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268 神々しく輝く黒き八羽。 その1


天幕から出たナベリウス様から、物凄い力が放出された。

いや、時折垣間見えていた力と言うべきだろうか?

本来の力を制限していたとはわかっていたが、正直な所ここまで圧倒的な物だと思っていなかった。その力は物理的作用も起こしている様で、風圧の様なモノを私達はまともにくらってしまい。目をつぶった。少しして落ち着いたので目を開ける。


「では、行ってくる。」


そうおっしゃった、ナベリウス様の背中には神々しく輝く黒い羽が八羽あった。

そのお姿は正に神話に出てくる黒き天使。堕天使のお姿だ。


「美しい。」


私はその姿に改めて魅了されてしまったのだ。

そして、ナベリウス様との出会いに思いをはせた。



◇◇◇◆◇◇◇



「圧倒的な力を持つ子供が居る。」

「凄く綺麗な美少年。」

「神に仕えるシスターが美少年に体を開いた。」

「その美しさは神々の祝福が与えられている。そして才能にまで神々は祝福をお与えになった。」

「凄腕の美少年のテクニックを知ってしまうと、他の男では満足できない。」


そのような噂は今回の学園行事に私が参加する事が決まる前から聞いていた噂だった。


「ふん。俗物が。けがわらしい。」


私は、その手の女同士の噂話が大嫌いだったし、噂聞いてドキドキするような女では無かった。名誉ある王国騎士団の初の女性隊長。それが私の肩書だ。目指しているのは一番の強さだ。

そんな、私が、男にうつつを抜かす時間などあるはずも無い。

そして私の周りには優秀な女性騎士達。彼女達を率いて男に負けない。いや勝る結果を残してきた自負があるのだ。

だから、初めてその少年を見るその時までは、嫌悪感すら芽生えていた。


「俺はナベリウス・デストロイ。デストロイ子爵家の長男だ。今回は世話になる。」


この言葉を聞いたら、何が子爵家の長男だ!偉そうに!!となってしまうと思う。

しかし、その時の私達は違った。自然と頭を下げてしまいそうになるほどの威厳をそのナベリウス・デストロイから感じた。

嫌味も無く、ただ、そうあるだけ。自然なのだ。私はこの瞬間に心が震えたのを今でもよく覚えている。

ようやく、私の真の主を見つけた!そう思わされた。身も心もナベリウス様に捧げる。

そう心に誓ってしまったのだ。


それは、学園行事に行く前の顔見世の時だった。

それからというモノ、私はナベリウス様の前では只の女になってしまった。

私は女の本性を知ってしまったとも言える。この人の子供が欲しい。そう感じてしまったのだ。女の性には勝てない。そう思わされたのは、ナベリウス様から放たれる圧倒的な力を感じ取っていたからなのかもしれない。女の本能が刺激されてしまったのだ。



◇◇◇◆◇◇◇



ナベリウス様は黒き八羽を羽ばたかせると一気に上空へと舞い上がっていった。

そして、直ぐに見えなくなった。


「ナベリウス様は天使だったの?」


「いや、羽が黒かった。天使は白ではなかったかしら?」


「じゃあ、堕天使なの?」


「そんな些細な事はどうでもいいじゃないか。私達はあの方について行くと決めたのではなかったかしら?」


私は動揺する隊のメンバーを見渡しながら、話した。


「私達は、神に仕える訳でも悪魔に崇拝したいわけでもない。ただ、あのお方。ナベリウス様を真の主として、支えると決めたのでしょう?であるならば、些細な事でどうようしてどうするのですか?」


「そうでした。私達はナベリウス様に仕えると誓ったのでした。」


「そうよ。私は些細な事はどうでも良いわ。」


そうよそうよ。と同調と再確認を私達はした。


「さぁ、そうと決まれば、あのお方が戻れる場所を用意しなければ。」


「「「「はい!」」」」


私達はそれから、ナベリウス様の言いつけ通り、拠点を構築し、外敵からの防衛力強化に専念した。私達以外の大隊長も賛同してくれ、学生も先生も手伝ってくれて準備ははかどったのだが、敵は思ったよりも早く私達の前に姿を現したのだった。

その数、3000。

私達は学生を入れても1000。

しかも拠点も急増の簡単な物で、堅牢ではない。厳しい戦いになる事は予想できた。


「戦わず、下れば許しが得られるはずだ!」


それが、大隊長以下男どもの意見だった。

確かに男どもは精々が殴られるとかだけで済むであろう。

しかし、女の私達はそうはいかないだろう。ナベリウス様を知るまでなら、覚悟があった事でも、今はダメだ。他の男に触れられたくもない。


「それは、冗談でしょう?王都での噂を知らないはずが無いのではないですか?」


「しかし、噂など、本当か分からん。」


「ですが、事実として、ここの学生の中に公爵家側の家の者はだれ一人としていないのですよ?全員殺されると思われますが?」


「だが、戦っても勝ち目は薄いぞ?!」


こんなやり取りをしていた。平行線のままである。

次の朝、大隊長以下それに同調した200の兵が逃げた。

そして、昼には首となって私達の拠点の前に晒された。


「何と惨いことを。」


拠点に残った者は皆そう思ったに違いない。

実際に死体に慣れていない学生達の多くは吐いたりしていた。

その中でも一部の学生は毅然としていた。そうナベリウス様と同じ隊に所属していた者達だ。私達が警護していた者達でもある。


「大丈夫。ナベリウス君が、いえナベリウス様がきっと皆を助けてくれる。」


そう言っている者迄いた。どうやら、あの黒く輝く八羽を見ていたようだ。

確かにあのような圧倒的な力が放たれていた時に近くに居た者達が気づかないはずがないか。

そう。私達のほかに希望を捨てない者たちが居る事は心強い事だと思った。


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