、私の失った左腕の傷口が急激に蠢き出し腕が生えてくる。

そして、傷と言う傷が全てふさがっていく。つぶれた右目も再生した様だった。

腕が生えて来た時は痛みを伴ったが、その後に違和感は無かった。

私はその時、生まれ変わったのだ。半人半魔としてつまり人間と悪魔のハーフに。人では無くなったのだ。もちろん魔族でもない。純潔の悪魔ではない。純粋な人でもない。人でもなく、悪魔でもないそんな存在になったのだ。背中には羽が生えている。しかし、羽は鳥のそれではなく蝙蝠のモノだった。


そしてその場に居た全員13名は特別な存在となった記念するべき日でもあった。

13名は皆回復した。そして、私達を攻撃してきた者どもを駆逐した。一瞬の出来事だった。私達は圧倒的な力を得たのだ。



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